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29 ああ、これはあの時の……
放った量子弾は空しく大気を切り裂き、相手は頭上高く舞い上がっていた。
ぬ!
これは!
相手は、俺を飛び越し、ふわりと降りてくる。
あの時の!
彼女は言うだろう。
「約束を守らないとは」と。
「くっ」
幻影に反応してしまった。
まずかったのか。
スゥが、「約束を守らないとは」と言いながら、地上に降り立った。
そして、「次に会ったときには」という言葉を残して走り去っていく。
あの時と全く同じように……。
眩暈がした。
ゴーグルの中がたちまち真っ白になった。
いかん……。
意識が遠のいていく……。
倒れる……。
誰かの手が優しく両頬を包む。
声がした。
「私を信じてって、書いておいたのに。こんなところまで来て」
幻影……。
ああ、これはあの時の……。
相手にしてはいけない、とは頭の隅では思いながらも、ユウ、と呟いたのだった。
薄れゆく意識の中で。




