82 一人講義の舞台
「シンラとは、いわゆる「気」であり、意識であり、ルールであるのです」
キャプテンの声が熱を帯びる。
そしてまた、プリミティブエナジーと対をなすもの。
その「気」であり、意識であり、ルールであるシンラ。
それを動かすものがプリミティブエナジーだからです。
キョー・マチボリーが軽く笑った。
「すんなり頭に入るものではありませんよね。それらの只中にいた私たちでさえ、このことを掴むのに数百年もかかったのですから」
例を挙げてくれる。
今なお光より速いスピードで膨張を続ける宇宙の果て。
このことを思うとき、その意識は光の速さをはるかに超えて、宇宙の果てにたちどころに到達することができる。
長官、貴女の意識であっても、三歳の子供の意識であっても。
ところで、意識とはいったい何でしょう。
ひとりの人間の意識は、計測することのできない微細なものです。
だが、何らかの存在であることには違いない。
「ということなのです」
さて、とキャプテンは一人講義の舞台を進める。
「この船は光速をはるかに超えるスピードで航行しています。神の国巡礼教団の宇宙船の最高速度の数億倍、という速度で」
また静かに笑った。
「というと、少し嘘になります。実際は、百倍程度でしょう。しかし今、私達はプリミティブエナジーの実力を知っています」
宇宙空間に常に吹き荒れているエネルギー。
宇宙を爆発的に膨張させ続けているエネルギー。
しかしそれは、海に漂う水の分子のようなもの。
水という物質を構成する原子、その核、その核を形作っている粒子や電子、それらが内に持つ膨大なエネルギー。
それは「水」という形では表に現れてはきません。
水という形を保つことで、その中に封じ込められているわけです。




