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28 病気なのか?

「地球人類のようにはいかない。パリサイドは」


 寝込んでいるチョットマを囲んで、ユウがンドペキと話している。

 ライラも駆け付けてくれている。スミソやシルバックも心配顔だ。


 アヤのことは心配だが、スゥや総出で探してくれているスジーウォン達に任せよう。

 イコマはチョットマの手を握り、祈っていた。



「地球人類はすべての病気を克服したけど、パリサイドはまだ」


 ユウによれば、地球では見られない身体異常がいくつかあるという。


「宇宙空間に漂っている無数のウイルス。解明されきってはいないのよ」

「チョットマは病気なのか?」



 ンドペキは憔悴した顔だ。

 アヤの捜索から、急遽戻ってきた。


「そうとも言えるし、違うかもしれない。あなたやスミソが罹った症状も、本当に病気なのかどうかもわからない」

「うーむ」

「としか言えないのよ」

「じゃ、薬は?」

「ない」

「ない! でも!」

「チョットマの状態と、あなた達の状態は違う」




 チョットマは目を開けたままピクリとも動かなかった。

 眠っているのだろうか。意識を失った状態だろうか。

 あるいは、意識はあるが身体が動かないのだろうか。


「俺たちの声、聞こえているのか?」

「少しはね。目も少しは見えていると思う。判断できているかどうかは別にして。彼女は今、病気と闘っているのよ。意識の奥底で」

「ウイルスと?」


「さあ。わからない。発見されていないから。いずれにしろ、こういう状態を抜け出す薬はないのよ」

「おい! じゃ、どういうことになるんだ」



 ユウがふうと溜息をついた。

「待つしかない」

「……なんてことだ」

「チョットマを信じて。きっと回復するから」

 そう言って、ユウはチョットマの額に手をやった。

「大丈夫よ。みんな、ついてるからね」




 パリサイドの世界では、主にふたつの病があるという。


 ひとつはンドペキやスミソが罹ったもの。眠りに落ち、様々な夢を見る。

 薬があればたちまち回復するが、放っておくと稀にひと月も眠り続けるという。

 回復が早ければ別条はないが、長すぎると精神に異常をきたす場合もあるらしい。


 もうひとつは今のチョットマ。

 身体が全く制御できなくなり、かすかな意識をかろうじて維持している状態。



「きっと、大丈夫」

 ユウが繰り返している。


「大丈夫でなかったら?」

 チョットマに聞かせるわけにはいかない。

「心配ないわよ」と、目くばせし、また、チョットマに声をかけた。

「ね、チョットマ、楽しい記憶を呼び出すのよ。それを強く思って。他のことは考えなくていいから、楽しかったことを」



 イコマはチョットマの眼を食い入るように見ていた。

 焦点が定まらない宙に向けた瞳。


 艶やかな輝きを持ってはいるが、時々瞬きをするだけで何も捉えていないよう。

 イコマは声にならない叫びをあげた。


 チョットマ!

 チョットマ!


 何もしてやれないとは!

 代わってやることもできなければ、少しでも楽にしてやることさえできない!

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