【第24話】隠された符合と見破られた共通点
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大剣豪ミラードが残した「手練れの部隊に襲われた」という謎の証言。
事件の真相を探るため、ユーリたちは『酔っ払い亭』に集まり作戦会議を開きます。
バラバラに見える事件の裏に隠された、恐るべき共通点とは——?
そして、ユーリをめぐるキャシーとエリアナの「助手争奪戦」や、異世界の戦闘常識にユーリが頭を抱えるコミカルな場面にもご注目ください!
第24話もどうぞお楽しみください!
大剣豪ミラードが倒された現場をあとにしたユーリたちは、一度体制を立て直すため、酒場『酔っ払い亭』の奥にある作戦会議用の大きなテーブルを囲んでいた。
テーブルの上には、グランデールで最近発生した事件の記録がずらりと並べられている。
そこへ、店主のバイマンが重厚な木製ジョッキに注いだエールを運んできた。カウンターへ戻るかと思いきや、バイマンは腕を組み、ミラードの名が書かれた資料に目を落として口を開く。
「ミラードのやつなら、三日ほど前にここに食事に来たぜ」
「おかしな様子とかなかった?」
すかさずメリッサが幼女らしからぬ鋭い眼差しで尋ねる。バイマンは顎髭をさすりながら、記憶を掘り返すように天井を見上げた。
「そういえば、誰かにつけられている気がするって言っていたな」
「それだっ! そのつけていたというやつが犯人に違いない!」
ルシアンが身を乗り出し、拳をテーブルに叩きつけた。だが、バイマンは肩をすくめて苦笑いを浮かべる。
「今思えばそうかもしれんが……ミラードほどの腕だ。あいつを倒せば一気に名声が上がるってんで、日頃から辻斬りや売名目的の奴らに狙われるのは日常茶飯事だからな。『いつもと変わらんさ、返り討ちにしてやる』なんて笑っていたぜ」
「確かにルシアンの言っていたことも理解できるけれど、決定的な手がかりってほどじゃないわね」
メリッサは小さな顎に手を当て、うーんと唸った。
「どうする? こっちでもう少し詳しく調べてみようか?」
バイマンの提案に、メリッサは頷く。
「ええ、お願い」
「ってところで、やっぱり我らがキャシーちゃんの力が必要ってことね!」
バイマンの言葉を引き継ぐように、それまで大人しくしていたキャシーが胸を張り、自信満々に言い放った。
すかさず、隣に立っていた聖騎士団長エリアナが眉をひそめ、冷ややかな視線を浴びせる。
「『我らが』とはどういうことですの。ユーリ様に猫娘など必要なくってよ」
「何言っているのよ。ユーリが行動するってことは、助手であるキャシーちゃんしかいないって言っているの。あなたは納税者のために、せっせと働きなさい」
「なっ……何をおぬかすのですかしら! 私は日々、街の安全のために全力を注いでおりますわ! ど、泥棒猫と違いますの!」
「誰が泥棒猫ですってーーっ!?」
「あら、盗んだことにも気づかないなんて、なんて質の悪い猫ですの」
「だから私は猫じゃなくて、ヒョウの獣人よ……!」
バチバチと火花を散らす二人を見ながらユーリが「また始まった」とため息をつく。
「……コホン。喧嘩はやめなさい」
メリッサが咳払いをして、場を戻した。
「そういえば前の被害者はシモン卿だったわね」
「優秀な剣士ばかりが狙われるため、今回の連続襲撃が『辻斬り』と呼ばれているゆえんですね。この時、証言でシモン卿と一対一で対峙しているという目撃情報がありました」
ルシアンの言葉を受け、ユーリは並べられた資料の中から一枚の小さな報告書を手に取った。
「でも、これは工場が狙われているね。魔導回路を作っている小さな工房だ」
「ああ、そうだ。だがそれは今月たまたま起こった別の事件だろう。今回の事件とは関係がない」
「そう言い切れる根拠は?」
「根拠と言われても……それは覆面をした複数人が襲ってきた事件で……って、あれ?」
ルシアンは途中で言葉を詰まらせた。ユーリは手に持った資料をテーブルの中央に置く。
「そう。この事件もそうだけど、これまでは『単独の剣士による襲撃』という目撃情報だけに囚われていたから、別の事件として扱われていた可能性が高い」
「今回のミラード氏の『複数人に襲われた』という証言で、前提がひっくり返るわね」
メリッサが後を引き継ぐと、ルシアンは困惑したように眉をひそめた。
「た、確かに言う通りだが……だが、これだけの数の事件すべてが同一の組織によるものだとは考えにくいんじゃないか?ここにある資料だけでも 10件はある」
「そうですわ。すべてを結びつけるのは早計ですわ。実際にこれだけの件数を襲うとなると、情報も労力もかなりかかります。しかも不可解なのは、すべての現場で金品を持ち去られた形跡がほとんどありませんの」
「儲からないのに犯罪は起きないってことね」
キャシーの言葉に、エリアナも頷く。
「怨恨などもありますから全てとは言いませんが、何をするにしても軍資金は重要ですわ。このグランデールで波風を立てずに潜伏するにしても……」
「もし事件がつながっているとしたら……相手はとんでもない組織力や財力をバックにつけているってことになるね」
ユーリが静かに呟いた言葉に、テーブルを囲む全員がハッと息を呑み、背筋に冷や汗を滑らせた。単なる街の辻斬りではなく、巨大な影が王都に潜んでいるという背筋の凍るような現実。
重苦しい静寂を破るように、メリッサがパンと小さな手を叩いた。
「じゃあ、私はこの『とんでもない推理』が当たっているか裏付けすることにするわ。衛兵本部の資料室にこもって、過去の未解決事件を洗い直してくる」
メリッサは椅子から飛び降りると、ユーリとキャシーを指差した。
「あなたたちは最近起きた事件について調べてちょうだい」
「ちょ、ちょっと! 泥棒猫も捜査に加わるのですか!?」
「ふっふっふ、見る人が見れば私の才能はすぐに理解されるのだよ」
ふふん、と誇らしげに胸を張るキャシーに対し、メリッサは平然と告げた。
「あんたは忍術が使えるからね。ユーリの弾避けぐらいにはなるでしょ」
「た、弾避けってヒドイーーッ!?」
ショックを受けるキャシーの横で、ユーリはふと気になっていた疑問をメリッサに投げかけた。
「弾避けといえば……この間、ゴーレムが銃を使っていたよね」
ユーリは白亜の塔で襲撃してきたゴーレムのことを思い出しながら メリッサに尋ねる。
「え? そうね」
「みんな剣を持っているけれど、どうして銃をメイン武器で持っている人はいないの?」
「どうしてって、弾は剣に弾かれるから牽制にしか使えないからな。だからみんなメイン武器は別に持っているんだよ」
「……それってルシアンだけでしょ?」
「そんなことはないぞ。熟練の剣士なら飛来する弾丸など剣の腹で弾くのが常識だ」
当然のように言い切るルシアンに、ユーリは心の中で絶句した。
(……銃弾を、剣の腹で弾くのが常識……?)
現代日本の感覚であれば、遠距離から音速を超えて飛んでくる銃弾は致命的な脅威だ。だが、この異世界では魔力によって身体能力が大幅に引き上げられており、熟練の武人にとっては「目で見て剣で叩き落とせる程度の牽制道具」に過ぎないようだ。
「私もクナイを使うけれど、同じように牽制の意味でしか使えないしね」
「まぁ、弓もそうね。魔法は遠距離で多大な破壊力があるけれど、やっぱり発動までの詠唱時間がネックよね」
キャシーやメリッサも頷いている。
ユーリは(え……みんなっていうか、この世界ではそんな感じなのか。これは文化の違いと言えるのか……常識の違いってやつか……)と、圧倒的な文化と戦闘スペックの差に、一人静かに頭を抱えるのだった。
「よし、方針は決まったわね。ルシアンとエリアナはこのまま衛兵のお仕事ね。何かわかったらまた情報ちょうだい」
「分かった、じゃあまたここで落ち合おう」
「わかりましたわ……。私もユーリ様と行動を共にしたいのですが、公務とあらば仕方ありませんわね……」
エリアナはそう口では承諾したものの、未練たっぷりにユーリの服の裾をチラチラと見つめている。背後を振り返っては「本当なら私がユーリ様の隣で悪を挫き、その功績をもって晴れてお式を挙げる手はずでしたのに……」などと、不満を小さく漏らしながら、重い足取りで店を後にしていった。
それぞれの役割へと散っていく仲間たちを見送りながら、ユーリは、キャシーと共に次なる捜査へと一歩を踏み出した。
第24話をお読みいただき、ありがとうございました!
キャシーとエリアナのバチバチな言い争い(泥棒猫論争)が炸裂する一方で、ルシアンの「見込んだ通りの男だ」という熱い信頼。
そして何より、誰も結びつけられなかった「魔導回路工場の襲撃」と「武術家たちの襲撃」の共通点を見抜き、背後に潜む巨大な組織の影を暴き出したユーリの知略が光る回でした。
それにしても……「銃弾は剣の腹で弾くのが常識」という異世界のバトルスペックには、現代人のユーリも思わず絶句でしたね(笑)。
次回、ユーリとキャシーが現場の捜査へ!
潜入捜査を試みるキャシーですが……例の「1秒見破り」が発動!?
そして夜の街に、不気味な暗影が忍び寄ります——!
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次回は明日7時40分頃更新します。




