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第21警備隊隊長、奔走中!  作者: 桜木るさ


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第22話 新たな人影

 逃走した男2人を追いかける為、ルミリア、アンドラ、ゼリスは別行動を始めた。


 男の1人をルミリアが、もう1人をゼリスが追いかけ、アンドラは男達が営業していた店で待機しながら証拠品を探していた。


 ルミリアが追いかける男は、身体強化魔法を身体の負担も考えずに使い、逃げていく。ルミリアも負担ギリギリまで身体強化魔法を使い追いかけるが、男との距離は変わらぬまま。


 気付けば2人は第7地区を抜け、第8地区に入っていた。


 びゅうっと、ルミリアに風が巻き付く。


『今8地区着いたけど、ボスはどの辺?』


 第3、4地区で捜査をしているゴーイットから伝達魔法が来た。すぐにルミリアも伝達魔法で応答する。


「今は、8地区の上、北の、住宅街っ」


 ルミリアの声を乗せた伝達魔法が男を追い越して飛んでいく。


 その直後、男の体力が尽き始めたのか、身体強化魔法の意味もなく、走るスピードが落ちていく。体力の限界と過剰な身体強化魔法の使用により、男が転び、立ち上がれなくなる。


 ルミリアが男の側に近付こうとしたところで、男が何かを投げる。


 何かが地面に当たり、弾けると、煙が上がる。


「なっ」


 煙の直前で止まり、急いで風魔法を使う。


 ルミリアの放った風魔法が煙を霧散させかけたところで、別の風魔法が煙を集める。ここは住宅街で、今は真っ昼間だから人はそんなにいないはず。男側の仲間か、と警戒を強めると、怒鳴り声が響き渡る。


「ちょっと何やってんすか!フランメリアは煙がどうたらとか言ってたっすよね!煙広げてどうするんすか!!!」


 リヒの怒鳴り声だった。ルミリアから見て、男の奥にリヒと、同じく第3、4地区で捜査をしていたゴーイットとシュンリがいる。


「すまん!助かった!とりあえず、逃げた男はそこにいる奴だ!」

「承知っ!さっきの攻撃って傷害未遂だよね!拘束します!」


 いつも通りの明るさで、シュンリが男に突っ込み、慌ててゴーイットが後を追う。


 男の目線がルミリアからリヒ達に向いたのを確認してから、ルミリアも再び男に向かって走り出す。男はヤケになったのか、まともに動けないまま無闇矢鱈と魔法を放つ。


 少し離れた場所で立っているリヒはともかく、シュンリは持ち前の運動神経で魔法を避け、避けきれなかったものは即座にゴーイットが対になる魔法を放って対処する。流石ベテラン。


 人数の差か、3人よりかは少ない数の魔法を避け、対処し、ルミリアも少しずつ男に近付いていく。


 思うように動かないだろうに、右腕を持ち上げ魔法を放っている男。その目には諦めの色が見える。だが、攻撃の手を弱める事はしない。


 一際大きな炎が男とシュンリの間に生まれる。


「いい加減、」


 シュンリが声を上げてスウィトを取り出す。シュンリによって魔力を込められたスウィトは、手のひらサイズから30cm程度の棒になる。


 シュンリはスウィトに風魔法を纏わせ、炎に向かって振りかぶる。


「諦めてくだ、さい!」


 様々な方向から切られた炎は、最後に術者との魔力路を絶たれ、小さくなり、消滅する。


 周辺にまだ火の粉が飛び散る中、シュンリとゴーイットが座り込んでいる男を取り押さえ、直ぐにルミリアが魔力封じの手錠をかける。


「傷害未遂で、自警団まで連行する」


 シュンリとゴーイットが男を立たせようとするが、先程の身体強化魔法の影響か男の身体は立つ事も出来なかった。


「とりあえず、本部に連行でいっすね」


 一応集めた煙を風の魔法で包んだままリヒが歩いてくる。


「それで頼む」


 と、風がルミリアの周囲に時間差で2つ、巻き付く。


『こちらモデニヲス。第5地区、ネイラ魔術具店にて不審者を拘束。暴れて店内の商品がいくつか壊れたが、怪我人はなし。これから本部に連行する』


 モデニヲスの声の奥からは、女の人の「ちょっと商品どうすんのよ!賠償は?!」という声が、全く小さくない声で入り込んでいる。


 なんか大変そー、とシュンリが思わずといったように零すと、もう1つの風、伝達魔法がクユの声を届ける。


『こちらクユです。フランメリアを所持している女を拘束しました。これから本部に連行します。それと、関係者を1人、任意同行させます』


 モデニヲスと比べて、異様に静かな報告だった。


 2つの伝達魔法に「了解」と送ってから、ルミリアは3人に向き直る。


「さてと、後は頼んでいいか?まだ連絡がないから私は一応ゼリスのところに行ってくる」

「はーいっす」


 リヒが返事をし、ルミリアがその場を後にしようとした時、目の前を人影が通る。


 人影は気が付くと、近くの民家の屋根の上にいる。人影はこちらを観察するように周囲に目を向ける。真っ黒なローブがたなびくと、白い裏地が目を引く。


「……っ!」


 ルミリアが息を呑む。


「あっ!さっきの煙出たやつないよ!」


 シュンリの声に3人が地面に視線を向けると、確かに男が転んですぐに投げた物が無くなっている。


 次に屋根に視線を戻した時、人影はいなくなっていた。




 ルミリアが第7地区から第8地区に入った頃、ゼリスもまた第7地区から第6地区に入り、第5地区の近くまで来ていた。


 青白い顔に痩せ細った身体からは想像出来ないほどの速さで、あっという間に第6地区を駆けていく男。


 自身も身体強化魔法を使い、必死に追いかけるゼリスだったが、無常にも距離は開いていき、何度か視界から外れては捉え直す事を繰り返していた。


 ゼリスの身体能力は自警団の中では平均程度で、魔法の方が圧倒的に得意だ。ただし、今回は魔物相手ではなく人相手という事で、魔法を使い徒に傷つける事が出来ない。


 前方に氷魔法で壁を作ったりして多少の妨害は出来ても、なかなか拘束出来ないでいた。


「きゃあっ!」


 過剰な身体強化魔法を使った身体は本人の意思通りにコントロール出来ず、男と通行人の女性がぶつかる。


「すみません!お怪我ありましたら近くの自警団員に伝えて欲しいです!」


 倒れた女性を助けたいところだが、男を追う事を優先して、ゼリスは声だけ掛ける。


「……しまった」


 女性の方へ一瞬目を向け、視線を戻すと男の姿はなかった。見失った。


 見失うくらいなら女性を介抱するべきか、それかまた探して追いかけるか。


 判断は一瞬もかけていられない。


 ちらと女性を見ると、立ち上がって不安そうにこちらを見ている。


 ゼリスは男を追う事にした。


 十字路に差し掛かって、右に行ったか左に行ったか迷っていると、爆発音が聞こえる。


 音の方を向くと、わずかに煙が上がっている。


 即座に右手に向かう。


 爆発の起きた場所に付くと、ちょうど誰かが風魔法を使ったのか、ブワッと煙が晴れる。


 煙の晴れた場所の中心には、痩せ細った男が頭を抱えて蹲っていた。その奥には腕を口に当てた人影が3つ、ジェンシン、ケッシ、ニコレがいた。


 煙が晴れた事に気が付いたのか、痩せ細った男は逃げ出そうと立ち上がりかけるが、既に両方の道を塞がれている事に気付く。


「あああああ!」


 突然頭を掻きむしり叫び出す。


 仰向けになり、子供のように駄々をこねて、暴れる。


「なんでなんでなんでだよぉ!」


 手には何も持っておらず、我を失い危害を加える様子が見えないので、ゼリスと3人はアイコンタクトを取り、同時に男を抑えるために走り出す。


「うわっと」


 1番最初に男の身柄を抑えようとしたニコレが、軽く吹っ飛ばされるも、綺麗に地面に着地し、注意を促す。


「まだ身体強化魔法残ってるみたい」


 無表情になったニコレの注意を聞いてから、ゼリス、ケッシが男を取り押さえる。


「僕は実験してただけなのにぃ!なんでだよぉ!」


 痩せ細った男は、言い訳を垂れ流しながら泣き叫ぶ。


「なんで日を見てこんなんしなきゃなんだよぉ!僕は日なんて見たくないのにぃ!逃げろって言われるし、疲れるしぃ!」


 過剰な身体強化魔法が残ったままの男の身体は、3人がかりでやっと完全に押さえつけられる。


「別にあいつらがいつ死ぬかなんて僕が確認する必要ないのにぃ!」


 男の言葉を聞いた途端、男の上半身を抑えていたゼリスが片手を上げる。


「いい加減にしろ!!!」


パシッ


 ゼリスが平手を、男の頬に叩きつける。


「人の命を、軽く扱うな!」

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