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終期超越 シドシワルワ  作者: 弥島真
第3章 衒い 放つ 咲き誇る
22/27

3 比例する絶望と希望

 ――エンドレス・3階――



「……どういう状況だ」

「見ての通りでしょ。とゆーか……」

 現在、エンドレスの内外で起こっている異常事態について、全く情報を知らないチーム6のリーダー、セローナが、2体の激しく損壊しているWSIの横で座り込んで佇ずんでいるチーム3のリーダー、ジュリアに状況を尋ねる。さらに2人の近くには、こちらも現在の状況が掴めずにいる警備隊達が、激しく損壊しているWSIを見て愕然としている。

「いいタイミングでセローナサン来てくれて良かったよ。3階の隅っこにワンころ誘導したのはいいケド、そこから先は考えて無かったしネ。逃げ場も無くなっちゃったし」

「……WSIが起動し、人を襲っていたというのか。どういう事だ、警備隊諸君」

「い、いえ、それが……私たちも何故WSIが暴走したかは不明で……」

「てゆーかサ、キミたちがもっと早くここまで来てくれたらサ、アタシは死を覚悟しなくて済んだのに」

「すみませんでした……。まさか、3階が煙に覆われているなんて思いもしなくて、状況を把握するのに手間取ってしまいました……」

「まったく、暗視出来るヤツぐらい常備しといてよネ。って、遅くなったのって、アタシのせい? まぁいいや」

「あ、あの……それで、このWSIは一体どういう……」

「コレ? セローナサンがヤったに決まってんじゃん。さっすがセローナサン」

「そんなことはどうでもいい。で、先程放送されていたエンドレス外で今起こっている事はどういうことだ」

「知りませーん。アタシが聞きたいぐらいですっ。多分、警備隊クン達も」

「……不覚だ。まさか私の寝ている間にこんな事が起こっていたとは……。これでは部下に合わす顔が無いな」

「そーは言ってもサー、それはしょうがないと思うよ? だってみんないつでもセローナサンの事頼りすぎだモン。ムタヘバ行く前も後もサ」

「とりあえず、私たちは出撃すればよいのだな?」

「そーみたいだネ。ちょっくら行ってきますか。じゃ、警備隊クン達後始末ヨロー」

「あ、ハイ、お気をつけて」

「あ、チョット気になったんだけどサ、コノワンころサ、どっちかは別の階から来たヤツっぽいよ。知らんけど」

「別の階……ですか?」

「そ。だからサ、元々3階にいたワンころのうち1匹は別の階に行ってるかもしれないから、油断はしないよーにネ。じゃネ」

 セローナとジュリアは急ぎ格納庫へ向かった。




 ―――宇宙・ミールフス付近――



 新たに化け物の体から生えてきた蕾が急速に成長していく。ここにきて、次々と明らかに今までとは違う行動を開始している。

「チッ、アノ新しく生えた蕾、なんかありそうだな……。ミヤカァ!」

「うるせぇ! アレ叩けばいいんだろ!」

「分かってるじゃねぇか。流石だ」

「お前に言われるまでもねぇんだよっ!」

 3人は、急速に動き始めている蕾を攻撃しようと急いで接近する。だが、3人が近づくより早くにその蕾が花を開き始めた。

「クソッ間に合わないか。ヴォルフ、ミヤカ、離れろ!」

「チッ、しゃあねぇな」

 ギナムとヴォルフガングは一旦その開き始めている蕾から距離をとる。しかし、ミヤカは止まらずそのまま先程のように今度は左側面から巨大な「炎」を出し、開き始めている蕾に突っ込んでいった。

「……離れてられっかよ!」

「オイ馬鹿! ギナムさんの言う事聞けよ!」

「一々様子なんか見てられっか!」

「おいミヤカァ! 勇敢と無謀は違うぞ! 一旦退けェ!」

「お前に指図される筋合いはねェ! コイツを操ってんのはアタシだって事を忘れんじゃねぇぞ!」

 ミヤカは先程と同じように半分花と化した蕾の根元部分にCUBEの炎を当てる。しかし、CUBEが切り落とすより早くに蕾はその花を完全に開ききってしまった。そして、その中からは、今までとは違った形状の飛翔体が大量に生み出されていた。

「なんだアレ!? 先程までとは形が違う」

「また新しい『飛び道具』が増えやがったか」

 その飛翔体は、花から今までと同様に飛び立ったが、今度の目標はミールフスではなく、自らに攻撃を加えている邪魔なモノ、すなわちCUBEに向かって次々と接近していく。

「こ、コッチ来やがった! ミヤカ!」

「チッ」

 ミヤカは、CUBEに向かって飛んでくる大量の飛翔体に対して、花への攻撃は止めないまま、正面、上面、右側面、さらには底面から炎を出してこれに対抗する。

 飛翔体は、燃え盛る炎に突っ込んで行く虫のように次々とCUBEから出ている炎に突っ込んでいく。これで消滅するものもいれば、消滅せずにCUBEに体当りを成功させるものもいる。CUBEに体当りが成功すると、触れた瞬間次々と自らの体を爆発させ、CUBEに対しダメージをじわじわと与えている。

「うわっ! ミ、ミヤカぁ!」

「チッ、ハエ共が、ウゼェんだよ!!」

 次々と攻撃されていくCUBEを助けるために、ヴォルフガングとギナムはCUBEに突っ込んでいく飛翔体を攻撃しようと動く。

「ヴォルフ! ミヤカを援護しろ!」

「わぁってるよ!」

 だが、2人が攻撃しようとした瞬間、今度は別の箇所の蕾が急速に動き始めた。

「クソ! こっちもか!」

「しかも、先程よりも開くのが早い……!」

 先程とは比べ物にならないスピードで、別の箇所の蕾が急速に花を咲かす。そして、その中からまた、現在CUBEを攻撃している飛翔体と同じものが大量に出てくる。

「増えやがった!」

「しかも、今度は俺たちかよ!」

 その飛翔体の次の狙いは、先程より自らの周りをウロウロしている目障りな「モノ」に向けてだった。

「迎撃しろォ!」

「くそっ、くそっ! 数が多すぎる!」

 宇宙探査機はCUBEとは違い、1発でも飛翔体の攻撃を食らえば操縦不能に陥ってしまう可能性が高い。すなわち2人は、1発でも攻撃をもらうとその時点で終わりになってしまうと確信していた。

「クソッ。ミヤカァ! 俺たちは一旦下がる。死ぬんじゃねぇぞ!」

「うるせぇ! テメェの心配してろ!」

 ヴォルフガングとギナムは急いでその場から離れ遠くに逃げる。しかし、飛翔体はどこへ逃げても2人の後をしつこく追い続けていく。

「クソッ。しつけぇ野郎だ!」

「マズイな。このままではいずれ……」

「やはり迎撃するか!?」

「駄目だ! 数が多すぎる!」

「クソッ。アイツらのもとに戻るわけにもいかねぇ。やべぇな……」

 3人が思うように身動きがとれないうちに、また新たな蕾が動きを始める。このままでは、いずれ3人とも数の暴力によって潰されてしまうだろう。

「クソッ、どうしたらいいんだッ!」

「やはり、こちらにも援護を要求するしか……」

「こっちに人回せばミールフスがもっとヤベェ事になる!」

「でも! このままではもはや勝ち目は無い! 黙って死ぬのか!?」

「んなわけねぇだろ! ああもう! どうすりゃいいんだよォォォォ!」

 2人が窮地に立たされ終わりが頭をよぎった時、突如2人の宇宙探査機のシステム画面のマップ上に、現在地の近辺のある特定の座標に、「ここまで来い」という事を示すアイコンが表示された。

「オイ! なんだこりゃあ?」

「分からない! けど行ってみよう!」

 2人は咄嗟に進路を変え、そのアイコンが表示されている位置に急いで向かった。



「オイ……なんだアレ……」

「『アレ』も、そうなのか……?」

 2人が向かったところにあったのは、先程の立方体のような今まで見た事も聞いた事も無い、巨大な「なにか」だった。ソレは、先程の立方体とは違い、今度は真ん中が立体の菱形のような形をしており、その両側には巨大な腕のようななにかがついているモノだった。

「御二方、聞こえていますか? この巨大なロボット、『シドシワルワ-VIOLENCE-』の後方に移動してください」

「オ、オウ!」

「また、こんなものが……」

 2人は、前方に見える巨大なロボットからと思われる通信に対して、戸惑いながらも指示に従いソレの後方に移動する。

「お願いね、レナード」

「……やってみる」

 ヴォルフガングとギナムを追っていた大量の飛翔体が、VIOLENCEに対して悠然と不気味に向かってくる。

「とりあえず……攻撃だ!」

 VIOLENCEはその巨大な「腕」を、こちらに突っ込んでくるヤツらに対してデタラメに縦横無尽に振り回す。

 少しでも腕の攻撃を受けた飛翔体は次々と死と共に爆発していく。だが、VIOLENCEにはその程度の攻撃はまるで通じ無かった。

「こんな感じでいいのか!?」

「いいんじゃない? 効いているみたいだし」

 何体かVIOLENCEの攻撃を避けるものもいたが、ヴォルフガングとギナムの援護の甲斐もあってその場にいた飛翔体はとりあえず全滅した。



 その場が一息ついたところで、ギナムはその巨大なロボットを動かしている者の正体を尋ねる。

「えっと……貴方たちは?」

「申し遅れました。私、1-Aのアンナ・ドゥブロヴィナと申します。そして、このVIOLENCEを操縦しているのは、同じく1-Aの――」

「レナードです」

「そうか。ルーカスのとこの……」

「お前たち、そのデカブツの動かし方は分かんのか?」

「はい、御二方とうちのミヤカの通信を聞いていたので」

「そうか。なら話は早ェ。さっさとあの嬢ちゃんを助けに行くぞ!」

「了解」

 3人は、化け物と1人対峙しているミヤカの元へ急いで向かう。



 相変わらず、CUBEに対して飛翔体がどんどんと突っ込んでいく。さすがのミヤカも、このまま攻撃を受け続けていくとヤバイと少しずつ焦燥感に駆られていく。

「クソッ、切れねぇ!」

「ミヤカぁ! このままじゃマズイって!」

「わかってる! ああもう!」

 やむを得ずミヤカは開ききった花への攻撃を止め一旦後方に下がる。だが、飛翔体の猛追は止む事は無かった。

「しつけぇな!」

 ミヤカは、CUBEの前面、上面、底面、後面から炎を出している状態で、さらに右側面と左側面から交互に、移動、攻撃、移動、攻撃、とそれぞれの炎を出す。その姿はまるで、CUBEを横にシェイクしているようだった。

 シェイクのおかげで攻撃範囲が広がり、先程より多くの飛翔体を倒すことが出来てはいるが、それでもなお全部を捌ききれるわけではない。

「クソッ、クソッ!」

「ミヤカ……」

 現状を打開する有効な方法が見つからないまま、さらに状況は悪化していく。また、新たな蕾が開き追尾型の飛翔体が増えてしまった。

「なにか方法は……なにか……! ……ん? この反応は……?」

 ユゼが、レーダー上に映る宇宙探査機とは違う別のなにかがこちらへ接近している事に気づく。それを見て、後方から見える映像を急いで確認する。

「アレは……! まさか、シドシワルワ!?」

「あ!? シドシワルワ!? 誰だ」

 ユゼが通信を試みようとする前に、先に向こうからこちらに通信が入ってきた。

「ミヤカ。俺だ」

「レナードか。丁度いい。アタシ1人じゃ流石に無理そうって思い始めたところだったからな」

「お前が弱音を吐くなんて珍しいな」

「弱音に聞こえるか? ハッ、まぁいいさ」

 VIOLENCEと2つの宇宙探査機は、CUBEに群がる飛翔体を次々と蹴散らす。

「ミヤカァ! 無事だったか!」

「無事じゃねぇよ! 滅入ったわ!」

「元気そうでなによりだ!」

 CUBEを襲っていた飛翔体を片付けのはいいが、すぐさま新たな飛翔体が4人のいるところへ向かってきている。

「ミヤカ! アレは俺が引き付ける。蕾の処理は頼んだぞ」

「おうよレナード。ほらオッサン達、行くぞ!」

「オーケー、行くぞギナム!」

「おっさん……」

 3人は、先程やったように再び蕾の排除を試みるべく、化け物に向かって行った。



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