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【第16話】監視塔の潜入と、忍び寄る裏切り

第16話をお読みいただきありがとうございます!


深夜、静まり返る『白亜の塔』。

張り巡らされた魔導セキュリティを突破し、最上階の元凶へと迫るユーリたち。


しかし、その背後には冷酷な「裏切りの刃」が忍び寄っていた――!


どうぞお楽しみください!

深夜、静まり返った白亜の塔の裏手。

月明かりを浴びて天へとそびえ立つ白亜の巨塔は、夜の帳の中で不気味なほどの沈黙を保っていた。


正面の大通りに面した厳重な魔導大門を避け、建物の死角となる裏口の勝手口の前に身を潜める。


同行するのは大賢者メリッサ、酒場の看板娘キャシー、そして廃屋ビルで救出したタートル清掃会社のロキシーであった。


「よっしゃ、開いたっす! あっしのカードが生きていて本当によかったっすよ。さあ、急いで中へ入るっす!」


ロキシーが、清掃員専用の魔導カードキーを壁の認証盤へと滑り込ませると、カチャリと小さな解除音が響き、重厚な鉄扉が音もなく内側へと開いた。


気配を殺し、薄暗い通路へと滑り込む。目指すは最上階、王都中を揺るがす『魔導広域共振波放射機』が設置されたコントロールフロアだ。


「ここまで案内してきてなんっすけど……みなさんはどういう目的で、こんな危険な侵入なんて真似をしているんすか?」


暗い通路を小走りで進みながら、先行するロキシーが不思議そうに振り返ってきた。


「街にばら撒かれた追加チップ『MOS』の危険性については、道すがら話した通りよ」


メリッサが歩調を乱さずに、引き締まった表情で応じる。


「ここからは状況からの推測だけど、奴らは街の中心にある『魔導広域共振波放射機』に細工を施したはずよ。本来は害獣を遠ざけるための防衛装置を、街中の汚染回路を一斉起爆させる凶悪なアンテナへと作り変えているの」


「魔導広域共振波放射機?」


キャシーが首をかしげ、頭上のヒョウの耳をぴくりと揺らす。


「王都が威信をかけて開発した最新鋭の害獣駆除魔導具よ。城が一つ建つほどの莫大な開発費が投じられていて、王都直下の最重要機密指定を受けているわ」


その説明を聞いたキャシーは、普段から折り合いの悪い衛兵騎士団長の顔を思い浮かべたのか、茶化すように口元を歪めた。


「へぇー……。じゃあ、あの氷の女帝エリアナが大事な魔導広域共振波放射機を壊されたら、騎士団長の地位や今推薦されてる勇者枠も含めて、ぜーんぶ失っちゃうんじゃない?」


「下手したらそれだけじゃ済まないわね。お尋ね者として追われる身になるかも」


「うっわー、そこまでいくと、ちょっと可哀想になるわねぇ」


腕を組んで他人事のように頷くキャシーに、視線を向けた。


「何を他人事みたいに言っているんだ」


「?」


キャシーがぽかんと目を丸くする。


「装置を止めるためにこれから物理的に破壊するのは、誰だと思う?」


「……あ」


「破壊するのはこちら側だ。お尋ね者確定、歴史に残る大犯罪者になるのはエリアナではなく、今ここにいる全員だよ」


「そうだったーーーッ! あたしたちが捕まる側じゃん!」


自分の置かれた絶体絶命の立場にようやく気づいたキャシーが、青ざめて頭を抱えた。


敵は装置を破壊するのではなく、街全体の汚染回路を一斉起爆させる発信源として利用しようとしている。


だからこそ、街を救うには国宝級の重要機密を力任せに叩き壊すしかない。

その行為が何を意味するのかを再認識し、胸の奥で静かに覚悟を固めた。



白亜の塔の第二区画へと到達する。

本来であれば、侵入者を一瞬で炭化させる高電圧の魔力障壁や、重量感知式の即死魔法陣が隙間なく張り巡らされた絶対防衛エリアだ。


だが、先行するロキシーの足取りに躊躇は一切なかった。


「あっしに任せてほしいっす。この通路の掃除で、配線の癖やトラップの位置は知り尽くしてるっすから!」


ロキシーは壁面の分厚い金属制御盤を迷いなく開けると、手慣れた手つきで内部の魔導配線へと指先を滑らせた。


複雑怪奇に絡み合う何百本もの精密な導線を、特定の順番通りにバイパスさせ、防衛セキュリティの術式を次々と物理的に沈黙させていく。


カチ、カチ、と小気味よい解除音が通路に響く。


「見事な手際……! 流石は本物の清掃員、一味違うわね」


キャシーが感嘆の声を漏らす。

恐るべきトラップ区画を何一つ作動させることなく突破し、四人はついに白亜の塔の心臓部――最上階コントロールルームの重厚な扉の前へとたどり着いた。


扉の隙間からは、耳障りな高周波の駆動音とともに、微かに焦げ付くような異質なマナの匂いが漏れ出していた。


コントロールルームの扉をわずかに押し開ける。

広大なフロアの奥、剥き出しになった巨大装置の盤面に向けて、怪しく脈動する黒い起爆器具を取り付けようとしている女の背中があった。


頬に薄い古傷のある、あの昼間に白亜の塔の前で話しかけてきた女だ。


「観念しなさい! その不気味な装置を今すぐ止めるのよ!」


キャシーが一瞬にして強靭な爪を剥き出しにして地を蹴り、メリッサが短杖を構え、一気に女の周囲を包囲した。


だが、退路を断たれたはずの女は焦る素振りすら見せず、ふっと口元を冷酷に吊り上げた。


「……ふん。やっと来たな」


振り返った女――ディアナの口から漏れ出たのは、王都の言葉ではない、西の地方特有の乾いた訛りだった。


「組織から緊急時だけ使えと渡されとったけど……まさに今が使い時やな!」


ディアナは懐から禍々しいルーンが刻まれた黒い球体を取り出すや否や、床へと叩きつけた。


ボォォォッッッ!


球体から噴き上がったのは、大気そのものを焦がすような不気味な『黒い炎』だった。


だが、【眼】を凝らせば、その正体は一目瞭然だった。激しくうねる黒炎の周囲に、バチバチと放電を繰り返すように蠢く、高密度の『紫黒いマナの不純物』が焼き付いている。


「メリッサ、あの炎、マナの不純物が練り込まれている!」


「なんですって!?」


メリッサがすかさず短杖を振り抜き、青白い『魔導防壁』を展開して黒い炎の直撃を食い止める。


その刹那、防壁の隙間をすり抜けて前へと踏み込んだ。


黒炎の周囲にまとわりつく、空間の歪み。その端へと素手を伸ばし、指先を深く食い込ませる。


強力なテープを力任せに引き剥がすイメージ。


全身の体重を乗せ、一気に引っぺがす――!


「剥がれろ――ッ!」


ビリリィーー……ッ!!


空間を裂く透明な破裂音が室内に響き渡った。

マナの結合を強制解除された黒い炎は、ただの無害な煙となって空気中へ霧散し、完全に消滅するる。


しかし。

全員が炎の処理へと全神経を集中させた、わずかコンマ数秒の決定的な隙。

背後から、一切の感情を排した冷酷な詠唱が響いた。

第16話をお読みいただき、本当にありがとうございました!


「破壊するのはこちら側だ。お尋ね者確定、歴史に残る大犯罪者になるのはエリアナではなく、今ここにいる全員だよ」

「そうだったーーーッ! あたしたちが捕まる側じゃん!」

キャシーの呑気なツッコミから一転、国宝級の防衛兵器を破壊するという命がけの覚悟を決めたユーリたち!


最上階で待ち受けていた関西弁の刺客・ディアナの黒炎を、素手で「ビリリィーー……ッ!」と豪快に引き剥がしたユーリでしたが……!

全神経を炎に集中させた、コンマ数秒の隙。

背後から響いた、あの「冷酷な詠唱」の主は一体……!?


最悪の裏切りと、絶体絶命の包囲網!

果たして、退路を断たれたユーリたちの運命は……!?


次話、この絶望的な密室を外壁ごとぶち破り、あの大剣を担いだ「過保護な親友」が豪快に殴り込みをかける――!?

怒涛の反撃と、天蓋へ向けた驚愕の跳躍劇が幕を開けます!


「ロキシーの手際が良すぎて最初から怪しかった!」

「黒炎を素手で引き剥がすユーリが今回も最高にカッコいい!」

「絶体絶命すぎる、早く次を読ませて!」


と少しでもゾクゾクしていただけたり、続きが気になりましたら、

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次話【第17話:裏切りの連鎖と、天蓋への跳躍】へ続きます。

次回は明日18時40分頃更新します。


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