85 ストラップをいじりながら
入ってきたのは、どこの街にも一人や二人はいそうな女の子だった。
美しい顔形をしているが、目つきが悪い。
不健康そうな顔色を濃い化粧で隠している。
「遅い! 十五秒遅刻! それになんだ! その格好は! 公務の間は制服を着ろと言ってるだろうが!」
女の子は、ひらひらの派手なスカートに手をやったかと思うと、胸の谷間も露わなキャミソールのストラップの具合を確かめ、そして気がついたのか、慌ててベレー帽を脱いだ。
「だって、ママ」
ママァ!?
チョットマは口から出かけた声を、すんでのところで飲み込んだ。
パリサイドには親子というものが存在するんだ!
いわゆる恋をして、誰かとの間に生まれた子?
いや、それとも、パパと私のような関係?
パリサイドの社会に俄然興味が沸いてきた。
アイーナにも、この派手目な娘にも。
「だって、部屋に入る申請書に手間取ったんだから」
ベレー帽を弄んでいる手が、今度は髪の毛をいじり始めた。
「お前ごときが市民代表議員に選ばれるなんて、ほとほと嫌になる」
「だって、ママと同じくらい人気があるんだよ」
「やかましい! さっさと報告しろ! それに、ママと呼ぶな! 客人もみえているんだぞ!」
ここで立ち上がって、挨拶するべきだろうか。
秘書官は、確か警察省長官と言った。
この街のお歴々の一人。
それに、アイーナの娘。
自分と同年配の娘だとしても、それなりに礼を尽くしておいた方がいい。
しかし、立ち上がろうとしたチョットマの腿にアイーナの手が添えられ、座らされてしまった。




