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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
29/88

29話 追いかけっこ

「頭も小さくて子供サイズなのに、胸だけがLLサイズだから問題なのだろ?そのブカブカの洋服も胸に合わせるから、肩も腕もブカブカでだらしなく見えているだけだろ?」

 天十郎は同情しているのか、それとも僕のせいか、どうも今までと様子が違う。夏梅はそんな事をまったく気にもかけていないようだ。


「うん、そうだね。不必要に胸が大きい」

「でも、他の人はうらやむだろ?」

「うん」

「男が行列を作って後を追いかけるからな」

「うん」

「男はみんな大きいおっぱいが好きだろ」

「そんなことないよ」

「そんなことあるだろ、ストレートなら…」

「そんなことない、私の好きな人はモデルさんのようなスレンダーが好きだ」


「えっ?」

 僕は夏梅の答えに驚いた。夏梅が好きなのは、僕のはずだが…。


「好きな人???」天十郎は夏梅の好きな人という言葉に反応し聞き返した。

「好きな人なんているの?」

「うん、いるよ」夏梅は淡々と答える。

「誰?」

「塁」

「塁?それ誰だよ」天十郎の問いかけに、夏梅は答えずに僕の話をし始めた。

「塁は引き締まった、運動選手みたいな人が好きで、私みたいに運動しても筋肉が付きにくくてぶよぶよは好きじゃない」


 夏梅は何を言っているのか?僕の好みは運動選手?誰の事だ?僕は考え込んでしまった。


 自分の好きな人の好みのタイプになれない自分を、責めるような言い方をする夏梅を、天十郎はかわいそうに思ったのか、慰めるように

「ぶよぶよって、別に太ってないでしょ。確かに筋肉質じゃないけど、細くてもしっとりした肌質でヒヤッとして、ぷにぷにして、俺は気持ちいいけどな。そう、抱き枕みたいに、気持ちいいぞ」


「抱き枕?」

「うん」

「塁もそう言ってくれればいいのに、どんな形でも選ばれたい」


 おい夏梅、違うだろ。なんでそんな発想になっている。ちゃんと選んだじゃないか!僕は夏梅の発言に驚いた。


 天十郎はため息をつくと

「端から男を振りまくっている奴が、選ばれたいのか?」

「男を振りまくっているって言っても、相手はただSEXしたいだけでしょ。一方的にSEXしたい人に、私が合わせる必要があるの?それを振りまくっているっていう事なの?私が悪いのか?」

「男たちが寄って来るのは、SEXだけが目当てって知っていたのか?」


 夏梅は返事をしないで遠くを見た。天十郎は気まずそうに

「いいだろ、減るものでもないし」

 冗談風に言った。

「いや、減る」

「何が減るのだよ」


「人間としての尊厳。私も人間である以上、脅かされては尊厳が維持できない。人間が生まれて誰にでも与えられる尊厳が減る。踏みつぶされる」

 

 冗談めかして濁そうとしたのに空振りした天十郎が、何か言いかけて手を頭の上に置いて考え込んだ。天十郎は男地獄で、もの扱いされて来て、スポンサーの意向通りに接待やSEXを強制されて来た。家の中をぶらぶら歩き始めた天十郎は何と答えるのだろう?突然、戻って来ると夏梅の隣に座った。夏梅は嫌そうな顔をした。


「塁は違うのか?俺らと一緒か?」

「塁は、私を目で犯さない」

「うん?どういう事?」

「ストレートは私を目で犯しているのがわかる」

「わかるの?」

「うん、わかる、脅かされるような感覚でキリキリする」

「悪寒ってやつか?」

「よくわからないけど、不愉快」

「蒲は?」

「蒲は私が嫌い」

「嫌いなのか?」

「うん」

「よくわからないな、嫌いなのに一緒にいるの」

「目で裸にされ犯されるより、嫌われている方がまだまし」

「まだ、ましなんだ」

「うん」

「俺は?」

「それ?それにも嫌われているから」

「それって、ひょっとしたら、俺の事?」

「そうだよ」

「俺はまだ、ましなのか?」

「うん」

「塁は目で犯さないし、嫌ってないと、いうことか?」

「ただ、無駄に胸の大きいのが好きじゃない」

「お金を貯めて、胸を小さくする手術すればいいよ」

「昔はそれも考えていたけど…。今は…」夏梅は言葉をつまらせた。



 【その日以来】


 天十郎の態度が少し変わって来たような気がする。ふたりとも、騒がしいのは変わらないのだが、以前と違って天十郎が少し手加減しているように見える。蒲はそれが気に入らない。


 僕にも蒲にもわかる手加減が入ると、蒲は僕を避難するように見る。僕はニヤリと笑う。そんな事が、ここ何日も繰り返されている。最近は僕が夏梅を追いかけまわし、蒲が僕を探し歩いている。


 蒲はかなりイライラしている。


 ソファベッドで、夏梅の寝顔に見入っている僕に、蒲が来いと目で合図してくる。二階に上がると、寝室で天十郎が寝ている。となりの衣裳部屋に入ると僕は失笑した。

「なんだ、一日中追いかけまわしやがって、そんなに僕が好きか?」

「塁、天十郎に何をした」



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