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終期超越 シドシワルワ  作者: 弥島真
第3章 衒い 放つ 咲き誇る
25/27

6 地獄の饗宴開くお花畑-お開きの時-

「オラオラァ!」

「ハァッ!」

「これでどうだ!」

 3機のシドシワルワの攻撃と、多数の宇宙探査機の攻撃が巨大な花を激しく襲う。無論、向こうもただおとなしくやられ続けるだけではなかった。

化け物の右半分にある蕾と花が全て急速に枯れ果てて、新たに今までとは違う色の蕾が再び生え始めた。そして次々と、蕾達は今まで同様花を咲かす。中からは、今までの2つとは違う「3つ目」の飛翔体が大量に飛び出してくる。その飛翔体は、先程までのものとは比べ物にならないスピードで動き、自らの周りを飛び回る「虫」とミールフスを目標に定め次々と飛んでいく。



「来やがった!」

 すぐさまナンバーリーダー達は、目標を巨大な花から第3の飛翔体へと変える。


「なんだコイツら……早すぎる!」


「これでは、攻撃を当てるどころか回避するのも厳しいな」


「ヤッバ。これはマジでヤバイやつじゃん」


 さすがのナンバーリーダー達も、そのあまりの速さにぎりぎりで避けるのが精一杯だった。なにしろこちらは、数的な問題で分が悪すぎるし、攻撃を1発でも貰えば、その時点で宇宙探査機が壊れてしまうかもしれないという命の危険も孕んでいる。ゆえに、敵の攻撃を絶対回避しながらこの大量に生み出される第3の飛翔体を処理し続けなければならない、というとても厳しい状況へと追いやられてしまった。


「ここにきてマジになりやがったか!」


 追尾してくるだけでも厄介だったが、それに速さが加わるとなると、もはや先程までの飛翔体とは別物だった。


「クソッ! クソッ! 来るな……こっちへ来るなぁぁぁぁ!」

「うわぁぁぁぁ!」

「きゃぁぁぁぁ!」

 第3の飛翔体の凄まじい猛攻により、徐々にその攻撃を避けきれなくなってきたチーム6の隊員達が、次々と攻撃を受け始めてきてしまった。

 同様に、ミールフスへと向かっていく飛翔体を迎撃している隊員達も、徐々にその矛先が自分達にも向けられている事に気づき始めてしまった。その飛翔体は、自分達を落とそうとしている虫達を、通る「ついで」に攻撃していく。



「廻! マズイぞ! 早くどうにかしなきゃ!」

「……このロボを動かしてる俺たちにしか出来ないと思われることは、早くこの巨大な花をなんとかすることだ!」

 「剣」を振りかざし、巨大な花へと攻撃を加え続ける。しかし、この攻撃が本当に効いているのかは分からない。コイツは、ただそこに佇んでいる。なんの反応も示さず、なにかを言うこともなく、ただただそこに。

「ソーシ! なんか他にねぇのか!? コレの攻撃」

「えっと待って。……次は、ここをこうしてみて」

「ここだな?」

 ソーシに言われた通りに操作すると、今度はコイツの左側が、あの巨大な2本腕みたいなのと似たような感じになる。

「おう!? よくわかんねぇけど!」

 花に接近し、剣と腕で攻撃を試みる。切っては殴り切っては殴り、何度も何度も繰り返していると、いつの間にか隣に2本腕がやってきて、合計3本の腕で攻撃をお見舞いしてやることになった。

「協力プレーか。これでどうだ!」


「ふんっ!」

「……少しだけ、花が揺らいだような気がしたけど、気のせいかしら?」

「分からん。だが、廻が意図を読み取ってくれて良かった」


「ミヤカ、俺たちもみんなと攻撃を合わせてみた方がいいんじゃないか」

「ああ」


 今度は四角が隣に来て、四角の前方から剣が出てきて、俺もそれに合わせて剣を前方に突き出し、花を何度も何度も切りつける。

「効いてんのか?」

「分かんないけど、続けていくしか!」


 だが、化け物はそう簡単に攻撃を続けさせてくれはしなかった。俺達がいるところにも、次々とあの蕾から出たヤツが向かって来ている。


「チッ! オラァ!」


「コイツらをどうにかしないとな」


 四角と腕が後ろへ向き、花への攻撃を一旦止め飛んでくるヤツを次々と迎撃していく。


「俺たちもやるか!?」

「いや、攻撃を続けよう!」

 飛んでくるヤツは2人に任せ、俺は引き続き花への攻撃を加える。1人では火力が足りないのではないかとも思ったが、それでも攻撃をひたすら続けていく。


 だが、まるで変化がない。本当に、この攻撃が効いているのか……?

「これでいいのか……? 間違ってないか……?」

 正確な答えが分からない。なにをどう判断し動けばいいのか分からない。それでも、ひたすら花へと力をぶつけまくる。

「くらえくらえくらえくらえくらえくらえくらえ!」


 ひたすら攻撃を繰り返していると、急にソーシがなにかに気づいたように声を上げる。

「やべー……。宇宙探査機が次々と爆発していってる……」

「なに!? やっぱり俺もそっちに!」

 攻撃を止め、襲われている宇宙探査機達を助けに行こうと動くが、ソーシにそれを止められてしまう。

「廻! さっき自分で言っただろ! 俺たちに出来ることは、この巨大な花をどうにかすることだって!」

「で、でも……そんなもん、みんなを助けてからだって出来るだろ!」

「……見てみろ。次から次へとあいつらが湧いてってる。これじゃあ助けたところでキリがない」

「だからって見殺しにしろってか!?」

「違う。一刻も早く終わらせるために、アイツの本体を早く叩く必要がある。そのためにはやっぱりこの巨大な花をどうにかしないと!」

「どうにかっつーけど、どうすればいいんだよ……って……あれ?」

 攻撃を行っている時には気づかなかったが、今改めて花を見てみると、ずっと攻撃を与え続けていた箇所が、他の部分とは少し色が変わっていた。

「どうした?」

「……ソーシ、あそこ……」

「あれは……変色してる? という事はもしかしたら……」

「効いているのか……?」

 それが正しいのかは分からない。しかし、他に選べる選択肢もない。いや、選びたくない。

「このことをみんなに伝えなきゃ……」

「でもどうやって? 通信は使えないし、なにより今、他の2人は手が離せないし」

「一体どうしたら……」

 この発見を、みんなに伝える手段はないか必死に考える。2人とも、こちらを振り向いてくれればそれで済む話なのだが、あのどんどん湧いて来るヤツがこちらへ来る限り、それは難しそうだ。かと言って、2人の手助けに入り花への攻撃を早く再開してもらおうとすれば、それこそ時間がかかり宇宙探査機の被害が増えるだけだ。だったら……

「俺だけでも……攻撃を続けるしか」

 考えていても時間だけが無駄に過ぎていく。なにもしないよりは絶対動いた方がいい。だが、1人では終わらせるのにいつまでかかるか……。

「ああもう! とにかく1度!」

 再び花へと攻撃を行う。色が変色している部分を集中的に狙って。

「えいっ! このっ! おらっ!」

 左で殴って右で切る。左で殴って右で切る。左で殴って右で切る。……ひたすら、がむしゃらに攻撃を繰り返す。

「どうだ!」

 一旦攻撃を止め、変色箇所がどうなっているか確認する。……結果は、望ましくないものだった。

「おい……色が、戻ってる……」

「マジかよ……」

 やはり、1人では火力が足りないのだろうか。さっきみたいな協力プレーじゃないと、コイツには攻撃が通らないのか……?

「これじゃあ、いくらやっても無駄だ……」

「どうする……? 他に攻撃が通りそうな箇所を探すか?」

「……そう、だな」


 集中攻撃を諦めて、別の攻撃が通りそうな箇所を探しに行こうとした……その時。


「ッ! なんだ!」

 突如目の前の花の部分に、どこからか射撃みたいな攻撃が飛んできた。

 そして次々と、飛び回るヤツらに向けてそれと同じ攻撃が当てられていく。……凄まじい勢いで。


「なんだ! どっからだ!」

「な!? ミ、ミヤカ! あそこだ!」


「あそこからだと?」

「ええ。エンドレスの近くね」


 その攻撃は、エンドレスの近くから行われていた。あの距離から、一切味方に攻撃を当てることなく、正確無比に飛び回る敵だけに当てている。



「あ。……今更だけど、アレ撃っていいやつ? まぁいいや」


 その攻撃を行っていたのは、手負いのマリアだった。

「怒ってっかなぁ……2人とも。でも、こんな状況なら来てよかったかな」


 マリアは、シドシワルワ-BARREL-で、遠方の飛翔体を次々と撃っていく。援護が来たことによって、同じく飛翔体を散らしていたミヤカとレナードは、瞬く間に劣勢から優勢に変わった。そして、再び花に攻撃を加える隙間を作り出した。


「レナード! 今のうちにもう1度!」

「ああ」


「ミヤカ! またこっちにあいつらが来る前に!」

「わぁってるよ」


「2人がこっちに来た!」

「でもどうやってさっきの事を伝えるんだ?」

「……こんなんでどうだ!」

 俺は、剣で何度も何度も円を描くように動かす。そして、描いた円の中心に腕を突き出し、「ここを狙え」とジェスチャーを送ってみる。


「……あ? なにしてんだアイツ」


「なにかの合図か?」


「ほら、ここを、狙って」

 何回かその動作を繰り返す。だが、2人には全く意図が通じていないようだ。

「ああもう!」

 諦めて、別の動きを見せようとした瞬間、遠方にいたさっきの攻撃したやつが、俺の示した箇所へ正確に攻撃を放ってきた。

「わ! びっくりした。でも、それそれ! それだよ! 2人とも、分かれ!」


「……あそこ狙えってか?」

「かもな」


「なるほど、集中攻撃を行うというわけだな」

「そうね。さっき廻がなにか攻略の糸口を見つけたのかもしれないわね」


 2人も、俺が示した箇所へ攻撃を開始してくれた。なるべく同じ箇所に、さっきみたく2人と連携して交互に何度も何度も攻撃を叩き込む。今度は、遠方からの攻撃も加わり、その威力は申し分なかった。

 化け物も黙ってただやられるわけはなく、再びこちらにあの飛んでくるヤツをぶつけてくる。しかし、体勢を立て直した宇宙探査機達が今度は援護しにきてくれた。


「流石に、もう慣れてきたぜ!」


「後方からの援護射撃がなければ危なかったが……」


「なんにせよ、もう同じ轍は踏まん」


「今日だけで2回も死を覚悟するなんてネ……疲れた」


 凄い速さで飛んでくる敵をものともせず、宇宙探査機達は次々とソイツらを破壊していく。おかげで、俺たちは巨大な花への攻撃に集中することが出来た。


「えいえいえいえいえい!」

「ハァーッ!」

「オラオラァ!」

「いいんだよね? あそこ一緒に撃って」


 攻撃を続けていくと、今度は攻撃を一旦止めてわざわざ見るまでもなく、明らかに色が変わっていったのが見えてきた。


「色が変わって来やがった!」

「廻が示したのは、これだったのか?」


「レナード!」

「ああ。これは間違いないだろう」


「廻! また変わってきた! それも今度はさっきより激しく!」

「ああ!」


 後押しするように、さらに攻撃を浴びせ続けていく。協力し、殴って切って切って殴って殴って切って。


そしてとうとう、巨大な花に明確にダメージを負わせたと思える現象が起きた。化け物の巨大な花の集中して攻撃を加えていた箇所に、大きな亀裂が入ったのだ。

その亀裂目掛けて、2本腕が両腕で強力なパンチを浴びせる。すると、亀裂が瞬く間に広がり、巨大な花に1つの穴が開いた。


「廻! 今度はアタシの意図を読めよ!」

 穴に向かって、四角が剣を突き刺した。そして、そのまま上の方へどんどん移動していく。


「廻! 俺たちもアレやろう!」

「そうか!」

 それにならい、俺も剣を突き刺し、俺たちは下へと移動していく。

 そして今度は両腕が、その穴を横に無理やり開こうとする。

 巨大な花は次第に、穴を中心としてそこからだんだんと裂け始めていっている。


「オラァ! 失せろォ!」

「ハァァァァッ!」

「行け行け行け行け行けェ!」



 ……そして、その時がきた。巨大な花は横に真っ二つになり、中から再び「中身」が見えた。しかも、さっき見たヤツとは違い、今度は明らかに弱点がむき出しって感じのものが見える。


「さぁ、覚悟はいいかコノ野郎」


 四角の前方から出ている剣が、どんどんと巨大になっていく。その姿はまるで本当に、1つの巨大な剣が宇宙空間に存在しているかのようだった。


「す、すげぇ……」


「頼んだぞ……ミヤカ」


「さぁ、パーティーのお開きの時間だ。色々あったけど、なんだかんだ楽しかったぜ化け物」

 ミヤカは、CUBEの炎を1か所に集中して出力させると、その巨大な炎をむき出しになった化け物の中身に思いっきり突き刺すように接近する。そして、化け物をそのまま一刀両断するかのように、下から徐々に上へと移動していく。

「死ねオラァ!」


 突如、どこからかまるで悲鳴とも取れるような不気味な物音が聞こえてきた。


「なんだこの音!?」

「まさか……アイツが?」


「……泣いたとでも言うのか?」

「……不気味ね」


 その音はまるで、今まで沈黙を貫いてきた化け物が、最期になって出した断末魔のようなものともとれた。


「これで……仕舞いだァ! 死にさらせェ!」

 CUBEの巨大な炎が、化け物の中身を一刀両断した。



 化け物はやがてその動きを完全に止め、蕾や既に咲いていた花も、次第に枯れていった。


 そして化け物は、細かく細かく、寄せ集まっていたなにかが1つ1つ離れていくように、だんだんと崩れていった。宇宙空間に、欠片1つ残さないぐらいに。


「あばよ。クソッタレ」

「おいミヤカ! まだアイツら残ってるぞ!」

「置き土産ってか。しつけぇ野郎だな」


 周りには、まだ飛翔体が一定数残っている。これを完全に排除すべく、シドシワルワ達はこの戦いの仕上げに移った。





 ミールフス付近に現れた化け物が倒された時刻と同じ時、人々は現在宇宙で起こっている事についての情報でひどく混乱していた。

人々の関心が一斉に宇宙へと向いた。……だが、その関心はわざわざ遠く離れた宇宙へと向ける必要は無かった。


時を同じくして、人が住む各惑星の地表から、巨大ななにかの種のようなものが一斉に這い出てきた。

その事にすぐ気づいた者は誰もいなかった。なぜなら、その種は人が寄り付かない場所に「たまたま」現れたというのと、そもそも、誰もこんなすぐに自分達の住んでいる星でも、ミールフスで起こったような非現実的なことが起こるなんて思っていなかったからだ。


人々がその異変にようやく気付いたのは、その種が成長し、巨大な「樹」となったものが、各惑星で発見されてからのことだった……。



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