86 もう地球は住める星じゃない!
「え?」
思わず、驚きの声を漏らしてしまった。
巨大クッションだとばかり思っていたもの、それがアイーナ本人だった。
その気で見れば、目もあり口もある。
「初めまして!」
驚いたことを悟られまいと、努めて明るく声を掛けたが、アイーナは不機嫌な声で「三分」と、繰り返す。
「あ、では、早速ですが、ニューキーツの市民にプリブという……」
行方を捜している、とまで言いかけた時、遮られてしまった。
「あたしの呼び出しに応えなかったのは、どういう了見?」
「あ、すみませんでした」
「あんたのことは、どうでもいいけど」
アイーナは巨大な身体をこれまた大きなソファに預けて、ふんぞり返っている。
「せっかく意見を聞いてやろうとしたが!」
声のトーンが一気に上がる。
「もう、つべこべ言っても遅い。パリサイドの望みは、地球に帰還することだった!」
「ええ、それはお聞きして……」
「しかし! もう地球は住める星じゃない! きっと今頃、火の玉よ! 生まれたての星のように!」
気温は急上昇し、海は枯れ果て、膨大な水蒸気が地球を厚く覆っているだろう。
厚い雲のおかげで、徐々に冷えてはいくだろうが、また人が住めるようになるのは数万年も先のことかもしれない。
いや、もうそんな姿には戻れないかもしれない。
ガスの塊となって膨張した地球はその軌道を変えることになるかもしれない。やがて太陽に落ちていく。
わずかでも軌道がずれれば、もう地球はおしまい。




