バートリー結成
読んで戴けたら、嬉しいです。
夕方、聖流がエリザベータを訪れると定休日だったが硝子越しに、奥のカウンターの傍で人影が見えていた。
聖流が入って行くと、聖詞と魁威を含めて四人ほど人が集まっていた。
聖詞と魁威はカウンターに、他二人はテーブルに着いていた。
聖流に気付くと魁威は軽く手を上げて挨拶した。
よく見ると他の二人も見憶えがある。
喧嘩している聖詞を魁威と一緒に見学していた二人だった。
二人は聖流に気付いて魁威に視線をやった。
魁威は聖流を二人に紹介した。
「隆一朗のお兄さんで、藤岡聖流さんだ
こっちの黒長髪がベースの麗畏
碧いメッシュを入れてるのがヴォーカルの樹良
樹良はちょうど隆一朗と同じ年だな」
樹良は笑って頷いた。
二人は聖流と握手した。
「今、みんなでバンド名考えてた処なんですよ
簡単で憶えやすくて、カッコいい名前にしたいねって言ってたんです」
魁威がコーヒーを淹れながら言った。
「何かいい名前ありますか? 」
「バンド名ねえ......」
聖流はストゥールに腰掛けると頬杖をついた。
「ここがエリザベータだから、バートリー? 」
「あ、俺それ知ってる」
樹良が言った。
「エリザベータ・バートリーだよね
何十人もの娘たちの血を浴びて自分の美しさを保とうとした女性だね」
「バートリーかあ........」
麗畏は天井を仰いだ。
「いいかもね」
聖詞が言った。
「うん、憶えやすいし響きもいいな」
魁威が言った。
「麗畏どう思う? 」
「俺もいいと思うよ」
樹良が言った。
「じゃあ決まりだね」
聖流は魁威に向かって言った。
「今度、練習風景を見せて貰いたいね」
聖詞はカウンターに組んでいた腕に顎を載せて聖流を見て言った。
「それは、ちょっと照れるね」
聖流は笑った。
「是非、お手並み拝見したいね」
その後、五人は好きなバンドの話や機材の話で盛り上がった。
聖詞が他の三人に溶け込んでいるのを見て聖流は安心した。
バンドを始めるようになると、傾けるエネルギーの殆どがギターへと注がれるようになり、聖詞の飲み屋で喧嘩する頻度が激減した。
魁威の提案で聖詞は調理師免許を取り、エリザベータで働く事になった。
エリザベータで働くようになって半年ほど過ぎた頃、聖詞はエリザベータの近くにある古いアパートで念願の一人暮らしを始めた。
しかし、一人暮らしをするようになった聖詞の生活は荒廃して行った。
沙夜子の悪夢に怯え、独人を恐れ、以前にも増して自己を責め、穏やかさとかけ離れた日常を過ごすようになった聖詞は人間的な表情を失くして行った。
聖流は月に一度、聖詞を心療内科に連れて行き、聖詞を見守る為に、聖詞のアパートの近くに引っ越してバートリーに加入した。
聖詞の章 fin
読んで戴き有り難うございます。
スピンオフって本編と辻褄合わせるって言うのが難しそうだなと、思っていたのですが、ラプンツェルの接吻はそれこそ何十年と温めていたストーリーなので、あまり苦にはなりませんでした。
できがいいとか悪いとかを超えて、私にとって別格の作品で、何かを造り上げる原点となる愛すべき作品です。
明日からは央の章です。
宜しくお願い致します。m(_ _)m




