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ソファベッド  作者: 中島 世期 seki
1章 猫にマタタビ:僕の憂鬱
28/88

28話 なぜ…

「俺、知っています」天十郎が口を挟んだ。

「へえ、やっぱり俳優さんは違うわね」

 笑いながら日美子さんがソファベッドのカーテンをあけ、夏梅の顔を覗き込む

「寝ていると可愛いわね、頭のセットはそのままね。起きたらはずしてあげましょう」

 部屋の中を見回し、忙しそうに玄関ホールやリビングに散らかっている着物やその小物を集めている日美子さんだ。


「日美子さん」天十郎が声をかけた。

「うん?なに?お茶でも出してくれるの?」

「あっ、ええ、用意します」と言いながらキッチンに向かい、キッチンからお茶の用意をしながら「日美子さん聞いていいですか?」

「なに?」


「どうして、コルセットしてタオルを何枚も巻いて、使い捨てカイロを入れて、結び目をワイヤーで固定して、あんな着方を見たことがないけど…。あるのですか?」天十郎は不審そうだ。



【使い捨てカイロ?】


 日美子さんは、落ちていた使い捨てカイロを着物の小物と一緒に拾ったが、意味を理解できないように

「九月に使い捨てカイロなど使わないわよ。夏梅みたいにウエストが細いとタオルを何枚も巻いて形を整える事はあるの、ましてこの子はバストとウエストの段差が大きすぎるので、着崩れに心配があるからワイヤーで止めるのよ」

「普通ですか?」

「ああ、そうよね。そう多くはないけどね、体形によってタオルやワイヤーは使うのよ」


「コルセットも?」

「夏梅はずっとコルセットしている」と蒲が言った。

「どうしてコルセットをしている?」と天十郎が聞いた。


「この子ね、分離すべり症なの。分離すべり症は、第五腰椎に支障がある状態。高校生の頃、橋から落ちて以来コルセットをしているの。コルセットをした状態で測るとウエストが54㎝なの」

「ふーん」天十郎は日美子さんの解説が、納得できないようだ。


「だからね。夏梅の場合、既製服のサイズが胸に合わせると2LサイズでウエストはSサイズ。つまり日本人の標準的な体形と違うので、胸のサイズの洋服の形に合わせるとコルセットの上からタオルを二枚巻くことになる」

「それが?」

「着物は寸胴が一番素敵に見えるから、普通でもタオルや綿を入れて外から着物姿が美しく見えるようにするのね。夏梅の場合はウエストが細く、胸のサイズが大きいから、腰はタオルだけでは足りなくてバスタオルを巻くから、緩む事も多い。着崩れをしないように紐や帯もきつく結ぶし、緩まないように手芸用のワイヤーを使う事もある。今日は撮影用のライトも使ったから暑かったかしら?撮影が終わって休憩してから脱がせるつもりが、我慢が出来なかったのかな。休憩中にいなくなってね」


「それで、あんなに汗疹が?でも使い捨てカイロはないでしょ」

 天十郎は日美子さんを攻めるように、かなりきつく言った。その様子にやっと異常を感じた日美子さんは

「さっきから何を言っているの、使い捨てカイロがどうしたって?」

 と聞き返すと

「タオルの下に、使い捨てカイロが挟まっていて火傷していましたよ」

 怒りが籠った低い声で、突き返すように天十郎は日美子さんに言った。


「使い捨てカイロなんて…ばかな事を」

 そう言いながら、日美子さんがソファベッドに寝ている夏梅のバスタオルを取り、夏梅の素肌に張り付いていた使い捨てカイロの火傷の後を見て、茫然として言葉に詰まった。


「病院は?ああ、そうだった。簡単に病院も連れて行かれない子だったわね」

「今は赤みが治まっているから、様子を見ています」

「とにかく、なんでこんな事になったのか、調べてみるわ」

 日美子さんは深刻な顔をして蒲を見た。



 【日美子さんが帰った後】


 蒲はさっさと、二階の自分達の寝室に上がってしまったが、天十郎は、寝ている夏梅の傍を離れなかった。

 目を覚ました夏梅に

「水分をとった方がいいだろ。お茶を入れてやるよ」

 

 声をかけた天十郎を夏梅は求めるような目で一瞬みたが、夏梅はすぐに目をそらした。「なんだよ」と天十郎が言うと、沈んだように「いや」とソファベッドに顔をうずめた。


 夏梅の気持ちを考えると、僕も切ない気持ちでいっぱいになった。


「着物や洋服を着るのも苦労しているなんて、知らなかったから、無理矢理に帯を回して、悪かったな」

「うん」

「胸がデカいのも、大変だな」

「うん?胸?」

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