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ブンブンこくこく

 読んで戴きましたら、倖せです。

 学校祭の日、貴都李(きとり)を見掛けて聖流(さとる)は声を掛けた。


「貴都李! 」


 貴都李は驚いておどおどしながら聖流に近付いて来た。


「これからオレたちが演奏するから、必ず見に来い」


「わ、解ったよ」


 貴都李は虐められている自分に学校でも変わらず話し掛ける聖流に驚き、顔をひきつらせ笑った。


「じゃあな」


 聖流が手を振ると貴都李は遠慮がちに手を小さく振って返した。


 聖流たちの演奏が始まると、貴都李は相変わらず体育館の開放された出入口の柱に寄り添い聖流を見詰めていた。


 ステージに立つ聖流を貴都李は別世界の存在の様に感じていた。


 だが別世界の聖流はそんな貴都李の想いなど知ってか知らずか、お構い無しに目が合っただけで笑い掛けて来る。


 貴都李は言い知れない倖福感に包まれた。

  



 ある朝、聖流が教室の自分の席に座ると津積が机に腰掛け、話し掛けて来た。


「おはよ

 最近B組の常磐とよく話してるけど」


 聖流は教材を机にしまいながら言った。


「それがどうかした? 」


「聖流、前は嫌ってたよな

 どういう心境の変化だ? 」


「あれはあれで付き合ってみると面白い奴だよ

 弄りがいがある」


「相変わらずSだねー」


 津積は教室に入って来た梅沢に気付いて、そっちの方に行った。





 教室の移動中に、廊下で貴都李を見掛け、聖流は声を掛けた。


「貴都李! 」


 貴都李は周りを気にしながら寄って来た。


「学校ではあまりボクに話し掛けない方がいいんじゃない? 」


「下らないな

 それより今週の日曜日、聖詞の学芸会が在るんだ

 一緒に行かないか? 」


「え? 」


 個人的な誘いを憧れの聖流から受けた事に驚いた。


「行くよな」


 聖流は軽くすごんだ。


 貴都李は戸惑った。


「え?

 あ......

 うん」


 断るはずも無かった。


 貴都李はこくこく頷いた。


 聖流が納得して去ると、貴都李は緊張をほどいて肩を下げた。


 聖流が急に思い付いて振り返ると貴都李は慌てて背筋を伸ばした。


「今日、何か用事あるか? 」


 貴都李は髪が乱れるほど顔をブンブン横に振った。


「しゃあ今日、家に来い

 一緒に帰るからな

 教室で待ってろ」


 貴都李は首をこくこく縦に振った。



 放課後、貴都李は教室で聖流が来るのを待った。


「貴都李、帰るよ」


 聖流は言葉通り貴都李を迎えに来た。


 貴都李は慌てて立ち上がり、机の角に強か太腿を打った。


「.....ってぇ.........」


 貴都李がびっこを引いて近付いて来ると、聖流は呆れて言った。


「ホント、ぼおっとした奴だなあ」


 廊下を歩いていると、以前河川敷で貴都李を虐めていた奴らとすれ違った。


 連中は貴都李に気付いていたが、聖流を見ると知らん顔で通り過ぎて行った。


「最近、聖流君のお蔭で虐められないんだ」


 貴都李は少し背筋を伸ばした。


「だからあ、馴れ馴れしく名前で呼ぶなって

 オレはオレの所有物に手をだされたら許さない

 それだけだ」


「嬉しいよ、聖流君の所有物になれて」


「うわっ!

 すっごいドM発言!

 って言うかあ、ドM通り越して変態の域に達してるう! 」


 聖流はふざけて女の子のように指を胸の前で組んだ。


 貴都李は思い切り引いた。


 それから聖流が気を悪くしないように慌てて言った。


「それ、聖流君のキャラに合わないと思う」


「だろうな」


 聖流はふざけた事を後悔した。


 どっちもどっちである。



 聖流の家に着くと聖詞がバタバタと玄関に駆けて来た。


「やったあ!

 貴都李さんだあ! 」


「何故か聖詞は貴都李がお気に入りらしい」


 聖流は貴都李を見て笑った。


「そう....なんだ........」


 貴都李は嬉しそうに微笑んだ。


「だって、貴都李さんはボクを邪魔扱いしないもん」


「誰が聖詞を邪魔扱いしたんだ? 」


「言わないよ

 言ったら聖流、その人にサドになるから」


「サドなんて言葉、何処から憶えた! 」


 聖流は目をむいた。


「言わなーい」


 聖詞は貴都李の手を引いて逃げた。


 貴都李は引かれるまま家に上がってリビングへと連れ込まれた。


「ったく......」


 聖流はため息をついて笑いながら靴を脱いだ。


 聖詞は、聖流と貴都李をソファーの前に座らせるとソファーの上に立って白雪姫を熱演して見せた。


 台詞はたった二つだったが、聖流はスタンディングオベイションで褒めちぎり、貴都李は聖流のブラコンぶりに半ば呆れて、それに倣った。


 聖詞はソファーから飛び降りると聖流に抱き付いた。


「聖流君は本当に重度のブラコンだね」


「聖詞は我が家の天使だからな

 なあ、聖詞」


 聖流は聖詞を抱き上げると自分を軸にくるくる回った。


 聖詞の身体は遠心力で浮き上がって回転し、聖詞は声を上げて笑った。


「聖詞、また大きくなったんじゃないか?

 重い! 」


 聖流はぜーぜー言って聖詞を降ろし、よろけながらソファーに座り込んだ。


 学校では決して見せない聖流の一面を自分だけが知っている事に、貴都李は倖せな気持ちになった。









 読んで戴き有り難うございます。


 めちゃくちゃ酷いスランプになり、全く作品書けません。

 仕方ないので、開き直って娘と映画観ました。

「インターステラ」と言うSF映画を観たのですが、めちゃくちゃ脚本が面白い映画でした。

 いりくんだストーリーの映画は大好きです。

 

 先日は「猿の惑星」のリメイク版観ました。

 昔の地味で何やってるか訳解んない、植○等が声やってたのと違って、凄く面白かったです。

 主人公のシーザーと言う猿をアンディ・サーキスと言う俳優さんが演じているのですが、惚れそうなほど男前なお猿さんです。


 二つ共、本当に駆け引き無しで面白い良質な映画でした。

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