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婚約破棄されたので普通の生活を目指します。なお私は剣聖らしいのですが自覚はありません  作者: 翡翠


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5000PV突破記念SS アルヴェイン公爵家御用達の看板が並ぶ不思議な現象について


 ――王都、市街。


 最近、奇妙な現象が確認されている。


 ある店に、共通して掲げられるようになった看板。


 それは一様にこう記されている。


 ――アルヴェイン公爵家御用達。


 発端は不明。


 許可の有無も不明。


 だが。


 増えている。


 確実に。


「……また増えてる」


 エリシアが通りを見渡して言う。


「三軒目」


 レオニードが淡々と数える。


 菓子店。

 雑貨店。

 布地屋。


 すべてに、同じ看板。


 しかも。


 統一されたものではない。


 各店が、それぞれに作っている。


 だが文言は同じ。


「これ、許可出してるの?」


「出していない」


 即答。


「じゃあ違法?」


「違法ではない」


 一拍。


「だが公式でもない」


「なにそれ」


 エリシアが苦笑する。


 曖昧。


 だが、それが現実。


 ――その時。


「あら」


 リリアーナが一軒の店を見て言う。


「このお店、前に来たわ」


 菓子店。


 以前、褒めた店。


 そして。


 看板がある。


「本当ね」


 エリシアが確認する。


「完全一致」


 レオニードも頷く。


 仮説が確定する。


「条件は」


 一拍。


「“評価”だ」


「うん」


 エリシアも同意する。


「お姉様が“美味しい”とか“素敵”って言った店」


「すべて対象」


 リリアーナは首を傾げる。


「どういうこと?」


「気にしなくていい」


 レオニードが即答する。


「そうなの?」


「そうだ」


 それで終わる。


 ――店内。


「いらっしゃいませ!」


 店主が声を張る。


 だが、どこか緊張している。


 理由は明確。


 ――来た。


 その事実だけで、空気が変わる。


「また来たわ」


 リリアーナが微笑む。


「はい……ありがとうございます」


 店主の声がわずかに震える。


 だが。


 嬉しさも混じっている。


「この前の、とても美味しかったわ」


 その一言で。


 店主の顔が明るくなる。


「本当ですか!」


「ええ」


 リリアーナは頷く。


「また買ってもいいかしら」


「もちろんです!」


 そのやり取りは普通。


 完全に。


 だが。


 その裏で。


 意味が変わる。


 エリシアが小さく呟く。


「ねえ」


「なんだ」


「これさ」


 一拍。


「ただの宣伝じゃないよね」


「違う」


 レオニードが断言する。


「“証明”だ」


「何の?」


「選定の」


 つまり。


 “選ばれた店”。


 それが、看板の本質。


 ――後日。


 商店主たちの間で、暗黙の了解が成立する。


 条件は単純。


 ・リリアーナが来店

 ・商品を手に取る

 ・評価する


 それだけ。


 それだけで。


 “御用達”になる。


 公式ではない。


 だが。


 誰も否定しない。


 なぜなら。


 それを否定する理由が存在しないから。


 ――王城。


「報告書」


 王太子が目を通す。


「アルヴェイン公爵家御用達の看板、増加傾向」


「はい」


「影響は」


「売上増加、客数増加、信頼度上昇」


「……当然だな」


 一拍。


「制限は」


「困難です」


「だろうな」


 王太子は小さく息を吐く。


 理解している。


 これは止められない。


 ――現象だから。


 ――再び市街。


 リリアーナが、別の店を見ている。


「これ、素敵ね」


 小さく言う。


 その一言で。


 未来が決まる。


 エリシアが苦笑する。


「……増えるね」


「ああ」


 レオニードも頷く。


「また一軒」


 リリアーナは、ただ買い物をしているだけ。


 ただ、感想を言っているだけ。


 だが。


 その一言が。


 店の価値を変える。


 街の構造を変える。


 そして。


 誰もそれを止めない。


 止める必要もない。


 なぜなら。


 それは、誰も困らない現象だから。


 ただ一つを除いて。


 ――“基準が存在しないこと”。


 だが。


 それすら問題にならない。


 なぜなら。


 基準は、すでに一つしかないから。


 リリアーナは、満足そうに頷く。


「いい買い物だったわ」


 その言葉で。


 また一つ。


 看板が増えることが、確定した。

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