【第60話】水神への架け橋と英雄たちの連撃
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「あいつを、ぶっ倒そう!」
ユーリの号令のもと、伝説の超巨大水龍『千眼の水神』を再び封印するための最終作戦が始まります!
魔力を持たず、空も飛べない一人の少年を、天空の頂へ送り届けるために――。
仲間たち全員が技を繋ぎ、命を懸けて道を切り拓く「怒濤の空中突破リレー」!
そして、壇上のアレンとカルトの職人魂が炸裂します!
息をもつかせぬ疾走感でお届けする第60話をお楽しみください!
「――あいつを、ぶっ倒そう!」
ユーリの放った迷いのない一言に、広場に集った仲間たちの視線が一斉に集まった。
だが、見上げる先には、天を覆わんばかりの白銀の巨躯をうねらせ、数千の眼球を妖しく瞬かせる『千眼の水神』。
噴き上がる大龍脈の水圧が、石畳を容赦なく削り取っていく。
「ぶっ倒すって、ユーリ……! さっき全員で最大火力を叩き込んでも、傷一つ付けられなかったのよ!? じゃ、どうするのさ!」
キャシーが尻尾をピンと立たせ、焦燥を滲ませて問いかけた。
その問いに、大賢者メリッサが顎に手を当てた。
「物理的・魔導的な破壊で消滅させるのは不可能ね。大龍脈から無限に魔力を吸い上げている以上、再び地下ダムの底へ【封印】するしかないわ。……でも、今回その再封印に必要な古代の触媒――『星脈の封魔晶核』がないから、どうしようかしらね」
「あるわよ、ここに。『星脈の封魔晶核』なら」
涼やかな声と共に、リターニアが漆黒のドレスの懐から、青白く澄んだ幾何学状の結晶を取り出してみせた。
魔族の宝物庫から持ち出してきた本物の古代触媒。それを見たメリッサが目を丸くする。
「……用意周到ね、魔族の幹部さん」
「ええ。でも……あんな伝説の魔導生命体に、本当にこれが効くのかしら?」
リターニアの懸念に、メリッサは不敵な笑みを口元に浮かべた。
「それは簡単よ。ユーリが言ったじゃない――『ぶっ倒す』って。用は魔力を吸いあげてから力に変えるまでのタイムラグがあるの。その弱っている隙に封印すればいいってわけ」
「どこが簡単なんだよ!」
ルシアンがすかさずツッコミを入れると、メリッサはパチンと可愛らしくウインクしてみせた。
「言うだけならね」
「メリッサ様、冗談を言っている場合ではありませんわ!」
エリアナが声を尖らせるが、ユーリはすでに【眼】で捉えた真実を、仲間たちへ向けて告げていた。
「水神が暴れているのは、アルマの持つ魔道具のせいだ。……あいつの頭頂部、白銀の巨鱗の交差する急所に、アルマの魔道具と直結している『紫色の不純物』が突き刺さっている。あれを引き剥がせば、操られている水神は正気を取り戻し、リタの持っている触媒で再び地下へ封印できる!」
ルシアンが大剣を握り直し、シエラが鋭く刀身を研ぎ澄ます。
「なるほどな! 要するに、ユーリをあのバカでかいトカゲの頭の上まで届ければ勝ちってわけだ!」
「そういうことよ。……全員、ユーリを天へ押し上げるわよ!」
メリッサの号令のもと、反撃の火蓋が切って落とされた。
「エリアナ、道を創りなさい!」
「《氷華の天昇階》――ッ!!」
メリッサの指示に応じ、エリアナが白銀の魔導剣を天へと掲げた。
剣先から放たれた極大の冷気が、広場を満たす濁流の水を瞬時に凍結させ、天空を舞うリバイアサンの頭部へ向けて、螺旋を描く巨大な氷の階段を一瞬にして組み上げた。
「ユーリ、しっかり掴まってて!」
キャシーがユーリをその胸に抱きかかえると、獣人の驚異的な跳躍力で、氷の階段の第一段を力強く踏み抜いた。
シュバッ! と風を切り、垂直に近い氷の螺旋を駆け上がっていく。
眼下では、濁流に呑まれかけた王都の街並みが急速に小さくなっていく。
「小癪な虫ケラどもがぁッ!!」
瓦礫の上に立つアルマが、残された右目を血走らせて制御魔道具を振り上げた。
リバイアサンが怒号を上げ、天空から無数の高圧水弾が、雨霰の如くキャシーとユーリへ降り注ぐ!
「阻止せよ! あの小僧を叩き落とせぇぇッ!」
「通さんと言っている!」
シエラが氷の階段の手すりを蹴って天へ舞い上がった。
抜刀の銀光が円を描き、降り注ぐ高圧水弾を寸分の狂いもなく切り刻んでいく。
「居合――《閃影・万天断ち》ッ!」
さらに、その横からルシアンが聖大剣クラドを旋回させ、凄まじい竜巻を発生させた。
「邪魔すんじゃねえ! 《嵐神の風壁》――ッ!!」
巻き起こった暴風が、両脇から迫る水圧の奔流を左右へと強引に吹き飛ばす。
二人の英雄が命がけで切り拓いた真空の回廊を、キャシーがさらに速度を上げて突破していった。
だが、水神の巨躯はあまりにも規格外だった。
前進を阻まれたリバイアサンが、天空でその巨大な尾を大きくしならせた。山一つを叩き潰すほどの質量が、氷の階段ごとユーリたちを圧殺せんと振り下ろされる!
「させないわよ!」
「私の前で、図に乗るんじゃないわ」
壇上に残るメリッサとリターニアが、同時に両手を掲げた。
大賢者の黄金に輝く古代障壁と、魔族幹部の展開する漆黒の『虚無の遮断領域』。
光と闇の極大防壁が二重に重なり合い、頭上から振り下ろされた水神の巨尾を、真っ向から受け止めて押し返した!
ギギギギギッ……ドガァァァンッ!!
防壁が軋みを上げ、火花が散る。
その直後、水神の体表を巡る大龍脈のマナが激しく乱れ、白銀の鱗が鋼鉄以上の硬度へと硬化を始めた。
「くっ……皮膚が硬化して、足場に近寄れない……!」
キャシーが叫んだ、その時だった。
「アレン先輩! あの魔導盤の共振周波数を、逆位相へ反転させてください!」
ステージの上、カルトが叫びながら並列回路の残骸を激しくいじり回していた。
アレンは包帯の巻かれた右手をコンソールへ叩きつけ、職人の勘で即座に周波数を合わせ込む。
「同調回路、逆転励起……ッ!」
二人の職人が放った強力な「マナ干渉波」が、水神の皮膚へと直撃した。
硬化しかけていた白銀の巨鱗が一瞬にして弛緩し、表面を覆う水膜が霧となって吹き飛ぶ。
「よし……道は完全に開いたわよ!」
メリッサの鋭い声が響き渡った。
氷の階段の最上段。
これ以上の足場が存在しない、天空の限界地点へとキャシーが到達した。
目の前には、うねるリバイアサンの巨大な頭部。
吹き荒れる暴風と水煙の中、キャシーはユーリを抱き締め直すと、琥珀色の瞳をまっすぐにユーリへ向けた。
「ユーリ! 行ってぇぇぇーーーーッ!!」
キャシーが全身のバネをしならせ、ユーリの身体を水神の頭頂部へ向けて力一杯に放り投げた。
浮遊感。
王都ヴィスタニアの全景が遥か眼下に広がり、秋の風が全身を突き抜けていく。
ドサッ、と激しい衝撃と共に、ユーリはリバイアサンの頭頂部――白銀の巨鱗の交差する急所の上へと着地した。
「グアァァァァァッ……!!」
侵入者を振り落とさんと、巨頭が狂乱のまま激しく揺れ動く。
ユーリは巨鱗の隙間に指を突き立て、必死に身体を固定した。
そして、【眼】を開放する。
目の前にあったのは――巨大な白銀の頭蓋に、深く、楔のように打ち込まれた、ドス黒く脈打つ「紫色の不純物の操作核」。
アルマの掲げる魔道具から伸びる死の同調線が、そこへ絶え間なく毒を注ぎ込んでいた。
「行かせぬ……! 行かせぬぞ、がらくたぁぁぁッ!!」
遥か地上から、アルマの狂乱の絶叫が木霊する。
だが、ユーリの心には、恐れも迷いも微塵も存在しなかった。
仲間たちが繋いでくれた道。アレンとカルトが守ってくれた希望。
そして、誰ひとり見過ごさないという、魂の誓い。
ユーリはむき出しの両手を高く掲げ、禍々しく脈打つ不純物の核へと、迷わず飛び込んだ。
「この街を……もう誰ひとり、傷つけさせはしないッ!!」
第60話をお読みいただき、ありがとうございました!
仲間たちの絆が紡いだ、圧巻の空中突破リレー……!
エリアナの氷の階段、キャシーの驚異的な疾走、シエラとルシアンの神速の露払い、メリッサとリタ姐さんの極大障壁!
さらに、壇上でアレンさんとカルトが呼吸を合わせて放ったマナ干渉波……かつての師弟が心を通わせる瞬間に胸が熱くなりました!
そして、キャシーの魂のラストスローによって、ついに水神の頭頂部へと到達したユーリ!
眼前に迫る、悪意の元凶――ドス黒く脈打つ不純物の操作核!
「この街を……誰ひとり、傷つけさせはしないッ!!」
次回、ユーリの【手】による水神の完全デバッグ、そして逃亡を図る黒幕アルマへの「痛快すぎる完全包囲劇」が幕を開けます!
第3部もいよいよ大詰め! 絶対にお見逃しなく!
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