【第36話】新しき絆と差し込む光
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!
激闘の夜が明け、魔導商都グランデールに眩い朝陽が差し込みます。
工房での死闘を終え、平穏を取り戻した『酔っ払い亭』でユーリが作った朝食。
しかし、食卓を囲むメンバーを見て大賢者メリッサが絶句してしまいます……!
なぜか帝都から着替えを持って戻ってきたシエラ、そして優雅にお茶を飲むリターニア!?
シエラの忠誠の誓いから始まる、ヒロインたちの怒涛の「正妻争奪戦」と、街の人々との温かな交流。
サスペンスの緊張感から一転、賑やかで温かい第36話、どうぞお楽しみください!
激動の夜が明け、魔導商都グランデールの街並みには眩い朝陽が静かに降り注いでいた。
昨夜の凄惨な戦いが嘘のように、『酔っ払い亭』の木造りの店内には、香ばしい焼きたてパンの匂いと、野菜と肉をじっくり煮込んだ具だくさんスープの湯気が満ちている。
ユーリが手際よく調理を終え、大皿とスープボウルをテーブルへと並べ終えたところへ、パジャマ姿のメリッサが目をこすりながら降りてきた。
メリッサは席に着くなりスプーンを手に取り、美味しそうにスープを口に運び始めたが——ふと左右を見やり、ジトッとした半目になって動きを止めた。
「……ところで、何であんた達がいるのよ?」
メリッサの呆れ果てた問いかけに対し、右隣に座るキャシーが満面の笑顔でパンを頬張りながら答える。
「何でって、朝食は一日の基本! いっぱい食べないと元気が出ないからね!」
「ちょっと、そのジャム早く渡してくださらない? 私さっきから待っているんですよ」
左隣に陣取ったエリアナが、私服姿で不満げに手を伸ばす。
「ユーリ、このスープお替りっ!」
正面でルシアンが元気よく空になった皿を差し出した。
「そうか、では私ももらえるか」
その隣で、身なりを整えたシエラが真面目な顔で皿を差し出す。
「なぁ、私もジャムを待っているんだが」
さらにその隣で、変装を解いた魔族の幹部リターニアが、優雅に紅茶をすすりながらパンをちぎっていた。
「って、ちょっと待て、突っ込みどころが多すぎる! なんでみんなここにいるのよ!? シエラ、あなた、帝都に帰ったんじゃないのっ?」
メリッサがスプーンを放り出してテーブルを叩いた。
シエラは涼やかな顔でスープを受け取りながら、至極当然のように頷く。
「帰りましたよ。着替えを取って戻ってきた次第です」
「戻ってきたって、魔族がこの街にいると云々とか言っていたではないか!」
「とりあえずは大丈夫です。人への変身能力がありますし」
リターニアが涼しい顔で微笑みながら口を挟んだ。
「って、あなたも何でここにいるのよ! 一緒に朝食をとってるし!」
「おはよう、メリッサ。今回は本当にユーリに助けられたわ。今日はシエラをお願いしますって、改めてご挨拶に来たの」
「お願いしますって、そんなにフランクな間柄ではないと思いますけど!」
「まあ、そう言わないで。彼女、例のマナ関係で組織に目をつけられているの」
「ぬっ……そういうことか。い、いやでも……」
メリッサが言葉を詰まらせると、リターニアは残りの紅茶を一気に飲み干し、優雅にナプキンで口元を拭って立ち上がった。
「そういう事だから。あとはよろしくね」
「お、おい待て! 話はまだ——」
制止の声を背中に受けながら、リターニアはユーリに意味深なウインクをひとつ残し、軽やかな足取りでさっさと店を出て行ってしまった。
嵐のような退場劇に店内が呆気にとられる中、残されたシエラが居住まいを正し、静かに立ち上がった。
シエラはユーリの前へと歩み寄ると、床に片膝をつき、腰に差した黒刀の柄に手を当てて深々と頭を垂れた。
「ユーリ殿。魔剣の呪縛から正気を引き剥がされ、命を救われたこと……一生涯の恩と刻む。このシエラ・ヴァルヴェット、今後は貴殿の盾となり、忠実なる護衛としてこの王都で共に歩むことを誓おう」
凛とした高潔な声が響き渡った、まさにその瞬間であった。
「ちょっと待ったー!」
エリアナが椅子を蹴立てるように立ち上がり、猛然と割り込んできた。
「ユーリ様への誓いは結構ですが、いきなり私生活へまで踏み込もうだなんて万死に値しますわ! ユーリ様の公式な伴侶(予定)はこの私! ほら、こちらに血判済みの誓約書と式場の予約票が……っ!」
「いい加減にしなさい!」
キャシーが割って入り、エリアナの突き出した書類を叩き落とす。
「ユーリを一番近くで守り抜いた助手兼ボディーガードは私なの!」
二人が激しく火花を散らす中、膝をついたままのシエラは不思議そうに首を傾げた。
「ふむ……ユーリ殿の側に仕えるには『妻』や『ボディーガード』という役職が必要なのか? ならば私もその手続きをとれば良いのだな?」
「「そういう問題じゃありませんの/じゃないわよ!!」」
大真面目な天然ボケをかますシエラに対し、エリアナとキャシーの息の合った絶叫ツッコミが炸裂する。
「ハハハ! 朝から賑やかで良いではないか!」
豪快に笑い飛ばすルシアンを横目に、ユーリは静かに額を押さえて溜息をつくのだった。
騒がしい朝食が一段落した頃、『酔っ払い亭』の重厚な木製扉が静かに開いた。
訪れたのは、怪我から回復した大剣豪ミラード、魔道具技師ヴァルター老、そして魔道具屋の店主アレンであった。
「ユーリ殿、メリッサ様! 工房を救っていただき、感謝の言葉もないわい!」
ヴァルター老が頭を下げ、丁寧に包まれた高級な魔導素材の数々を差し出す。
「自分を闇討ちした暗殺部隊を一人残らず叩き潰してくれたこと、この大剣豪ミラード、生涯の面目躍如と心より感謝する」
ミラードもまた、武人としての深い敬意を込めてユーリの手を固く握りしめた。
「ユーリ、キャシーちゃん、店を守ってくれて本当にありがとう。今度、新しいパーツが入ったら一番に声をかけるよ」
アレンの温かな言葉に、店主のバイマンもカウンターの奥で満足そうに髭を撫でている。
街の住人たちから寄せられる純粋な感謝と笑顔。
ルシアンが誇らしげにユーリの肩を力強く叩いた。
「見たかユーリ! お前さんの【手】が、この魔導商都グランデールの平穏を守り抜いたのだ! 俺もバディとして鼻が高いぞ!」
「ルシアンやみんなが体を張ってくれたおかげだ」
ユーリが静かに微笑むと、店内は温かな歓声と乾杯の音に包まれた。
賑やかな感謝の宴が続く中、ユーリは喧騒を抜け、静かな二階のテラスへと足を進めた。
朝の清々しい風が吹き抜ける中、ポケットの中に忍ばせていた通信魔道具『マギストーン』が、仄かに温かい紅色の光を帯びて微細に震え出した。
マナを軽く通すと、耳元からリタの艶やかで、どこか切なさを秘めた声が密やかに響く。
『ふふ、賑やかそうね、ユーリ。……シエラも無事に馴染んでいるようで安心したわ』
「ああ、みんな元気にやっているよ。……リタ、また来れるの?」
ユーリの問いかけに、マギストーンの向こうでリタがふっと息を漏らした。
『そうね……帝都の本国が、今回の『漆黒の影』壊滅を受けて本格的に動き出しそうなの。……またすぐに、あなたの力が必要になるかもしれないわ』
「いつでも連絡してくれ。頼れる協力者さん」
『ふふ、嬉しいわ。……また会いましょうね、私の大切な人』
通信が静かに途絶え、マギストーンの赤い光が穏やかに収束していった。
ユーリは石畳の手すりに手をかけ、どこまでも青く澄み渡る魔導商都グランデールの空を見上げた。
あの日の後悔は、もう二度と繰り返さない。
守るべき仲間たちの笑顔、取り戻した街の平穏、そして胸の奥に灯る不退転の誓い。
世界の理不尽がどれほど巨大な影となって覆い被さろうと、この【手】でひとつ残らず剥ぎ取ってみせる。
決意を新たにしたユーリの瞳に、昇りゆく太陽の光が力強く差し込んでいた。
第36話をお読みいただき、ありがとうございました!
朝食の席で繰り広げられたメリッサの怒涛のツッコミ祭り!
「着替えを取って戻ってきた」と平然と言い放つシエラに、「シエラをお願いね」と挨拶だけして嵐のように去っていくリタ……自由すぎる魔族たちに頭を抱えるメリッサが最高でしたね(笑)。
そして、シエラの「ユーリの盾となる」誓いから始まったヒロインたちの争奪戦!
血判状と式場予約をチラつかせるエリアナに、正助手を主張するキャシー、そして「妻も役職なのか? ならば私も手続きを」と大真面目に天然ボケをかますシエラ……!
クールビューティーなシエラの天然っぷりが加わり、ユーリの周囲はますます大混戦の予感です!
大剣豪ミラードやヴァルター老、アレンさんたち街の人々からの温かい感謝、そしてテラスでのリタとの極秘通信。
帝都本国(元老院と皇帝)の不穏な動きを予感させつつも、王都の平穏を守り抜いた達成感が胸に沁みます。
次回は、年に一度の街の行事「感謝祭」を描く特別エピソード!
ユーリの行動が気になって仕方がない乙女たち(キャシー、エリアナ、シエラ)が、机の下に潜伏して大追跡を開始します!?
そしてユーリが手渡す、『青い花』とは——?
【読者の皆様へのお願い】
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「朝食のツッコミに笑った!」
「シエラの天然ボケが可愛い!」
「エリアナの暴走が最高!」
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【3連休特別企画! 1日5話・怒涛の一挙更新中!】
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いつも本作をお読みいただき、本当にありがとうございます!
10月10日(土)〜 10月12日(月・祝)の3連休は、
感謝を込めて【毎日5話ずつ(3日間で計15話)】の超・連続更新でお届けします!
■ 連休中の更新時間(1日5回)
【朝 07:40頃】/【昼前 11:40頃】/【午後 15:40頃】/【夕方 18:40頃】/【夜 21:40頃】
連休のお供に、ユーリたちの熱い戦いと逆転劇をたっぷりお楽しみください!
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次回もお楽しみに!




