4 コノヤロウ……
「それじゃあ2人とも、廻を頼んだ」
「了解っ!」
「うん……」
現在、1-Aの会議室。これから、技術隊の仕事について、ルイザさんと奈村さんに一通り教えてもらうことになっている。
いざ、宇宙探査機がある地下1階の格納庫へ向かおうとした時、入り口のドアが開いて、そこから凄い勢いで男が駆け寄ってきた。
「ルーカス!」
「ん? ユゼ、どうした?」
ユゼと呼ばれた男は会議室に着くなり、乱れた息を整える間もなく、ルーカスに先程起こった事について説明しようとした。
「ハァ……ハァ……どうしたもこうしたも……って、この人は?」
「昨日から、1-Aに新しく入った」
「篠前廻です」
「あっどうも。私、1-Aのサブリーダーをやっております、カク・ユゼと申します……って、それどころじゃなかった! ルーカス! アイツまた勝手に立ち入り禁止区域に入って身柄拘束されたよ!」
「またか……。なかなかやるな」
「んなこと言ってる場合か! 警備隊がカンカンだよ」
「しょうがないなぁ……。それじゃあ、あとよろしくな」
ルーカスはそう言って、カクさんと一緒にどこかに行ってしまった……。
「あの……『アイツ』って?」
「アイツってのは、1-Aのチームメンバー、『ミヤカ・キーティング』よ。さっき駆け込んできたユゼと、今言ったミヤカが、昨日いなかった2人よ」
「そうなんすか」
「あっ、そういえば、あたしのことは呼び捨てでいいからね。あたしもアンタのこと、廻って呼ぶから」
「あっはい」
「で、こっちは卓ちゃんでいいよ」
「ちゃん? 卓ではなく?」
「どっちでもいいけどさ、卓ちゃんは長いこと卓ちゃんだったから」
「はあ……。まぁ、分かりました。ルイザ、卓……ちゃん」
「うん……」
「よし、じゃあ行こうか」
ルーカスとユゼが、ミヤカが拘束されている、1階にある警備室へと向かう。ルーカスの足取りは軽かったが、それとは対照的にユゼの足取りは重かった。
「また言われるのかな? 監督不行き届きだ、って。監督もなんも、ミヤカももうガキじゃないってのに」
「アイツはほんっっっと余計な仕事増やして……」
「大変だな。今度は俺が始末書書いてやるよ」
「それが普通! お前は俺に仕事押し付けすぎ!」
2人が、目的の部屋の前に着く。ユゼが心の準備を整えようとしたが、有無を言わさずルーカスが中に入っていく。
「失礼しまーす。ミヤカ引き取りに来ましたー」
「おい、ちょっと! し、失礼します」
2人が警備室の中へ入り、少し進んだ先にある部屋に入ると、2人を呆れた顔で出迎える人物がいた。
「はぁ……ちゃんとコイツを見ていてくれないと困るんだよ、本当」
「ホンっト毎度毎度すみません、キアラさん」
ユゼが、そこにいる女性、警備隊隊長キアラに深々と頭を下げる。ユゼが頭を下げている横で、ルーカスがキアラの後ろで拘束されている女性に声をかける。
「気分はどうだ? ミヤカ」
「ハッ、最高だな」
特に反省の無いその様子を見て、キアラが再び呆れかえる。
「あそこは色々とデリケートな場所なんだ。いい加減何度も何度も侵入するのは止めてくれ」
「そんなに、シドシワルワを秘密にしたいのか?」
ルーカスが、呆れている感じのキアラに疑問を投げかけた。その言葉を聞いたキアラの表情が、少し怖くなった。
「当たり前だ。あんなものを複数所持していると世界に知れたら、世界中から非難の声が飛び交うだろう。なにしろ、うちの乗員にすら知らされていないのだからな」
「んなこたァどうでもいいんだよ。艦長が乗れっつったんだから、アタシは乗ろうとしてるだけだろうが」
「だからと言って、普段から動かしていいものではない。周りにどう説明するんだ」
「……まぁミヤカの言うことは分かるさ。有事の際、いきなり本番、乗れって言われても、どうすればいいかわかんないだろうしな。俺はともかく」
「だったら! 今のうちにとっとと見させろよルーカス」
「……でもさ、あれだあれ、なんとかの猫の話。本当にあるのかないのかは、ミヤカが実際に目にしないとわかんないってやつ」
「……チッ、急に意味わかんねぇ事言いやがってめんどくせぇな。わぁったよ、大人しくすればいいんだろ」
「はい偉い」
「はぁ……何度も何度もすみません……」
「ハッ、んなにツラ下げて、ヘドバンでもしてんのか?」
「んだとぉ? 誰のせいだと思って……」
ユゼとミヤカのいつものやり取りを見て、キアラが再三呆れかえる。
「はぁ……お前たち、ここに来るたびそのやり取りを繰り返すのは止めろ」
「そうかい? 俺は好きだけどな~」
背後から急に声が聞こえてきて、キアラが驚いた様子で後ろを振り向く。
「ふ、副長!? いつからそこに」
「いつから? 最初からここでのんびりしてた」
「よっ、ベルンハルト。相変わらずサボりか?」
「相変わらずとは心外だな~ルーカス」
「お、お疲れ様です副長」
突如出てきたエンドレスの副長、ベルンハルトに、ユゼは戸惑いながらも、とりあえず挨拶をする。
「ああ~いいっていいって~」
「はぁ……副長。勝手に部屋に入らないでください」
「いやいや、勝手じゃないよ~? ちゃんと入る時許可取ったから~。『入っていい?』って~」
「いやいや、ですから――」
「ああもう! わぁったから、とっととこれ外してくれ!」
いい加減拘束を解いてほしいミヤカは、この部屋で行われている不毛なやり取りを遮り、拘束を解くように懇願する。
「いいよ~。キアラ、鍵は~?」
「はぁ……どうぞ」
「サンキュー副長」
「とにかく! 次は無いと思え。次、また勝手に侵入禁止区域に入ったら……どうなるか覚悟しておけ。いいな」
「ああ。覚えてたらな」
「ミヤカ! お前またそういう……。すみません、ホンっトすみません」
「それじゃあこの辺で失礼します。またな、ベルンハルト」
「し、失礼します」
「じゃ~ね~」
「はぁ……」
1-Aの部屋に戻る際中、身柄を拘束されていたミヤカが、不満をぶちまけるように恨めしく呟く。
「ったくあのヤロー……何度も何度もアタシを捕まえやがって……」
「まっ、しょうがないよ。向こうも仕事なんだから」
ルーカスが、ミヤカになだめるように言葉を返す。しかし、それを聞いたユゼが、キレた感じでルーカスに突っかかる。
「しょうがないで済むかァ! 何度も何度も問題起こしてェ! って、イテテ……胃が……あぁ……胃薬飲まなきゃ……」
「ユゼさぁ、働き過ぎじゃない? 少し休めよ」
「ダ・レ・ノ・セ・イ・ダ・ト・オ・モ・ッ・テ……」
「はいはい悪かった悪かった。ところでミヤカ」
「なに?」
「昨日から1-Aに、新しい仲間が加わったから、そのうち挨拶してやってくれ」
「……今ソイツどこに居る?」
「地下かな?」
「めんどくせぇから今行ってくるわ」
「よし、それじゃあ向かうか。ユゼは?」
「……俺も行くよ。調子悪いけど」
現在1階にいる3人は、進路を3階の1-Aから、地下1階の格納庫へと変える。




