27 遊ばれてやろうじゃないか!
レイチェルはすでに階段を降りきり、背を向けた。
肩を落とし、先ほどより少し足取りを緩めて、立ち去ろうとしている。
もう、彼女の視界に、俺はいない。
声をかけるなら、今しかない。
もしくは、後をつけるか。
ちくしょう!
何のために!
まさか、ここで声を掛け、あの時と同じような展開に持ち込まないと、歴史が変わるなんてことに……。
あれ以降のことが、すべて無になり、異なる展開に……。
そんなはずはない!
スゥと出会い、洞窟に行ったことはリアルな出来事だったはず。
あれから起きたことはすべて現実! のはず!
今見せられているこれは、ただの幻影!
自分があの時点に、今目の前で繰り広げられている時空に移動したわけではない!
その証拠に……。
証拠は……。
これは幻影のはず……。
そういう目で見ると、先ほどより街は幾分か「生きている」感があった。
街灯に照らされた家々や歩道は、不穏なほど暗くはない。
夜の風が吹いている。
そこここに人の姿さえあるではないか。
ちっ、手を入れやがったな。
見慣れた自分の部屋のドアは……。
そうしているうちに、遠ざかっていくレイチェル。
振り返ってはみるが、立ち止まろうとはしない。
そうだ!
俺が違う! 俺自身が!
あの後の様々な経験もこの記憶の中に持っているし、服装も違うではないか!
そうとわかれば、レイチェルを呼び止め、それから起きることを確かめておいて損はない!
遊ばれてやろうじゃないか!
「レイチェル!」
そう呼びかけた瞬間、幻影のニューキーツは実体感を失った。
レイチェルの姿もぼんやり霞んでいき、声が届いたかどうかも判然としなかった。
しかし、その直後、ンドペキは総身の毛を逆立てていた。
なんだと!




