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終期超越 シドシワルワ  作者: 弥島真
第1章 始まりのエンドレスライフ
6/27

5 いろいろね……

 ――地下1階・格納庫――


「――と、まあ大体こんな感じ。なにか気になることはあるかい?」

「いや、大体地球でやってたことと変わんないっすね。まぁ向こうの場合、こんな武装なんて、無かったっすけど」

「危ないからね。一般の企業で取り扱うには」

「ま、武器云々以前に、やってる時は危険性なんか考慮してませんしたけどね。無駄に慣れてたってのもあって」

「それは頼もしい。頼りになるね」

「ははは……まぁ。あ、1ついいすか? なんで武装されてんすか? エンドレスの宇宙探査機って。戦争するわけでも無いのに」

「何故かって? 名目上は、隕石なんかにぶつかりそうな時、それをぶっ壊すため、だとかなんとか」

「名目上? 本当の目的は?」

「……あながち、戦争ってのは間違ってないかもね」

「はあ……」

 その後も一通り、ルイザと卓ちゃんに色々と教えてもらう。一休み中、他のチームの宇宙探査機の整備作業を見て回る。そのさなか、ある1つの疑問が浮かび上がってきた。

 2人のところへ戻るなり、その浮かんだ疑問をぶつけてみることにした。

「あの、さっき急に気になったんすけど、なんで1-Aってこんなに人数少ないんすか? 見た感じ、他は割と技術隊に人いるっすよね。ってことは、他のチームは人数が少ないってわけじゃなさそうなんすけど? うちだけ?」

「ああー……そうねぇ……。まぁ……なんというか……」

「9か月ぐらい前にな、ある事件が起こったんだよ」

 近くから、聞き覚えのある声がした。声が聞こえた方を向くと、ルーカスが立っていた。

「お、コイツが新入りか」

 ルーカスの近くにいた見知らぬ女性が、床に座っている俺に対し、上から覗き込むようにして話しかけてきた。

「え? えっと……」

「アタシはミヤカ。ま、せいぜい宜しく」

「あ、篠前廻です、どうも。で、ルーカス、なにその事件って?」

「ここじゃ話しにくいから、部屋戻ろうか」

「えぇ……来てそうそうかよ……」

「テメェはおとなしく部屋で寝てた方が良かったかもな」

「(うわ、ガラ悪っ……)」

「ルイザ、卓ちゃん。廻に大体説明終わった?」

「まぁね」

「うん……」

「じゃあ戻るか」



 1-Aの会議室に戻った俺は、先程ルーカスが言っていた話の詳細を聞くことになった。

「で、なんなの? 事件って」

「まぁ事件っていうか、どっちかっつうと事故だな」

「事故?」

「9か月前、ある事が話題になったけど、なにがあったか覚えている?」

「9か月前? 覚えてねぇな……。うーん……、アレか? 人気絶頂中の、樫崎なんちゃらって女優が、新型兵器の開発に資金援助するだとかで、物議を醸した事?」

「時期的にもう少し前かな」

「少し前? えーと……、なんっか話題になってたな……。あっ、アレ? ニケなんちゃらって金持ちのオッサンの私兵が――」

「それでもない。もっとエンドレスに関係していること」

「エンドレス? ……あ、ムタヘバ?」

「それ」

「え、でもそれがなんかしたの? ってかアレってどうなったんだっけ。最初は盛り上がってたような気がしたけど、なんか気づいたら忘れてた」

「詳細を話すとだな。9か月前俺たちは、新たに見つけた惑星、ムタヘバの最初の調査に駆り出たんだ」

「だよな。散々テレビの話題にされてたな」

「ま、大した結果も挙げられず、結局は失敗扱いだったんだけどな」

「あれ? そうだったの?」

「表向きにはそうは言ってない」

「隠す必要あったのか?」

「中身がな。1回の調査で、全然把握出来ないのは別に問題じゃない。問題だったのは、事故のことだ」

「そうそれ。で、それがなんなんだ?」

「ムタヘバの調査には、俺たちチーム1と、チーム10が先陣を切った。いつものように、地形なんかを調べたり、危険な場所がないかを調べたり。俺はチーム1を総括したりするから、あまり1-Aのみんなとは一緒に行動出来なかったんだが、その1-Aのあるメンバーが、どんどんと行動範囲を広げていってな。結果、ロストしたんだよ」

「ロスト? なんで」

「ムタヘバは何故か通信の状態が悪くてな。ま、そんなわけで、俺たちは遠く離れたソイツを探しに、色々とまわってみたんだが、……まぁ結果としてソイツは見つかった」

「良かったじゃん」

「ハッ良くねぇよ」

 一緒に会議室にいたミヤカさんが、テーブルに自らの腕枕を作り、そこに頭を置きながら、なにも知らない俺を否定するようにそう言った。

「え? ってことは……」

「ソイツを見つけたのはミヤカだ。ソイツはな、死んでたよ。機体の中でな」

「……そうだったのか。でも、なんで……?」

「原因は不明。ショック死って見解もある。しかも、ソイツの乗っていた機体からは、攻撃を行った形跡があった」

「なにに?」

「……さぁ」

「アタシはさぁ、やっぱり『宇宙人』だと思ってんだよね。新入り、アンタはどう思う?」

「はぁ? 宇宙人? いやえっと……どうなんすかね」

「考えてもみろよ。こんだけ人サマが宇宙に進出してんだぜ。だったらいつか宇宙人サマと鉢合わせてもおかしくはねぇだろ? なァ?」

「え、いや……まぁ」

「ああワクワクすんぜ。いつか宇宙人サマと殺り合う時が来んのがよぉ。ハハハ」

 ミヤカさんは、満足そうに自分の部屋に戻っていった。

「……まぁとにかく、そういう事故が起こって、ムタヘバの調査は一旦中止。今はドローンなんかが、あそこの全容を調べている。まぁ近々、2回目の調査を始めるがな」

「あの、こう言っちゃなんだけどさ、1人死んだくらいで中止するほどなの? 大げさじゃない?」

「今まで、エンドレスの惑星調査、開拓において死亡者が出たことは無い。だから今回、死亡者が出たということは、俺たちにとってとても重大な事なのさ」

「そうだったのか……」

「死んだソイツは、うちのムードメーカーでな。それだけに、みんなのショックもデカかった。まぁ、1-Aの半数が止めるきっかけになったのは、ソイツの死を公にするどころか、エンドレス内部にも公表しなかったことだ」

「隠したのか。なんで?」

「調査中に原因不明の不審死。そんなことを伝えれば徒に不安を煽りかねない。原因も判明していないのにな。だから調査を中止させる時も、別の理由をでっち上げた。俺と、チーム10のリーダーと、副長でな」

「いいのかよ、そんなことして……」

「……良くはないさ。だけどな、色々あるんだよ。いろいろ。まぁそんなわけで、それに納得できないみんなが、離反していったってわけさ」

「1-Aのみんなには、本当の事を言ったのか?」

「……ああ。別に、後悔なんかはしていない。結果さ」

「そうか…」

「悪かったな、変な話聞かせて」

「あ、いや……」

「変な話を聞いたついでに、もう1つ聞かないか?」

「……なに?」

「さっきミヤカが言っていた事、どう思う?」

「さっき? 宇宙人がどうのこうのって? まぁ……ありえなくも無いんじゃない? 俺は幽霊とかUFOとか信じない派だけど」

「信じないけど、否定はしない、か。なるほどね」

「で、それがどうかした?」

「……いや、やっぱなんでもない」

「えぇ? なんだよそれ」

「まぁまぁ。これからもよろしくな」

「お、おう。どうした急に」

「別に。じゃっ」

 ルーカスはそう言って、どこかへ行ってしまった。……それにしても、1-Aのメンバーが少なかったのにそういう理由があったとはな。逆に、今いるメンバーは、それだけルーカスの事を信頼しているのかな。でも、なんだアイツ? 最後に言おうとしていた事。宇宙人がどうこうって。わざわざ言うってことは……まさかな。……まぁ、そんなこと考えていたってしょうがないから、どうでもいいや。……ってか、この後なにすればいいの? 訊くの忘れてた……。

「あ、おい! ルーカス。ちょっと!」

 ルーカスの後を追い、1-Aの部屋を急いで離れる。


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