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第21警備隊隊長、奔走中!  作者: 桜木るさ


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18/24

第18話 張り込み失敗

 ワリー、ミレシアン、ボリシュの3人と別れたルミリアは隊長室兼会議室兼休憩室に足を運ぶ。


「おはよう」

「おは……」


 ロの字に並べられた机の1つに突っ伏して寝ていたゼリスが、ルミリアの挨拶に身体を起こして反応する。


「どうしたの?そんな不機嫌で」

「いや……、今ワリーに背伸びした初等学生って言われた」

「あぁ。まあ、そう見えるしね」


 言うか言わまいか一瞬だけ迷ったが話したルミリアに、ゼリスも容赦なくワリーを肯定する。


 初等学校なんて8年も前に卒業したのに、とぶつぶつ言いながらルミリアがゼリスの横の席に座り落ち込んでいると、アンドラが出勤してくる。


「おぉ、悪ぃ。俺が最後だったか」

「全然だいじょぶ。時間前だし」


 不貞腐れた声を出すルミリアとゼリスが立ち上がり、3人で更衣室に向かう。更衣室に入ってすぐ、アンドラが装備について尋ねる。


「どうする?いつもと同じでいいか?」

「そうだな。魔力封じの手錠とー、スウィトとー、……」


 アンドラの言葉に頷いたルミリアが声に出しながら道具を取っていく。


 スウィトは手の平サイズの棒状の魔道具。住民を守る事が仕事の自警団で使われている唯一の武器だ。


 紐が付いているので、ルミリアは腕に通しスウィトをブラウスに隠す。ゼリスとアンドラは半袖で腕に付けると目立つので、ベルトに付ける。紐もまた魔道具で、魔力を込めれば伸びるので邪魔になる事はない。


 一通り支度が終わり、3人は第21警備隊の隊舎を出て、第7地区まで歩いていく。


 今日の3人が行うのは張り込み。昨日の聞き込みで聞いた移動式の花屋を見つけ、尾行すること。


「そういえば、張り込むって言ってもどうやるの?」

「普通にだろ」

「ボスの普通ってなんだよ」


 ゼリスの疑問にルミリアが即答するが、よくよく考えてみるとそれは対魔物の張り込みであって、人間相手では使えないような気がしてくる。


「ま、まずはいつも通りの巡回をして、それらしき店を見つけるところからだろ」


 アンドラの言葉に2人が頷く。


 第7地区に着き、早速市場のあった所に向かう。


「今は丁度何もないな」

「野菜の時間も終わって、お昼もまだだから」

「だな、流石に今日来るとしてもまだ来ねぇだろ」


 その場に長時間いても不審者でしかないので3人はいつもの巡回のように歩き出す。


 そうしてゼリスの案内のもと、第7警備隊の巡回ルートから外れた道を通り再び市場のあった所に戻る。


 少し時間がお昼に近付いたからか、何人かの人が出店の用意を始めている。ただ、それらしき花屋は見当たらない。


「今日じゃなかったかもね、来るの」

「まあ、花氷の店の人がそろそろ来るかもって言ってたんだから、そんなに長期になる事はないと思うけど」


 先頭を歩くゼリスが振り返らず、呟くように声を出し、アンドラが周りを見回しながら答える。


「ま、今日は聞き込みでもするか。花屋についてもうちょっと情報欲しいし、フランメリアの出処が別にあるかもしれないしーー」

「……あ」


 アンドラが次にすべき事を挙げている時、ルミリアが声をあげる。


「あれ、そうじゃないか」


 ルミリアが小さく手で指し示す先には、荷車を引いている人。荷車には屋根が付けられ、中には色とりどりの花が見え隠れしている。


「じゃあまずは客として行って、その後1回職質してみて、帰りに尾行だな」

「了解。じゃ、誰が客として行く?職質は別の人が行くべきだろうし」

「客としてなら私かゼリスかな?アンドラが花屋に行くイメージが湧かないや」

「ま、おっさんが行くよりも若いやつだよな」


 ルミリアが今後の行動方針を示し、アンドラと話す。


「それじゃあ、僕が客として行きますよ。2人は職質を」


 役割が決まったので、出店が開くまで近くをぐるぐる歩く。


「でもまだ出処がはっきりしたわけじゃないから、今から私達は周辺の店にも聞き込みに行くか」

「分かった」


 花屋が開くまでの間、3人は分かれて周辺の店で聞き込みをする。暴れた2人の事、最近不審な事があったかどうか、聞く事はたくさんある。


 ちなみに今日は3人とも自警団の制服を着ていないが、自警団には団員証があるので、それを見せれば住民の方々は協力してくれた。


 昼前になって、3人は路地で集まる。


「何か有力な情報はあったか?」

「いや、暴れた2人については皆同じ程度の噂話しか知らんようだったし、直接見た人からも話は聞けたが新しい情報はなかった。ボスとゼリスは?」

「僕も似た感じかな」

「私もだ」


 収穫は特になく、少し焦りが湧き出てくる。


「あ、そういえば花屋については少し聞いたよ。さっき7隊の先輩に会ってさ、7隊でも不審者として上がってて、調査によると店をやってるのは2人。1人は6地区から5地区の方へ、もう1人は8地区から9地区の方へ帰っているらしい」


 第21警備隊以外の警備隊は隣接する地区までしか捜査する事が出来ないから、隣の第6地区と第8地区までで情報が止まっているのだろう。


「今日はどっちか聞いたか?」

「今日は6地区の方に帰った方って言ってた」


 改めて3人で花屋を見る。


 店の用意をしているのは新緑の髪をしたひょろがりの男。あまり日の光を浴びていないのか肌は青いくらいに白い。


 と、そこに1人の男がやってくる。客かと思ったが開店の準備を手伝っている。こちらも青いまではいかなくてもかなり白い肌と、同じ新緑の髪をした男。


「兄弟か?」

「それは分かんないけど、かもしれないとは言ってた。てか店は必ずどっちかって言ってたのに両方いるじゃん」

「まあ、2回も張り込まなくて済んだしいいだろ」


 ゼリスとアンドラが話していると、2人になった店はあっという間に開店の準備が終わり、店を開ける。後から来た男が大きな声を出し始める。


 周りの出店も開店し始め、一気に騒がしくなってくる。


「それじゃ、客として行ってくる」

「行ってらっしゃい」


 ルミリアとアンドラに見送られ、ゼリスが店に向かう。


「こんにちは」

「いらっしゃい。あれ、兄ちゃん初めて見る顔だな」

「あ、そうです。知り合いに勧められて……」


 店の表に立っているのは後から来た男。はじめからいた男は裏でなにか作業をしている。


「何かおすすめの食べられる花とかありますか?」

「そうですねぇ。僕はビオラとか好きかな。まぁ他にも花はあるしゆっくり見てってください」


 そう言って男は花を種類ごとに小さなお皿に分けて用意していく。


「はい。試食だからお金はいらないよ」


 男に勧められるまま、ゼリスは花を試食していく。正直苦手な花もあったが、1つずつ感想を言い、出された花は全種類食べ終える。


「これ以外にも扱っている花はあるのですか?」

「一応色々ありますよ。ただ仕入れ値が高いので試食には出せなくて……」


 そうは言いながらも、男は店の中から花を取り出し、見せてくれる。


 花びらだけが瓶に入って液体に浸かっているものや、ドライフラワーにしたものなど。店の奥の方も少し開放してくれて、かなりの数と種類の花がある事が分かる。


 この中にフランメリアがあるかもしれない、そう考えながら目を凝らすが、ゼリスには見分けがつかなかった。地下迷路関係は暗記していても、地上の植物に関しては一般人程度だからだ。


「それじゃあえっと、パンジーを20いいですか?」

「はいよー。ちょっと待ってなー」


 客として来たのもあるし、試食だけして買わないのも申し訳ないので、食べてみて美味しかったパンジーを購入する。


「はい、お待たせ」

「ありがとうございます。……そういえば、これは出店ですけど本店はどこにあるんですか?」

「いやぁお恥ずかしい事にまだ店は開けてないんですよ。一応13地区で購入はしましたけどね。今は何人かの仲間といくつかの地区でこうして出店で販売しているだけです」


 その後も少し話してから、ゼリスは店を離れる。


 見送られた時と変わらない場所にいる2人と合流して報告する。


「お疲れさん。おっ、花買ったのか」

「うん、流石にね。沢山試食させてくれたし」

「それで、どうだったの?」

「怪しい言動とか、行動とかはなかったかな。それと色んな花があってさ、僕でも知ってるようなのから全く聞いた事ないのまであって、咄嗟に地下迷路のものかどうかは判別出来なかった」


 ゼリスの話を聞き終わり、ルミリアとアンドラが改めて花屋の方を見やる。


「俺は5隊と13隊にいた事があるから、見分けるのは自信あるつもりだ」

「それは助かる。んじゃ、職質も一応行ってみるか」


 お昼時になり混み始めた市場に2人は歩いていく。


 花屋がはっきりと見える所まで歩いた時、青白くない方の男とルミリアの目が合う。


 ピシッという音が似合いそうな形で男は固まる。その動きに首を傾げている内にルミリアとアンドラは店の前に到着する。


「い、いらっしゃいませ……」


 僅かに震えている声、顔は驚きに満ちている。


「すみません、自警団の者ですが、お話よろしいですか」


 ルミリアが自警団の団員証を見せながら話しかける。


「……あ、あなた、が」


ガタッ


 店の後ろで作業していた青白い方の男が突然、何かを抱えながら逃げ出す。


「待て!止まりなさい!」


 近くで様子を伺っていたゼリスが追いかける。


「あ、はっ……」


 その様子を呆然と見ていた青白くない方の男も慌てて逃げ出す。


「ふっ……!チッ!」


 咄嗟にアンドラが男の腕を掴もうと手を伸ばすが、ギリギリで振り切られる。


「アンドラはここで待機!私が行く!」

「わかっ」


 アンドラが返事を言い終えるよりも早くルミリアが男を追いかける。


「なっ」


 ルミリアとしては、身体強化の魔法を使えばすぐに追い付き、捕まえられると思っていた。


 だが、男とルミリアの距離はどんどん開いていく。


 身体強化の魔法は、身体を一時的に強化する事で身体能力を上げる魔法だ。だから、強く使えば使うほど身体への負担が大きい。ただし、元の身体を鍛えていれば負担にも耐えやすくなる。


 青白くない方の男は、後の身体の負担を一切考えていないような身体強化の魔法を使っている。それは最初の走り出しの速さと身体強化の魔法を使ってからの速さで分かる。


「ふゔっ!」


 ルミリアも魔力の出し惜しみをやめて、ギリギリまで身体強化の魔法を使う。男の速さになんとか食らいつきながら走り、同時に伝達魔法を第21警備隊隊員全員に向かって使う。


「7地区で男2人が逃走中!それぞれ6地区と8地区の方面へ逃げている!至急応援を!」

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