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央の章     央

 読んで戴けましたら、倖せでございます。

 聖流は今年で三十歳になっていた。


 久し振りに実家に帰り、真聖とウィスキーを酌み交わしていると、真聖が言った。

 

「いい人は居ないのか? 」


「いい人? 」


「そろそろお前も落ち着いたらどうだ

 心に決めた女性は居ないのか」


 聖流はソファーの背凭れに頭を載せて言った。


「オレは結婚はしないと思うよ」


「孫の顔を見せる親孝行はしないと言うことか」


「親の背中みてると、とても女性に幻想を抱く気にはなれないなあ」


 真聖は黙った。


「悪い、今のはキツかったよね

 でも、正直そう思ってる」


「そうか.........」


 真聖はウィスキーを煽った。


「聖詞は元気にしているか

 何か不自由な事は無いのか」


「聖詞は未だに苦しんでいるよ」


「帰る気は無いのか」


「前にも言ったけど、それはあり得ないと思う」


「そうか.........」


 真聖はグラスを回して、それに見入った。









 聖流の会社に臨時に新入社員が入って来た。


 その歓迎の飲み会の帰りだった。


 酔いを醒まそうとぶらついていると公園が目に入り、水呑場を求めて公園に入って行った。


 東家に人影が蠢いていた。


 その傍に水呑場を見つけ、聖流は東家に近付いた。


 街灯に照らされて、東家のベンチに座る女に男が屯しているのが見えた。


 一人は女の股間に顔を埋め、一人は首に、一人は女の後ろから女とキスをしていた。


 女の上半身は乱れて、殆ど裸に近かった。


 女が聖流に気付いて顔をこちらに向けたので、聖流と目が合った。


 そして聖流は息が詰まるほど驚いた。


「貴都李! 」


 聖流は女から目が離せなくなった。


 女は面白そうに聖流を見て言った。


「気が変わった。

 お楽しみはこの次にするよ」


 男の一人が不満気に言った。


「ああ?

 冗談だろ、これからって時に! 」


「ボク、人に見られて欲情するタイプしゃないからね」


 男たちが一斉に聖流を見た。


「気分が失せたんだ、仕方無いね」


「今更なんだよ」


 男たちは次々と女から離れ、聖流を睨み付けながら去って行った。


 聖流にわざとぶつかって行く者も居た。


 聖流はそれを気にする余裕も無いほど女を凝視していた。


 女だと思っていたが身体つきから少年である事に気付く。


 少年はズボンのジッパーを上げ、乱れた服を直して聖流に近付いて来た。


 近くで見ると、貴都李とは似てもいなかった。


 似ているとすれば男にしては紅過ぎる丸い口唇だろうか。


「ボクが誰かに似てた? 」


 聖流は動揺が未だ治まらず、少年の言葉が頭に入って来なかった。


「そんなに見詰められたら、穴が空きそうだ」


 聖流はやっと口を開いた。


「その歳で、大の男を三人も手玉にとるとはね」


 少年はふふっと笑って聖流の周りを歩き回った。

 

 聖流の周りを一周すると正面に立ち、聖流の首に腕を回し、下半身を押し付けて来た。


「あなた、いい男だなあ

 凄くセックスが上手そうだ」


「残念だが、男とする趣味は無いな」


「そう?

 やってみると案外楽しいかもよ

 ボクも下手では無いからね」


「誘ってるのか? 」


「勿論

 セフレを帰しちゃったんだから責任とってよ」


「子供は家に帰ってゲームでもしてろ」


 聖流は水を飲むと少年を無視して歩き始めた。


 少年は聖流の腕に自分の腕を絡ませて歩いた。


「子供扱いしないでよ、もうすぐ十五になるんだ」


「立派に子供だな」


「子供じゃ無い! 」


「あまり興奮すると、オシッコ漏らすぞ」


「オシッ........!

 こんな侮辱されたの初めてだ 

 いったい何様のつもりだよ」


「それはこっちの台詞だな

 こんな子供に舐められたのは初めてだ」


「ボクが舐めるのはフェラの時だけだよ」


 聖流は足早に歩いた。


 身長が聖流の肩までしかない少年は小走りになりながら必死に聖流の歩調に付いて来た。


 メインストリートに出ると聖流はタクシーを呼び止めた。


 聖流がタクシーに乗り込むと少年は反対側のドアを開けて乗り込んで来た。


「何処まで付いて来る気だ」


「それはボクの自由だよ」


「お前は他のタクシーに乗れ」


「気安くオマエなんて呼ばれたくない」


「じゃあ、降りろ」


 少年は挑発するように言った。


「イ・ヤ・ダ」


 タクシーの運転手が困り果てて言った。


「いったい、どうするんです? 」


 聖流は運転手に言った。


「出してくれ」


 タクシーは動き出した。


 聖流は腕を組んで無視を決め込んだ。


 少年は流れる街並みを眺めていた。


「ボクは央

 あなたは? 」


 聖流は黙っていた。


「名前くらい教えてくれてもいいだろ」


「答えたくないね」


「どうして? 」


「まとわりつかれそうだ

 迷惑極まりない

 下半身にしか興味が無いエロ餓鬼の相手はごめんだ」


 央は聖流を見詰めた後、俯いて黙った。


 そして鼻を啜った。


 どうやら泣いているらしい。


「酷い言いようだな

 ボクだって人並みに傷付くよ」


「お前が泣くようなたまか」


「バレたか」


 央は笑って舌を出した。


 とうとう聖流のマンションに着いてしまった。


 聖流は部屋の鍵を開けて室内に入った。


 央は後に続いた。


「厚かましい奴だな

 他人の家に了解も無く入って来るな」


 央はその言葉は無視して奥に入りピアノに触れて言った。


「凄いな

 グランドピアノなんて置いてあるや

 弾けるの? 」


 聖流は構わず着替え始めた。


「手伝うよ」


 央は駆け寄って聖流に触れようとした。


「触るな」


 央は思わず引いた。


「さっきから何だよ

 ボク、そんなに嫌われる事したかな」


「散々してるな

 見ず知らずの男のタクシーに平気で乗り込み、家に上がり込んだ

 厚かましいにもホドがある」


「仕方ないだろ

 一目惚れしちゃったんだから」


「色ボケの餓鬼に一目惚れされても少しも喜ぶ気にはなれないな

 しかもゲイと来てる」


 着替えた聖流は冷蔵庫からビールを取ると開けて飲んだ。


「ボクも喉渇いた」


 聖流はビールをもう一本取ると央に放った。


 央はキャッチすると開けながら言った。


「子供にお酒飲ませていいの? 」


「都合のいい時だけ子供を主張するのか」


「それはこっちの台詞だよ

 都合のいい時だけ大人扱い? 」


「オレにはどうでもいい事だ

 お前がさっさと出て行ってくれればそれでいい」


 央は三五缶のビールを一気に飲み干すと空き缶をピアノの上に置いた。


「解ったよ

 今日は帰る

 また来るよ」


 央は出て行った。


 聖流はソファーに座ると眉間を押さえた。


『どうして、貴都李に.........? 』







 読んで戴き、有り難うございます。

 やっと央が登場しました。

 央のこの名前はO嬢のなんとかと言う十一人の男たちに拉致監禁されて快楽に目覚めていく女性のエロドラマがありまして、私も見た事無いのですが、そのO嬢から取りました。

 と、言うことでOはビッチです。笑

 でも、凄く華があるキャラで央を書くのはとても楽しかったです。

 央を好きになってくれると嬉しいですね。

 

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