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聖詞と瑞基

 読んで戴けたら倖せです。

 夕食を食べにエリザベータに行くと何故か聖詞と一緒に瑞基も働いていた。


 瑞基はしょんぼりとして元気がなかった。


「どうしたんだ? 」


 聖詞に訊いた。


「社会勉強に挫けたみたい」


 聖詞は苦笑いした。


「社会勉強ねぇ.......」


 見ると瑞基は運んだコーヒーをテーブルに置こうとして溢した。


 聖詞がダスターを持って飛んで行き、溢れたコーヒーを拭きながら頻りにお客に謝っている。


 瑞基は突っ立ったまま俯いていた。


 相当へこんでいるようだ。


「朝からずっとあの調子」


 魁威が笑いながら言った。


「社会勉強ね」


 聖流は笑った。


 次の日に、夕食を食べにエリザベータに行くと、昨日とはうって変わって瑞基は元気いっぱい働いていた。


 相変わらず失敗はしているようだが、瑞基はそれにめげること無く自分で対処していた。


 劇的な進歩を遂げたようだ。


 聖詞が嬉しそうに瑞基を見守っていた。


 次の日に行くと、聖詞がしょげていた。


 魁威に訊くと瑞基が帰ったらしい。


 聖詞本人はしょげている事を悟られまいと普段と変わらないように振る舞っているが聖流と魁威にはそれは通用しない。


「あれは相当淋しいね」


 魁威が言った。


「聖詞があんなに世話好きだったとはね」


 聖流は笑った。


 次の日に行くと聖詞が、昔の様な明るい表情をするようになっていた。


 魁威が言った。


「夕べ瑞基が帰って来て隆一朗に告白したらしいんだ」


「告白? 」


「何を言ったかは知らないけど、隆一朗があんなに明るくなるなんてね

 あんな隆一朗、初めて見た」


「昔の聖詞を思い出すよ」


「へえ、そうなんだ」


 魁威は嬉しそうに聖詞を見ていた。


 会社の同僚と飲みに行ったりしていたので、三日ほど空けてエリザベータに行くと瑞基が店を手伝っていた。


 魁威は聖流の夕食を作りに奥へ引っ込んだ。


 瑞基がカウンターに座る聖流の隣に座って言った。


「聖流さん、隆一朗ってなんであんなに爺くさいんですか? 」


 聖流は吹き出した。


「どうして爺くさいの? 」


 聖流は笑いながら訊いた。


「だって爺みたいにクソ真面目なんだもん

 家出してても学校行けとか言うし、万引きしたくらいでめっちゃ怒るし、何かって言うと嫌いなの知っててピーマン食べさせるし

 今日なんかテストで帰るの早いって言ったのに忘れて怒るし

 とんでもないメシは食わされるし........」


「聞こえてるよ、瑞基

 そんなに不満があるなら、出て行ってくれても僕は一向に構わないよ」


 接客から戻って来た聖詞が言った。


「これだよ

 俺が出て行けないの知ってて、そう云うこと言うし」


「君が出て行けないのは僕のせいじゃないからね」


「しょうがないだろ!

 どうしても隆一朗の傍に居たいんだから! 」


 聖流は瑞基と会話する聖詞に驚いていた。


 こんなにも生き生きとした表情の聖詞を再び見ることができるとは思ってもみなかったからだ。


 聖詞は優しい笑みを浮かべて瑞基を見ていた。


 聖流は不思議に思って瑞基に訊いた。


「どうして聖詞の傍に居たいの? 」


 お客が来て聖詞は水を持って接客に行った。


 瑞基は俯くと小声で言った。


「それは隆一朗が......好き....だから..........」


 そう言うと瑞基は真っ赤になって更に俯き身体を縮めた。


 聖流は瑞基の肩をポンポン叩いた。


 戻って来た聖詞を見て、思わず聖流は言った。


「聖詞、お前少し太ったな」


「そお?

 そうかもしれない

 毎日がつがつ食べる瑞基みてたら、つられて結構食べるようになったから」

 

 聖詞は笑った。


「おいおい笑い事じゃないよ

 うちの看板ギタリストがただのデブになられたら困るんだけど」


 魁威が聖流のロコモコを手に奥から出てきた。


 聖詞は笑った。


 昔の様に自然に笑う聖詞の笑顔は、聖流を心から安堵させた。



 ニキータのイベントライヴに備えて練習しようと言う話になり、聖流は夕方聖詞と瑞基を車で迎えに行った。


 瑞基は聖詞のアンプとギターに押し潰されそうになりながら後部座席に乗っていた。


 郊外の田舎道を走っていると聖詞が瑞基を振り返り言った。


「瑞基、眠っちゃったみたい」


「瑞基くんは随分聖詞になついているようだな

 大丈夫なのか?

 家族が心配してるんじゃないのか? 」


 助手席の聖詞が言った。


「その心配は大丈夫だと思うよ

 凄く機転が回る子なんだ」


「瑞基くんのお蔭で、随分変わったな」


「そうだね

 瑞基が来てからあの時の夢も見なくなったんだ

 瑞基と居ると毎日が目まぐるしくてね

 過去に拘っている暇が無い


 瑞基の笑顔を見ていると凄く癒される

 お陽様みたいに笑うんだ」


「そうか........」


 民家の明かりが星のように散らばり、流れて行く。


 バックミラーに瑞基の無防備な寝顔が映っていた。


 聖流は瑞基の存在に感謝した。




 次の日の夜、実家に帰った聖流は真聖に、聖詞の近況を報告した。








 読んで戴き有り難うございます。


 エドワード・ヴァン・ヘイレンが亡くなりました。

 アメリカのヴァン・ヘイレンのギタリストです。

 ちなみにヴァン・ヘイレンのドラマーはエドワードのお兄ちゃん。


 エドワード・ヴァン・ヘイレンで有名なのはマイケル・ジャクソンのビートイットでギター入れたのがエドワードなんですよね。

 マイケル・ジャクソンがレコーディングしている処にエディが遊びに来て、その場の乗りでギターをノーギャラで入れて帰って行ったのは有名なエピソード。


 私はそれ知らなくて、ビートイット聴いた時、めちゃくちゃカッコいいギターだなあとのほほんと聴いてました。笑

 後でそのエピソード聞いて、えーーっ❗❗あのギター、ノーギャラなのお❗❗とめちゃくちゃ驚きました。笑

 

 昔のエディくん、たのきんトリオのよっちゃんに似てるなんて言われてましたね。笑




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― 新着の感想 ―
[一言] 聖流から見た隆一朗。この視点も新鮮かも。
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