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【第34話】神速の斬撃と原初の剥離

いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!


偽物の増幅装置により、右腕が暴走した敵頭領ガイゼル。

さらに自らの部下たちを生きたまま捕食し、巨大な異形の腕へと変貌を遂げてしまいます。


触れることすら拒絶する超高濃度マナの暴風。

ユーリとシエラが手を取り合い、不退転の覚悟で挑む最終決戦!


シエラの神速抜刀、リタから託された魔石の覚醒、そして絶体絶命の窮地に舞い降りる「あの人物」とは——!?


怒涛の展開が押し寄せる第34話、どうぞお楽しみください!

 異形化した自身の右腕を強引に振り回し、ガイゼルは濁った眼光で広場を見回した。


 その腕はすでに通常の人間のそれではなく、激しいマナの起風を周囲に撒き散らしている。

 だが、一度ユーリの【眼】とシエラの刃によって見切られた攻撃は、以前ほどの圧倒的な絶望感を伴っていなかった。


「チッ……右腕だけじゃ、やはり贄としては不十分か」


 ガイゼルは低く吐き捨てると、狂気と獰猛さに満ちた笑みを口元に浮かべた。


「おい、お前たち。帝都への忠誠を示す時だぞ」


 背後に控えていた『漆黒の影』の残党刺客たちが、その言葉に一瞬だけ身体を強張らせた。


「ガ、ガイゼル様……? 何を——」


 言葉が終わるよりも早く、ガイゼルの異形化した右腕から、黒紫色のマナで編まれたおぞましい触手のごとき肉線が一斉に噴出した。


「ひっ……!? や、やめっ、ガイゼル様ぁぁぁっ!?」


「助け——ギャァァァァァァッ!?」


 触手は容赦なく逃げ惑う刺客たちの胸や喉を貫き、哀れな悲鳴をあげる残党たちをまとめて宙へと吊り上げた。


 メリメリ、バキバキと、人間の肉体と骨が強引に潰される生々しく惨絶な音が夜の広場に響き渡る。


「許し、て……お頭……っ! ぎやあああぁぁぁぁっ!」


「熱い! 身体が……溶けっ……ひぁぁぁぁぁっ!」


 刺客たちの絶叫と断末魔の叫びが交錯する中、黒紫色の触手は彼らの肉体と内に秘められたマナを根こそぎ絞り上げ、巨大な右腕へと次々に引きずり込み、ドロドロとした肉塊として強制融合させていった。


 絶命した部下たちの血と肉を糧とし、ガイゼルの右腕はさらに二倍、三倍へと不気味に肥大化していく。

 肌の表面には引きつった何人もの顔が浮かび上がり、狂乱の呻き声をあげている。あまりにも身勝手で、悪虐極まりない凄惨な光景。


「何をするっ! 仲間だったんだろう!」


 激しい怒りを滾らせ、ユーリの鋭い叫びが響いた。


 ガイゼルは喰らい尽くした部下たちの生血を口元から拭うこともせず、面白がるように下卑た高笑いをあげた。


「はっはっは! ああ、そうさ、仲間だ! だからこうやって協力して、てめぇらと戦う準備をしてんだよ!」


「人を喰らうなんて……いよいよ気が狂ったか、ガイゼル!」


 シエラが黒刀を強く握り直し、激しい殺気を放つ。ガイゼルはシエラを蔑むように冷ややかに見下ろした。


「シエラ、てめぇこそ魔族でありながら信じられん言葉だな! 俺たちはこうやって犠牲の上で飛躍的に力を向上できる秘術を持っている。そいつを否定するてめぇら穏健派を見ていると、反吐が出るぜ!」


 肥大化した異形の腕から、先ほどとは比べものにならないほど凶悪で密度の高い暗黒のマナが渦を巻き、周囲の石畳を粉砕していく。


「我が刃に断てぬものなし——奥義(おうぎ)・絶影一閃(ぜつえいいっせん)! 」


 シエラが地を蹴り、神速の踏み込みとともに黒刀を振り抜いた。


 キィィィィィンッ!


 澄み渡った一閃が、ガイゼルの右腕から放たれた超質量のマナの暴風を正面から真っ二つに両断する。激しい乱流が左右へ裂け、ガイゼルの懐へと至る直線状の「道」が一瞬だけ切り開かれた。


「今だ、ユーリ!」


 シエラの悲壮な叫びが飛ぶ。

 ユーリは迷わず前傾姿勢で突き進み、一直線にガイゼルの懐へと飛び込んだ。


 だが——切り裂かれた暴風の狭間から、致死性の猛毒を孕んだ暗黒マナの余波が、まるで生き物のように牙を剥いてユーリへと殺到した。


 常人であれば触れた瞬間に肉体が腐食し、呼吸すら焼き尽くされるほどの圧倒的な死の圧力。

 魔力を持たない生身の身体では、間合いに踏み込むことすら許されず、瞬時に圧殺される絶望の壁。


 その刹那——。

 ポケットの奥深くに収めていた、あの平たい石が激しく鼓動を打った。


 ドクンッ!


 まるで心臓が跳ねたかのような生々しい振動とともに、リタから託された魔石が、夜の闇を塗り潰すほどの鮮烈な紅蓮の輝きを放ち始めた。


『肌身離さず、お守りだと思って持っていて』


 耳元に微かに蘇る、艶やかでどこか切なげなあの声。


 カァァァッ!


 魔石から溢れ出した紅蓮の光は、瞬時にユーリの全身を包み込む神聖な魔導皮膜へと形を変えた。

 襲いかかってきた暗黒マナの猛毒と強烈な衝撃波が、その紅い膜に触れた瞬間、まるで水滴が熱砂に触れたかのようにジュウと音を立てて完全に中和され、霧散していく。

 死の濁流をものともせず、紅蓮の光を纏ったユーリの身体は、凄まじい推進力を得て前へと突き進んだ。


(リタ……! ありがとう……!)


 胸の奥で言葉を噛み締め、ユーリの足先はさらに加速する。

 過去の悔恨も、目の前で蠢く理不尽も、すべてを打ち砕く揺るぎない執念を乗せて、ユーリの【手】がガイゼルの右腕の根元へと届く——!

 そう確信した、まさにその刹那。


「へっ、てめぇらの攻撃なんざぁお見通しなんだよ!」


 ガイゼルが邪悪に口角を吊り上げ、驚異的な反応速度で巨体を斜め後ろへと捻った。

 ユーリの突き出した手は空を切り、勢い余ってシエラとともに前方へ体勢を崩してしまう。完璧なタイミングで回避されたことで、絶大な隙が生まれてしまった。


「さぁ、これで終わりだ、坊主!」


 狂喜に満ちたガイゼルの叫びとともに、数人の部下を食らい尽くして巨大化した暴虐の巨腕が、丸腰の二人へ向けて叩き落とされる——避ける術のない、死の頭上攻撃。


 ドゴォォォォォンッ!


 地響きとともに凄まじい衝撃波が広場を激震させた。

 だが——吹き飛ばされ、石畳の上を何十メートルも激しく転がったのは、ガイゼルの方であった。


「ぐっ、あぁぁっ……! な、なんだ……!?」


 崩れた壁際へ叩きつけられたガイゼルが、血を吐きながら慌てて起き上がり、必死に構え直す。

 立ちこめる土煙の中から、滑らかな足取りで姿を現した影があった。


「終わりはあんたよ、ガイゼル」


 艶やかな、そして冷徹な氷のごとき声。

 そこに立っていたのは、変装を解き、魔族の幹部としての威厳を纏った女性——リターニアであった。


「り、リターニア様……!? どうしてここに……!」


 狼狽し、顔を引きつらせるガイゼルに対し、リターニアは優雅に髪をかき上げながら、蔑むような視線を向けた。


「どうしてもこうしてもないわよ。あなたが『原初の秘術』を持ち出したであろうことまで突き止めていたのよ。そんなもん使われたら後が大変なの。だから私が止めに来たのよ」


「な、何をっ! ワシは正式な命令を受けている! このままでは処罰されるのはあんただ!」


「そうね、そう思ったからこうやって内緒に事を運んでいるのよ」


 リターニアはくすりと可憐に笑ってみせた。だが、その瞳の奥には一切の容赦がない。


 そこでガイゼルは、自分たちの周囲を包み込む空間の異様な遮断感に気づき、ハッと目を見開いた。


「これは……帝都の遠隔監視を完全に遮断するジャミング結界『虚無の遮断領域』……! いつ……あのときか! 坊主の懐で光ったのは、ただの防御結界ではなかったということか!」


「そういうこと。もともと私が直接尻拭いするつもりだったからね」


 リターニアはユーリの方へと一瞬だけ温かな視線を送ると、再びガイゼルへ向き直った。


「しょっ、正気ですか! 組織に楯突いて無事でいられる者は……!」


「何言っているの。だからこうやって面倒な手順を踏んでるんじゃない」


「だ、誰の命令でこんなことを……!」


 追い詰められたガイゼルの金切り声に対し、リターニアは短く、冷ややかに言い放った。


「お話は終わりよ」


第34話をお読みいただき、ありがとうございました!




部下を平然と使い捨て、生きたまま喰らって肥大化するガイゼルの外道っぷり……本当に胸糞悪さ全開の悪党でしたね。


しかし、そんな絶望的な暴風を正面から一刀両断したシエラの『奥義・絶影一閃』! さすがは元筆頭剣士、最高にかっこいい共闘でした!




そして、死の毒気を防ぎユーリを救ったのは、リタが「お守り」として託してくれた魔石の紅蓮の皮膜でした。


さらに、ガイゼルの回避によって訪れた絶体絶命の瞬間——!


吹き飛ばされたガイゼルの前に現れたのは、帝都の遠隔監視を遮断する『虚無の遮断領域』を纏った魔族幹部・リターニア!



「お話は終わりよ」



冷徹なリタの加勢により、反撃の舞台は完璧に整いました!




次回、リタの拘束魔導のもと、ユーリの【手】がガイゼルの原初の不純物を「ビリリィーー……ッ!」と力任せに剥ぎ取ります!


仲間全員の連続攻撃による最高潮の『ざまぁ』粉砕、そして事件の後始末に現れるトータス清掃会社・ハリス店長!?




【読者の皆様へのお願い】


もし少しでも

「シエラの一閃がかっこいい!」

「リタの魔石とお守りの伏線回収が熱い!」

「リタの乱入にスカッとした!」

と思っていただけましたら、画面下部にある【☆☆☆☆☆】を**【★★★★★】**にして応援していただけると、毎日の執筆の大きな力になります!


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【3連休特別企画! 1日5話・怒涛の一挙更新中!】

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いつも本作をお読みいただき、本当にありがとうございます!


10月10日(土)〜 10月12日(月・祝)の3連休は、

感謝を込めて【毎日5話ずつ(3日間で計15話)】の超・連続更新でお届けします!


■ 連休中の更新時間(1日5回)

【朝 07:40頃】/【昼前 11:40頃】/【午後 15:40頃】/【夕方 18:40頃】/【夜 21:40頃】


連休のお供に、ユーリたちの熱い戦いと逆転劇をたっぷりお楽しみください!


「更新を見逃したくない!」「面白い!」と少しでも思っていただけましたら、

ぜひ下の【ブックマークに追加】や、評価の【★★★★★】をタップして応援していただけると、執筆の大きな力になります!

次回もお楽しみに!

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