表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/39

ビール

 読んで戴けたら倖せです。

 バートリーはこの四年で街ではそこそこ名の通るアマチュアバンドになっていた。


 固定のファンもいて、魁威(かい)が時々行うライヴ映像をネットにアップしたりしているので、地元の若い子たちの間ではバートリーを知らなければモグリなんて言う言葉がでるほどだった。


 一ヶ月後にライヴを控えてバートリーのメンバーは各自仕事が終わると、町外れにある元農家の民家だった練習場に集まって、練習に励んだ。


 魁威がフライヤとチケットを扇形に持ってニコニコしていた。


「皆さん、頑張って売りましょー」


「あー、またこれだよー」


 麗畏(れい)が頭を掻いた。


 樹良(じゅら)は深いため息をついた。


「毎度の事だけど、これだけは慣れないなあ」


 各自決められた枚数の売り捌くのに苦労していた。





 聖流(さとる)はマンションに帰るとキッチンのカウンターにフライヤとチケットを放った。


 チャイムが鳴った。


 聖流が出ると(おう)が大きな買い物袋を両手に持って立っていた。


「重たい! 」


 央は持っていた買い物袋の片方を聖流に押し付けると、ずかずか部屋に入って来た。


 テーブルに買い物袋を置いて、ソファーに倒れ込むように座った。


「はーぁ、重かったーぁ」


 聖流は買い物袋の中を覗いた。


 五百缶のビールがぎっしり入っている。


「何事なんだ? 」


「一緒にビール飲もうと思って」


「どうしてオレがお前と酒を飲まなければならないんだ? 」


「いいじゃない、付き合ってよ

 強いんでしょ? 」


 ソファーの背凭れに腕を載せて央は聖流を見詰めた。


「あれ、それなーに? 」


 央は立ち上がるとカウンターのチケットを見詰めた。


「へーえ、聖流バンドなんかやってるんだ」


 フライヤを手に取ると央は興奮して言った。


「わっ、聖流カッコいい!

 ボクも見に行っていい?

 一枚買うからさあ」


「お前には関係無い」


「どうしてえ

 見たい

 見たい

 見たい

 見たいーっ! 」


「ああ煩い!

 好きにしろ! 」


「本当?

 やったあ!

 絶対見に行く! 」


 央はチケットとフライヤを一枚ずつ取ると胸に抱えて微笑んだ。


「そうそう、おつまみも買ったんだよね

 聖流チータラ好き? 」


 央は買い物袋からおつまみを出してテーブルに並べた。


「馴れ馴れしく名前で呼ぶな」


「もう

 少しは打ち解けてよ」


「ごめんだな」


 聖流は床に買い物袋を置くとキッチンのカウンターに腰掛けた。


「こっち来てよ

 じゃないと泣くよ」


「勝手に泣いてろ」


 聖流はタバコに火を点けた。


「ボクにも一本ちょうだい」


「餓鬼がいきがるな」


「ほんっと頑固だねえ」


 央は立ち上がるとカウンターに置かれたタバコとジッポライターを取って吸い始めた。


「灰皿ちょうだい

 くれないと床に落とすよ」


「その前に追い出す」


「ああ、もう! 」


 央は仕方なくサイドボードを覗き込んで灰皿を探し出した。


「今日、恋人と別れたんだ

 全く売れない画家で、ボクが養っていたんだけどね

 聖流の為に身綺麗にしようと思って

 随分泣かれたけど、聖流の方が好きになっちゃったんだから、仕方ないよね」


 央はタバコを吸い込むと煙を聖流に吹き掛けた。


 聖流は顔をしかめた。


 咥えタバコで央は床の買い物袋をテーブルに移し、ビールを一本出して飲み始めた。


「十四の分際でタバコに酒とは、酷い悪餓鬼だな」


「この悪餓鬼、これでもなかなか稼ぐんだよ

 顧客がいっぱい居るんだ

 そこら辺の女よりはテクニックあるつもり

 聖流も試してみればいいのに」


「親は何をしている? 」


 央の表情が変わった。


「ボクに親なんて立派なもの居ないよ

 金ずるなら居るけど」


 そう言うとビールを勢いよくあおった。


「金なら自分で稼げる

 聖流が仕事辞めて欲しいって言うんなら辞めてもいいけど

 そしたら聖流が養ってくれる? 」


 聖流は央の前に座った。


「それは仕事とは言わない

 犯罪って言うんだ」


「はっ、上手いこと言うね」


 央は二本目を開けた。


 聖流はそれを取り上げた。


「止めろ

 子供の癖に飲み過ぎだ」


「心配してくれるの?

 案外優しいんだね」


 央はまた一本取り出して開けた。


「ボク、これでも結構強いよ

 本当の恋に乾杯」


 央は缶を掲げて飲んだ。


「ねえ、このおつまみ美味しいかな」


 並べたおつまみの一つを取って開けると聖流に差し出した。


 聖流はひとつまみして口に入れ、ビールをあおった。


「そう来なくちゃね」


 央は屈託ない笑顔を聖流に向けた。


 ビールを飲みながら、終始たのしそうに友達の話や客の話をした。


 聖流はビールを飲みながら黙って、その話に付き合った。


 朝方になると話し疲れ、酔った央はソファーに胡座をかいて眠ってしまった。


 聖流は央を抱き抱えると寝室に運び、ベッドにそっと降ろした。


 央の腕が背中に回され、央は目を開けた。


「聖流が好き」


 央は目を閉じて聖流の口唇に口唇を押し付けた。


 口唇を離すと央は言った。


「こんな軽いキスでもこんなに感じちゃうんだから、セックスしたらどんなに倖せだろう

 抱いてよ

 ねえ、苦しいんだ

 とても...........」


「男とやる趣味は無い」


 聖流は背中に絡んだ央の腕をほどいて部屋を出た。


 央は指先で口唇に触れると目を閉じた。


 聖流はシャワーを浴びると仕事に出掛けた。


 聖流が仕事を終えて帰ると央の姿は無く、キッチンのカウンターにチケットの代金が置いてあった。

 






 読んで戴き有り難うございます。

 

 なんと、我が家には三百本以上の映画のDVDがあります。

 主に洋画ばっか。

 とにかく、我が家の人たちは映画好きです。

 旦那は2日に一本は観るんですよ。

 活字中毒の娘は一度観た映画は、ほんの数秒音声を聞いただけでなんの映画が当てます。

 

 日本の映画はコミックスやアニメの実写版は好きですが、文芸作品はやたら泥臭いし、すっとぼけた内容のは嫌いですねえ。

 俳優さんは年々、クオリティを上げているのに、監督さんは相変わらず古臭くて泥臭い作り方に執着した方多くて、泣けて来ます。

 

 やはり日本と言えばアニメーションが素晴らしいですよね。

 世界に誇れる文化ですよね❗



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 数秒で作品名が分かるのは凄い特技ですよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ