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第35話「子供たちの薬草教室」

よく晴れた日、僕は、村の子供たちを、薬草園に集めた。


 歯の手入れを教えに行ったとき、子供たちが、薬草に、目を輝かせていたのを思い出したのだ。それなら、いっそ、薬草のことを、まとめて教えてやろう。小さいうちから、薬草に親しんでおけば、いつか、自分や、家族を守る力になる。


 集まったのは、トムや、リサの子をはじめ、十人ほどの子供たち。みな、好奇心で、目をきらきらさせている。


「今日は、みんなに、薬草の見分け方を教えます」


 僕は、まず、癒し草を、一枚、子供たちに見せた。


「これは、癒し草。すり傷や、切り傷に効く。葉っぱの、このぎざぎざの形と、裏の細かい毛が、目印だよ」


 子供たちは、われ先にと、葉を覗き込んだ。指で触れ、匂いを嗅ぎ、形を確かめる。学ぶというより、遊んでいるようだった。けれど、それでいい。楽しみながら覚えたことは、忘れない。


 次に、血止め草、月見草、温め根と、村でよく使う薬草を、順に教えた。それぞれの、形、匂い、効き目。子供たちは、夢中で、覚えていく。中には、もう、見分けられるようになった子もいた。


「先生、これは? これも、お薬?」


 一人の女の子が、畑の隅の草を指さした。それは、ただの雑草だった。


「それは、薬草じゃないね。でも、よく気づいた。薬草と、そうでない草を、見分けられるようになることが、大事なんだ。似ているけど、違う。その違いが、わかるようになると、一人前だよ」


 女の子は、得意げに、笑った。


 それから、簡単な手当ても教えた。転んで、すり傷を作ったら、まず、傷を、きれいな水で洗うこと。火傷をしたら、すぐに、冷たい水で冷やすこと。難しい薬は使えなくても、この基本だけ知っていれば、いざというとき、自分を、友達を、守れる。


「みんなが、これを覚えておけば、僕がいないときでも、誰かが怪我をしたとき、助けてあげられる」


 子供たちは、真剣な顔で、頷いた。


 教えていて、気づいたことがある。子供たちに教えるのは、ただ知識を授けるだけではない。薬草を大切にする心、人を助けたいと思う気持ち。そういうものも、一緒に、手渡しているのだ。この子たちの中から、いつか、薬師を志す者が、出てくるかもしれない。


 ハンナ婆さんから、僕へ。僕から、この子たちへ。知識は、こうして、世代を越えて、受け継がれていく。一人の代で、消えてしまうはずだった魔導薬草学が、こうして、たくさんの小さな手に、種を蒔いている。


 子供たちは、教えた薬草を、紙に描いたり、押し花にしたりして、嬉しそうに持ち帰っていった。その小さな背中を見送りながら、僕は、温かい気持ちになった。薬草園に、子供たちの笑い声。それは、この村が、確かに、未来へ続いていく音だった。


 また、教室を開こう。次は、薬草の育て方を、教えてやろう。種を蒔き、水をやり、育てる喜びを。それは、命を慈しむことに、繋がっているのだから。


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