寺月魁威
読んで戴けたら倖せです。
暫く喫茶店の傍で様子を見ていると、飲み屋街で見物していた男の一人が帰って来た。
聖流は男に話し掛けた。
「突然すみません、ちょっといいですか? 」
「なんですか? 」
男は訝しげに聖流を見た。
「ここでお世話になっている少年の事でお話聞かせて貰いたいのですが」
「あなたは誰です? 」
「兄です」
「お兄さん? 」
「去年家をでて以来、ずっと探していたんです」
「そうなんですか
それなら俺も訊きたい事があります
どうぞ」
男は閉店した喫茶店に入るよう促し、店の照明を点けるとコーヒーを落とし始めた。
聖流はカウンターのストゥールに座った。
「聖詞はここに、どれくらいお世話になっているんですか? 」
「聖詞と言うのが本当の名前なんですね
俺たちには隆一朗って名乗ってますよ」
男はカップを二つ用意しながら言った。
「うちに転がり込んで、かれこれ一年になります」
「そうですか........」
男がコーヒーを砂糖とミルクを添えて聖流の前に置くと聖流は立ち上がって名刺を両手で差出して言った。
「藤岡聖流と言います」
男は名刺を両手で受け取ると名刺を見ながら言った。
「建築家さんなんですね
俺はと寺月魁威と言います
一応、この店の経営しています」
「弟がお世話掛けて申し訳ない」
聖流は頭を下げた。
「世話なんて事も無いですよ
あいつ若い癖に妙に硬くて、アルバイトで貰った給料から生活費必ず入れて来るから」
「聖詞は何処で働いているんですか? 」
「ここの近所のクリーニング店です
お袋が笑うんです、隆一朗は今時の若い子じゃないって」
聖流は笑った。
「聖詞はいつも、あんな風に喧嘩をするんですか? 」
「何が気に入らないんだか、当たる者触る者手当たり次第喧嘩ふっかけてはナイフを放って挑発するんですよ
家を出るって何があったんですか? 」
「聖詞はなにも? 」
「訊かれるのも嫌みたいだから、敢えて訊いたりしませんが、こっちも毎晩あれじゃあ気になって.......」
「あれ? 」
「目を開けてって奴......」
「ああ、まだあるんですね」
「時々風呂場で倒れるんです
一度病院に連れて行ったんですけど精神的なものだろうって言われました
それと何かにつけて人に絡む
よほどの事がなければあんな風にはならないでしょう?
一体何があったんですか? 」
聖流はストゥールに座るとカウンターに手を組んで暫く黙った。
魁威は察して言った。
「無理に言わなくてもいいですよ
それを知っても知らなくても隆一朗がいい奴に変わりは無いから」
「すみません
聖詞が話すまで待って貰えると助かります」
「解りました
藤岡さんは連れ戻したいんですか? 」
「できれば.......
でも、さっき話した感触では本人にはその意思が無いようです」
「そうでしょうね
うちは構わないですよ、お袋は隆一朗を気に入ってるし
美少年の息子ができたってよろこんるくらいだから」
魁威は笑った。
「助かります」
聖流は頭を下げた。
「何かあれば、うちでできるかぎりの対処はさせて戴きます」
「弟想いなんですね」
「聖詞のこと宜しくお願いします」
聖流は再びストゥールから降りると深々と頭下げた。
読んで戴き有り難うございます。
昨日調子、思い切り崩しました。
ご迷惑おかけしました。
今日からまた宜しくお願いします。




