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その十一

 私たちは今、エルフェウム内にある図書館に向かっているようです。

 エルフェウムにはたくさんの図書館があって、一番大きなところが国立魔法学園にあるエルフェウム図書館。街のどこからでも見える、大きな緑色の屋根の綺麗な建物。全ての本の管理は魔法でされていて、普通の書籍から太古の文献や異世界の書物まで、実に様々な読み物が揃っているとか。

 読書は好きな方なので、あんな大きな図書館に行けるのかとワクテカしてたのですが、どうやらそうではないらしいと気付いた瞬間より、私のテンションはダダ下がりです。シグさん、なんか路地裏に入って行ってるんですよ? あんだけエルフェウム図書館のすごいとこを私に話しておきながら、反対方向で図書館なんてなさそうな雰囲気の路地裏に入るとか、生殺しですか?


「不満そうだな」

「はい、不満です」


 不満タラタラですよ! 路地裏ってなんか臭いし暗いしジメジメしてるし! 今更シグさんが不審者なんじゃないかって気がしてきましたよ。私はこのまま、どこかのエロ同人みたいになっちゃうんでしょうか。まあそんなことをされる魅力なんて持ってないのですが。

 あーあ。知らない人についてっちゃいけないって昔からよく言うのに、私ときたら……。


「安心しろ。もうすぐ着く」


 むくれ顔の私を横目で見ながら、シグさんはいたずらっ子のような笑顔でそう言いました。


「はぁ。その笑顔がちっちゃいシグ君のものならどんなに元気が出たことでしょう。まったく、世知辛いものです」

「おい、声に出てるぞ」

「声に出したんですよ」


 そんなことを言っている間に、私たちは袋小路まで来てしまいました。狭くて暗くてジメジメして、嫌な臭いもしますし、最悪です。こういう場所、私嫌いなんですよね。


「シグさん、道間違えたんじゃないですか? 戻りましょう」


 そしてエルフェウム図書館に行きましよう行きたいです。


「いや、こっちで合ってる」


 しかし無常にもシグさんは止まりません。壁に向かって歩き続けます。やがて目の前に壁が立ちはだかって、ようやく立ち止まりました。


「シグさん?」


 シグさんは何も答えずに、黙ってあたりを見回しました。誰かが見てないか確認でもしているんでしょうか。

 突っ立っているシグさんの髪を、風が揺らします。しばらくすると、ようやくシグさんは何かを言いました。


「……―――――」


 シグさんが私には聞き取ることのできない言語で何かをつぶやくと、すぐに袋小路に変化が現れました。変化、というか、まだ気配を感じるだけなのですが、明らかになにかが変わったのです。


「莉子、行くぞ」

「えっ?」


 シグさんは私の方を少しだけ振り向いてそう言い、歩き出しました。壁に向かって。戸惑う私ですが、シグさんが入った場所を見てさらに驚くことになります。

 なんとシグさんは、壁の中に入ってしまったのです! 触れた場所から水のように波紋を広げる『壁』の中に、入って行ってしまったのですっ!!


「し、シグさん!?」


 私は慌てて壁の前に立ちました。シグさんが通った名残なのか、波紋は未だにゆらゆらと揺れています。

 私はそっと壁に手を触れてみました。ほわわん、と波紋が広がります。

 私はどうしようもなく感情が高まり、思わずつぶやいてしまいました。


「ふぁ……」


 ふぁんたすてぃっく、と。

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