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【第58話】風穿つ真空の刃と水神覚醒

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!


壇上に響き渡った、アレンの一発の銃声――。

硝煙が立ち込める中、白日の下に晒された「真実」とは!?


職人の矜持、ルシアンの天空を裂く新奥義、そして大衆の目を覚まさせるキャシーの魂の叫び!

溜まりに溜まった鬱屈を吹き飛ばす、怒濤の大逆転劇が始まります!


……しかし、大地の底から、さらなる「本当の絶望」が目を覚まし――!?


それでは、最高潮の熱量でお届けする第58話をお楽しみください!

――ドォォォォォンッ!!!!


耳を劈く轟音と目も眩む閃光が、特設ステージ『誓約の創世壇』の壇上を白一色に染め上げた。

 硝煙が風に煽られて吹き抜け、視界を塞いでいた煙のカーテンがゆっくりと薄れていく。


「アレンさん……っ!」


石畳の上で血を吐き、身体中を痛打されながら倒れ伏していたユーリは、必死に顔を上げた。


大衆の歓声も、怒号も、その瞬間だけは静寂に呑み込まれていた。

 群衆の誰もが、爆弾魔の眉間が吹き飛んだ凄惨な光景を予期し、息を殺していたのだ。


だが――煙の晴れた壇上に立っていたカルトの身体には、傷一つついていなかった。

 カルトは両手を広げた姿勢のまま、目を見開いて呆然と立ち尽くしている。


その数メートル手前。

 アレンの構えた黒鉄の魔力銃の銃口は――カルトの額ではなく、遥か天高く、秋の青空を真っ直ぐに仰ぎ見ていた。


「な……空に撃った……!?」


「あいつ、何をやってやがるんだ!」


大衆が唖然としてざわめき始める中、ユーリの【眼】だけは、その銃声が放った『真実の現象』を克明に捉えていた。


空を裂いた銃声――空気を媒体にして放射状に広がったのは、極めて特殊な高周波を帯びた「逆位相の魔力波長」。

 その目に見えない波紋が、壇上の中央に置かれていた並列爆弾の金属ケースへと直撃したのだ。


パキパキパキッ! ジュウゥゥ……ッ!!


乾いた破裂音と共に、爆弾の内部で不気味なエメラルドグリーンに脈動していたバイオパーツの主基盤から、青白い火花が一斉に噴き上がった。

 かつて旧工場の資料室で、アレン使用した『逆位相の自滅回路』。

 この銃が放つ固有の周波数を浴びた瞬間に、すべての並列回路が自律的にショートして融解する、職人の「直す手」による遠隔解除トリガー。


赤黒く這い回っていた並列回路の光が次々と消灯し、爆弾は一切の爆縮を起こすことなく、ただの冷たい鉄塊へと成り果てて完全停止した。


「……な……なんで……」


爆弾が沈黙したのを見下ろし、カルトの全身がガチガチと激しく震え始めた。

 自分がアレンに撃たれて死ぬことで生体キーを消滅させ、アレンとリリィを救うという――最後の悲壮な自己犠牲が完全に破綻したことを悟ったカルトは、壇上で頭を抱え、狂乱の叫びを上げた。


「なんでだぁーっ! だめだ、撃たなきゃ……僕を殺さなきゃ、あんたもリリィちゃんも、アルマに……! なんでだよ……なんで撃たないんだよアレン先輩!!」


悪役の仮面が剥がれ落ち、カルトの喉から魂を引き裂くような慟哭が迸る。


「僕を殺せば……僕さえ消えれば、生体キーのデータが消えて全部終わったのに! 僕を憎んで撃ち殺せば、あんたたちは助かったのに! なんで……なんで最後までそんなに……優しいんだよぉぉッ!!」


カルトは壇上に膝をつき、両手で顔を覆って号泣した。

その時、舞台下から飛び込んできたエリアナが、血塗れで倒れていたユーリの身体を優しく抱え上げ、軽やかな跳躍でステージの上へと引き上げた。


「ユーリ様! しっかりなさいませ!」


「エリアナ……ありがとう」


ユーリは痛む身体を支えられながら、天を仰いで銃を下ろしたアレンを見上げた。

 満身創痍の口元をわずかに歪め、血の混じった笑みを浮かべる。


「……カッコいいよ、アレンさん。あんたは、最高だ」


アレンは震える手で銃を握りしめたまま、ユーリへ向けて、静かに、温かな涙をこぼした。


だが、安堵に浸る時間は一瞬すら残されていなかった。

 壇上に上がったユーリの目の奥に、チリチリと焼けるような激痛が走る。


【眼】を開放し、アレンの放った魔力弾が突き抜けた上空を凝視した。


(……見えた! あそこだ!)


広場を覆う大気の上層。

 目に見えない紫色の不純物の糸が蜘蛛の巣のように張り巡らされ、そこから市民たちの脳へと悪意を増幅させるマナの毒が送り込まれていた。

 広場全体の大衆を狂乱させ、『殺せ』と叫ばせていた元凶――『精神支配アンテナ(不純物の結節点)』が、アレンの銃撃の余波によって激しく明滅し、露わになっていたのだ。


ユーリは壇上から、地上で魔獣を食い止めていたルシアンへ向けて叫んだ。


「ルシアン! アレンさんの真上だ! 上空の結節点へ、思いっきりとっておきを叩き込めぇぇぇッ!!」


「任せろっ!」


ルシアンは一切の躊躇なく、大剣クラドを両手に握り直すと、大地を粉砕するほどの踏み込みで天高く跳躍した。

 全身の風と雷のマナが、刀身へと凄まじい密度で収束していく。


「吹き飛びやがれぇぇッ! 《風穿つ真空の刃(ヴォルテックス・エッジ)》――ッ!!」


天空を切り裂く巨大な真空の刃が放たれた。

 紫色の結節点が縦一文字に両断され、空間に張り付いていた不純物のアンテナが、ガラスの割れるような音と共に木っ端微塵に粉砕・消滅する!


ズゥゥンッ! と石畳へ着地したルシアンは、大剣を肩に担ぎ直し、後頭部をポリポリと掻きながら呟いた。


「……意味はわかんないけどな!」


その瞬間、広場を包んでいた黒赤色のマナの濁りがフッと霧散した。

 催眠と精神誘導を解かれた数千の市民たちが、ハッと我に返ったように目を瞬かせる。


「お……俺たちは……一体、何を……?」


「なんで……こんなところで、あんな大声を出して……?」


正気を取り戻した大衆の間に、急速に困惑が広がっていった。


ユーリが壇上でエリアナに支えられている中、舞台下の客席最前列では、キャシーが先ほどまでユーリを組み敷いて殴りつけていた男たちの前に、両手を広げて立ちはだかっていた。


キャシーの琥珀色の瞳から、大粒の涙がボロボロと零れ落ちる。


「ユーリは爆弾魔の仲間じゃないっ! 街を救うために自分を壊して、こんなになるまでみんなを守ろうとしたのよ! あの石塔の時も……ユーリはっ! ユーリはっ!!」


泣き叫ぶキャシーの背後、壇上には血まみれになりながらも立ち上がっているユーリの姿があった。

 先ほどまでユーリを踏みつけ、鉄パイプを振り下ろしていた男をはじめとする全員が、自らの犯した醜悪な過ちを突きつけられ、顔から血の気を失わせてその場にへたり込んだ。

 激しい羞恥と罪悪感に苛まれ、誰一人として顔を上げることができない。


そこへ、大聖堂礼拝所から駆けつけていた大賢者メリッサが静かに歩み寄り、泣きじゃくるキャシーの肩へそっと優しく手を置いた。


だが――その静寂を切り裂くように、空間が激しく軋んだ。


ピキィィィン……ッ!!


ステージの真横、大気が禍々しい紫色の稲妻を散らしながら引き裂かれ、左目を血で染めた魔族幹部・アルマが狂乱の形相で姿を現した。


「バイオパーツを組み込んだのに結界が破壊されないとは……! おのれ、おのれぇぇっ! ごみ共がぁッ!!」


アルマの残された右目が、血走った怒りで煮えたぎっている。


「ならば我が力を最大限注ぎ込んでやるぞーーっ!! この街ごと、貴様ら全員を挽き肉にしてくれるわッ!!」


アルマが両手を天へと掲げ、大龍脈の底から膨大な破壊マナを引きずり出そうとした、その刹那。


「何かする気ね、シエラ! 行くわよ!」


「御意!」


メリッサが杖から極大の光弾を放ち、シエラが神速の居合でアルマの足元へ切り込む!

 二人の猛攻がアルマの詠唱を強引に阻み、広場の壇上で激しい魔力戦の火花が散った。


一方、壇下の広場では、先ほどキャシーの忍術によって上空へ吹き飛ばされていた巨獣『滅界の剛牙獣(タイラント・サーベル)』が、傷だらけの身体を引きずりながら、再びキャシーの前に立ち上がっていた。


キャシーは涙を拭い、呆れたように長いため息をついた。


「あんた……まだやるの? しつこいわね……」


タイラント・サーベルが紅蓮の牙を剥き出しにし、キャシーへ向けて最後の一撃を振り下ろそうとした――その、瞬間だった。


ズズズズズズ……ッ!!

 ドガァァァァァンッ!!!!


先ほどまでの地鳴りとは比較にならない、王都ヴィスタニアの大地そのものが真っ二つに裂けるような超巨大な轟音が、広場全体を突き破った。


特設ステージの足元、大理石の床が一瞬にして紙屑のように吹き飛ぶ。

 地下ダムの底から噴き上がったのは、天を突くほどの巨大な濁流の水柱。


そして――。

壇上のユーリの横へ駆け込んできたメリッサが、頭を抱えながら気まずそうに叫んだ。


「ゴメン、しくじったわ」


「え? なにが?」


「えーーっとね、非常に言いにくいんだけど……」


メリッサの言葉の直後。

 噴き上がった水柱の奥から、白銀の巨鱗と無数の眼を持つ、山のような超巨大水龍の頭部が姿を現した。


――『千眼の水神(リバイアサン)』。


二百年の封印を破り、地上へ解き放たれた伝説の魔導生命体。

 リバイアサンは出現するや否や、巨大な顎をガバッと開くと、キャシーの目の前で威嚇していたタイラント・サーベルの巨躯を――まるで小魚を呑み込むかのように、丸ごと一瞬で噛み砕き、一呑みに平らげてしまった。


「へぇ? ……きゃあーーーーーっ、なにあれぇぇぇっ!?」


あまりのスケールに、キャシーが目を剥いて絶叫する。

天を覆い尽くす水神の巨躯。

 広場全体へと押し寄せる、街を呑み込まんとする圧倒的な水圧の波。


ユーリは、天を仰ぎながら、隣のメリッサへ向けて、乾いた声で呟いた。


「……いや、いい。わかったから」


第58話をお読みいただき、ありがとうございました!


「……カッコいいよ、アレンさん。あんたは、最高だよ」

銃口を空へと向け、誰も殺さずに職人の仕掛けた『逆位相回路』で爆弾を完全に沈黙させたアレンさん……!

そして、自らを犠牲にしてアレンさんとリリィちゃんを救おうとしていたカルトの「なんで最後までそんなに優しいんだよぉぉッ!」という慟哭……ふたりの絆と優しさに涙が止まりません……!


さらに、ユーリの【眼】の指示に応えて精神支配アンテナを一刀両断したルシアンの《風穿つ真空の刃》!(「意味はわかんないけどな!」が最高にルシアンらしくて頼もしすぎます笑)

キャシーの涙の訴えによって、ようやく正気を取り戻した大衆……怒濤のスカッと展開でした!


……が、ホッとしたのも束の間。

大地を割って出現した、山のような超巨大水龍『千眼の水神(リバイアサン)』!!

あの手強かったタイラント・サーベルを一瞬で丸呑みにするスケール感、ヤバすぎます……!

そしてメリッサの「ゴメン、しくじったわ」に対するユーリの「……いや、いい。わかったから」(笑)。


街全体が水没の危機に瀕する中、この規格外の伝説の魔導生命体をどうやって止めるのか!?

次回、大賢者メリッサの「しくじりの真相」と、ユーリの知略が再び光ります!


――――――――――――――――――――

【読者の皆様へのお願い】

「アレンさんが格好良すぎて震えた!」

「ルシアンの必殺技が爽快だった!」

「水神リバイアサンの絶望感が凄すぎて早く続きが読みたい!」

と思っていただけましたら、


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また、ブックマークへの追加や**いいね(♡)**もポチッと押していただけると、ランキング上位へ駆け上がる大きな後押しになります!

アレンさんへの称賛や、ラストの展開へのご感想など、熱いコメントをぜひお寄せください!


次回は明日18時40分頃更新します。

もし面白ければブクマ・★評価で応援お願いします!

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