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婚約破棄されたので普通の生活を目指します。なお私は剣聖らしいのですが自覚はありません  作者: 翡翠


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5000PV突破記念SS リリアーナ、商店主らを集めて、またお茶会をする


 ――アルヴェイン公爵邸、庭。


 白いテーブルクロス。


 整えられたティーセット。


 焼き菓子と、軽食。


 穏やかな午後の準備は、完璧だった。


「こんな感じでいいかしら」


 リリアーナが振り返る。


「……規模がでかい」


 エリシアが素直に言った。


 テーブルは一つではない。


 いくつも並んでいる。


 明らかに“個人のお茶会”の規模ではない。


「招待状、全部出したの?」


「ええ」


 リリアーナは頷く。


「この前お買い物したお店の方たちに」


 沈黙。


 レオニードが静かに目を閉じる。


 ――想定以上。


「人数は」


「二十名ほどかしら」


「……」


 エリシアが顔を覆う。


「イベントじゃん」


「問題ない」


 レオニードは即答した。


「制御可能範囲だ」


「ほんと?」


「今のところはな」


 ――来客。


 一人、また一人と商店主たちが庭へ入ってくる。


 緊張した面持ち。


 当然だ。


 公爵家からの招待。


 断る理由はない。


 だが。


 理由も分からない。


「本日はお招きありがとうございます」


 代表の男が頭を下げる。


「こちらこそ」


 リリアーナが微笑む。


「この前は素敵な品をありがとうございました」


 その一言で。


 空気が、ほんの少しだけ柔らかくなる。


 “評価された”。


 それが伝わる。


「いえ、とんでもない」


 男の声に、わずかな安心が混じる。


 席に案内される。


 茶が注がれる。


 菓子が配られる。


 会話が始まる。


 ――普通の、会話。


「最近の王都はどうかしら」


「ええ、少しずつですが賑わいが戻っております」


「それはよかったわ」


 穏やかなやり取り。


 誰も困らない。


 誰も恐れない。


 ただの、お茶会。


 エリシアが小さく呟く。


「……成立してる」


「ああ」


 レオニードも頷く。


「完全に“日常”だ」


 だが。


 それは偶然ではない。


 参加者全員が、無意識に調整している。


 言葉を選び、

 話題を選び、

 距離を測る。


 それでも。


 不自然ではない。


 ――それが最適解。


「このお菓子、とても美味しいわ」


 リリアーナが言う。


 場が少し明るくなる。


「ありがとうございます」


 菓子店の店主が頭を下げる。


 その表情は、明らかに嬉しそうだった。


 “評価された”。


 それだけで十分。


 リリアーナは、もう一度言う。


「また買いに行くわね」


 その一言で。


 店主の目が、わずかに潤む。


「ぜひ……お待ちしております」


 ――価値が生まれる。


 それは金銭ではない。


 信頼でもない。


 もっと単純な。


 “関係”。


 エリシアが小さく笑う。


「ねえ」


「なんだ」


「これさ」


 一拍。


「街ごと味方にしてない?」


 レオニードは否定しない。


「結果としてはな」


 意図はない。


 だが、結果は出る。


 それがリリアーナ。


 ――しばらくして。


 会は終わる。


「本日はありがとうございました」


 商店主たちが一斉に頭を下げる。


「こちらこそ」


 リリアーナが微笑む。


「また来てくださいね」


 自然な一言。


 だが。


 その意味は重い。


 “また呼ばれる”。


 それは信頼の証。


 そして。


 無意識の“結びつき”。


 商店主たちは帰っていく。


 表情は、来た時と違う。


 緊張はある。


 だが。


 それ以上に。


 ――安心。


 エリシアが伸びをする。


「……終わった」


「問題なし」


 レオニードが言う。


「完全成功」


 リリアーナは満足そうに頷く。


「楽しかったわ」


 それが全て。


 目的も、

 結果も、

 評価も。


 全部そこに集約される。


 エリシアが小さく言う。


「ねえ」


「なに?」


「またやるの?」


 リリアーナは少し考えて。


「そうね」


 一拍。


「またやりたいわ」


 その一言で。


 レオニードとエリシアの思考が同時に動く。


 ――準備が必要。


 だが。


 それを口には出さない。


「いいと思う」


 エリシアが笑う。


「楽しかったしね」


「そうだな」


 レオニードも頷く。


 ――また一つ。


 世界の側が、彼女に合わせる理由が増えた。


 リリアーナは、空を見上げる。


「いい日だったわ」


 その言葉に。


 何も起きない。


 空は青く、

 風は穏やかで、

 世界は静かだった。


 それだけで。


 十分だった。

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