表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/200

83 サリ?

「いい考えだと思わないか! がはははは!」

「残るってったって……」

 イエロータドはこの母船の街で、バーを継続するという。



「聞いてみたんだ。色々とな。客に。そしたらどうだ。星に降りずに、この街に残る奴もいるってんだ。たいがいは乗組員だろうが、それ以外にもな。そいつら相手に、俺は店をやっていく」


 そんなことが許されるのだろうか。

 今度もライラは鼻を鳴らしただけだ。


「そこでだ。ライラとチョットマに相談だ」


 ドライフルーツを皿に盛りながら、イエロータドが改まった。

「レイチェルに頼んで欲しい。彼女が残れば、多くの市民もきっと同調するだろう? 商売も上手くいくってもんだ」

 と、低く笑い声をたてた。



「厚かましいことを言うんじゃないよ!」

 そろそろだと思っていたが、ここでライラの怒りが爆発した。


「ふざけるんじゃない! お前の商売なんざ、知ったこっちゃない!」

 ライラは空になったグラスを乱暴にカウンターに置くと、イエロータドの方へ押しやった。



 イエロータドはそのグラスに液体が残っていないか、透かして見ながら、待ってましたとばかりに言う。

「もちろん、ただでとは言わん」

「ふん! この店の永久フリーパスをもらっても、嫌だね!」

「違うさ。こういうことだ」



 このところ、失踪した者や記憶を無くした者が何人かいるが、その消息や原因について、思い当たる節があるという。

「どうだい? その情報と引き換えってことで」


 完全にライラは頭に来たようで、ガバッとスツールから降りると、それを思い切り蹴とばした。

 スツールがみっともなく倒れ、鈍い音を立てて床を転げた。


「チョットマ! 帰るよ! 付き合ってられるか! こんな男だったとは! このライラの目もいかれてしまったもんだ!」




 その時、入ってきた者がある。

「おはようございます……」


 物音に怖気づいたように顔を覗かせた者を見て、チョットマは目を丸くした。



 サリ……?



 かつては東部方面攻撃隊の隊員であり、無二の親友……だった。

 自分と同じレイチェルのクローン。

 アンドロに操られ、レイチェルを殺そうとしたサリ……。

 宇宙船に移乗してから彼女に似た女性を何度も見かけ、会えば会釈程度はするようになっていた、その人。


 名前は聞いていないし、向こうも名乗ろうとはしなかった。

 もし、彼女がサリと名乗った時、自分の反応に自信が持てなかった。


 彼女の気持ちは痛いほどよくわかるが、だからといって許せるものでもなかった。

 たとえ、レイチェルが許したのだとしても……。



 イエロータドが顎をしゃくって、消えろと指示した。

 女性は、おずおずと入ってきて、小部屋に消えた。



 え?

 まさか、ここの従業員?



 女性の目がチョットマと合ったとき、浮かべた微笑が困惑の色を帯びていた。

 まさか……。そういうこと?



 サリ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ