最初で最後の恋
読んで戴けたら嬉しいです。
二、三日経って落ち着いたのを見計らって、学校帰りの聖流は大量のお菓子を買って貴都李の居る病院を訪れた。
総合案内で貴都李が入院している病室を訊いて、エレベーターを待ちながら院内地図を見ていた。
何故か怪我で入院している筈の貴都李は内科病棟に入院していた。
病室に行くと個室で、聖流の姿を見た貴都李は嬉しそうに笑った。
「起きてて大丈夫なの? 」
「ごめんね
家から閉め出されて、気が付いたら聖流君の家に来てたんだ」
「気にするな」
聖流は貴都李にお菓子の入った袋を渡した。
「こんなに? 」
貴都李は目を丸くした。
「有り難う」
貴都李は袋の中を覗くとポテチを一つ取り出し開けて聖流に勧めた。
聖流は置いてある丸椅子をベッドの傍に置いて座り、ポテチを一枚取るとパリパリといい音を立てて食べた。
「海に行った時........」
貴都李は俯いて話始めた。
「嬉しかったんだ、ボクにも誰かの役にたてるんだって
そう思えて」
聖流は俯く貴都李の男にしては紅過ぎる丸い口唇を見ていた。
「最近ずっといい事ずくめだったんだ
聖流君に虐められてるとこ助けて貰ったり、一緒に食事できたり、海に行けたり
凄く倖せな事が次々と起こって.....
浮かれていたら、罰が降りた.....
ボク、白血病なんだって」
聖流は驚きに目を見開き、貴都李を見詰めた。
白血球が異常に減少し、ちょっとした怪我でも血が止まらなくなる血液の癌。
それくらいの知識は聖流にもあった。
「早期発見なら治るんだろ? 」
「ちゃんと治療すれば治るからとは言われたけど.......
死ぬけど治療しましょうとは言わないだろ? 」
貴都李は笑った。
聖流はどう言葉を掛けていいのか解らなかった。
貴都李は楽しそうに話した。
「誰かに恋するって凄いね
聖流君を見てるだけで倖せだった
学校で虐められるの解ってても、聖流君に逢えるから耐えられた
養父に殴られても聖流君を想い浮かべるだけで痛みが和らぐんだ」
貴都李の細い背中や首が、今にも壊れそうに儚く見えた。
「聖流君......お願いがあるんだ.......」
貴都李は初めて聖流の顔を見て言った。
「キス......して.......」
思いもよらない言葉に聖流は一瞬頭が真っ白になった。
「その想い出を持って逝くから........」
懇願する眼差しに耐えきれず聖流は立ち上がった。
倒れた椅子が大きな音を響かせた。
「莫迦言うな!
そんな事できる訳ないだろ! 」
貴都李は聖流の手を掴んだ。
貴都李の目から涙が溢れ出した。
「ボクの初めての恋なんだ......
最初で最後の恋なんだ」
貴都李は握った手に力を込めてかぶりを振った。
「死にたくない!
死にたくない!
死にたくない!
死にたくないよ........」
貴都李はしかみつくように聖流の服の袖を掴み言った。
「独人で死ぬのが恐い
たった一人で何処へ行くの? 」
貴都李は聖流の腕を抱き締めた。
「一緒に死んで
どんな死に方でもいい、聖流君と死ねるなら恐くない」
聖流は貴都李から目を逸らした。
「それは.....できない........
オレは聖詞を守らなきゃならない」
貴都李の目から涙が次々と溢れた。
貴都李の手から力が抜けてほどけ、聖流から手を離した。
「ごめん、聖流君
ボク、どうかしてた
今のことは忘れて.............」
貴都李は白い掛け布団を握り締めて震えていた。
聖流は拳を強く握り、貴都李を見詰めた。
静寂の中で貴都李の今にも泣きそうな息使いだけが弱々しく聞こえていた。
聖流は貴都李のか細い背中を抱き締めたい衝動に駆られた。
聖流は目を閉じる。
そして、身体を折ると貴都李の口唇に口唇を重ねた。
貴都李は驚いて、目を見開いた。
西陽が殺風景な病室を朱く照らしている。
それは、口唇が触れるだけの淡いキスだった............。
聖流は口唇を離すと病室を飛び出して行った。
病室を出た聖流は速足で歩いた。
家に着くと聖詞が声を掛けても答えもせず自分の部屋に籠った。
口唇で触れた貴都李の口唇の冷たくて柔らかい感触がいつまでもまとわりつく。
聖流はその日から、貴都李の見舞いに行く事ができなかった。
二ヶ月の月日が流れ、聖流は貴都李の訃報を学校で知ることになる。
読んで下さり有り難うございます。
このシーンは凄くお気に入りシーンです。
聖流編はもう十何年温めていたストーリーで、このシーンはずっと書きたかったシーンでした。
その時はマンガで心に描いてましたが。
小説になって、貴都李の章を書き始めた時、このシーン書くのを楽しみに書いてました。
しかし心理描写って難しいですね。
私の作品の特徴に心理描写が無いと言うのがありますが、そのシーンを効果的に映像で想い浮かべて貰いたいと言うエゴもあるのですが、心理描写めちゃくそ苦手と言うのも理由にあります。
どーも心理描写いれると私の作品、めちゃダサい。笑
力量が乏しいってことですね。笑




