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婚約破棄されたので普通の生活を目指します。なお私は剣聖らしいのですが自覚はありません  作者: 翡翠


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5000PV突破記念SS 甘えん坊の黒竜とリリアーナがじゃれた日

 ――アルヴェイン公爵領、山岳部。


 人の気配はない。


 あるのは、岩と木々と、静かな風。


「ここなら大丈夫よね」


 リリアーナがそう言って、少しだけ周囲を見渡す。


 視線の先には、広い山林。


 王都とは違う。


 遮るものも、制御するものもない。


 ただの自然。


 そして。


「……来ていいわよ」


 小さく、そう言った。


 一瞬。


 風が止まる。


 次の瞬間。


 空間が、裂けた。


 黒。


 圧倒的な質量と存在。


 黒竜が、現れる。


 だが――


「主」


 声は、穏やかだった。


 敵意はない。


 ただ。


 喜び。


「来たわね」


 リリアーナが笑う。


「来た」


 黒竜は、ゆっくりと首を下げる。


 巨大な体躯。


 だが、その動きは慎重だ。


 壊さないように。


 触れないように。


 ――主以外を。


「今日は、少しだけ遊びましょうか」


 その一言で。


 黒竜の目が、明確に輝いた。


「了承」


 一拍。


「全力は不要か」


 リリアーナは少し考える。


「ええ」


「軽くでいいわ」


 その認識差。


 だが、問題ない。


 黒竜にとっては、それが最適。


 次の瞬間。


 地面が砕けた。


 黒竜が動く。


 速い。


 巨体とは思えない速度。


 だが。


 リリアーナは、その場にいる。


 動いていないように見える。


 だが。


 ――すべて、外れている。


 爪。

 尾。

 風圧。


 すべてが“当たらない”。


 最初から。


「いいわね」


 リリアーナが一歩踏み出す。


 その動きに。


 黒竜の軌道が、わずかに歪む。


 結果として。


 転がる。


 巨体が。


 山を削りながら。


 岩が砕け、

 木が薙ぎ倒される。


 轟音。


 だが。


 リリアーナの周囲だけは、静かだった。


「ほら」


 近づく。


 黒竜の腹部。


 完全に無防備。


「ここ」


 手を伸ばす。


 触れる。


 撫でる。


 ゆっくりと。


 優しく。


 黒竜の動きが止まる。


 完全に。


「……」


 沈黙。


 だが。


 その空気は穏やかだった。


「気持ちいい?」


 リリアーナが聞く。


「……良好」


 黒竜の声が、わずかに低くなる。


 それは。


 満足の証。


 リリアーナは少し笑う。


「そう」


「よかったわ」


 さらに撫でる。


 何度も。


 ゆっくりと。


 その度に。


 周囲の地形が、崩れていく。


 山林が消えていく。


 だが。


 誰もいない。


 被害は、自然だけ。


 ――時間が経つ。


「もういいかしら」


 リリアーナが言う。


 黒竜が、ゆっくりと起き上がる。


「満足度」


 一拍。


「最大」


 即答。


「そう」


 リリアーナは頷く。


「じゃあ、また今度ね」


「了解」


 黒竜は、再び空間に溶ける。


 消える。


 静寂が戻る。


 だが。


 景色は、変わっていた。


 山林は消え、

 地形は抉れ、

 岩肌が露出している。


 完全な破壊。


 ただし。


 ――人的被害、ゼロ。


 リリアーナは、周囲を見渡す。


「……少しやりすぎたかしら」


 そう言いながらも、困った様子はない。


 ただ、少しだけ考えて。


「まあ、大丈夫よね」


 その一言で、結論は終わる。


 ――後日。


 報告書。


 ・発生場所:アルヴェイン公爵領 山岳部

 ・被害:山林壊滅(広範囲)

 ・人的被害:0

 ・原因:不明

 ・備考:地形変動あり


 そして。


 非公式追記。


 ・黒竜満足度:100%


 それだけが、事実だった。

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