83 ある日、星が見えたんだよ
教祖が死んで百年ほど経ったとき、私達の命も、社会も、宇宙船も、限界に近づいていた。
人口はわずか七パーセントにまで減少し、沢山の船を星間に遺棄してきた。
何とか、人の再生装置、そして記憶継承装置だけは稼働させ続けてきたけど、それさえも怪しくなってきた。
そんなある日、星が見えたんだよ。
いや、見えてはいたんだ。
その星の様子が分かってきたんだ。
着陸できるかもしれないってことがね。
少なくとも、ガスの塊や、ドロドロに溶けた重金属の海や、プラズマの厚い層に包まれた星じゃない。
なにかしら硬い地面と大気のある星だってことがね。
ただ、もし着陸すれば、もう二度と飛び立つことはできないかもしれない。
そもそも、うまく着陸できるかどうかも、わかりやしない。
半ば惰性で飛んでいる宇宙船を、誰がどうやって制御するっていうんだい。
そんな議論が当時の政府にあったかどうか、私は知らない。
いつしか、その重力圏に捕まってしまっていたんだよ。
政府の連中は、成り行きで決断したんだろうね。
重力圏を脱するための操船より、着陸する方を選んだんだ。
当時、船団を構成していたのはわずか九艦。
人々はできるだけ分散して乗ることになった。自分達の命を繋ぐ確率を上げるために。
それがまた大騒動。
ばかげた話だよ。
うまく乗り移れなくて、宇宙空間に放り出された命は数知れず。
多くの犠牲を払ってようやくたどり着いた星。
それが、パリサイド。
私達が名づけたんだよ。
もう瓦礫の山となってしまったヨーロッパの美しい都の名をいただいてね。




