第14話 第5地区での捜査
一方で、第5地区での捜査を行なっているのは、頼りになるみんなの兄貴モデニヲスと、ベリンじいさんに接触した事があるオケニミ、以前は第5警備隊に所属していたペンジの3人。
ペンジはルミリアとノエの1つ年下で、言動と行動が年寄りくさい16歳。
「いやぁ、5隊に行くのは久々ですなぁ」
手をパタパタさせて顔を仰ぎながら先頭を歩くのが丸坊主のペンジ。その後ろをモデニヲスとオケニミが付いていく。
「いつぶりぐらいに行くんだ?」
「そうですねぇ。少なくとも21隊に入ってからは行っておりませんので、3年ぶりぐらいでしょうかねぇ、はい。ちなみにお2人は以前はどちらに?」
「俺は14隊だ。クユと一緒だったな。あいつの方が先に21隊に入ったが」
「僕は1隊だよ〜。実はだけど〜、さっき来てたユクリとは同期だよ〜」
3人で以前の隊について喋り出す。1隊といえばエリート街道なのになんで21隊に来たのだとか、昔のクユはどうだったのかなど盛り上がっていると、第5警備隊の隊舎に到着する。
隊舎の中の小会議室に案内され、事務の人が調書を持ってきてくれる。
「今のところ、5地区では酔っぱらいが暴れたのは10件あります。こちらがその調書です」
10件分の調書を渡され、モデニヲスがフランメリアに関係する調書と関係しない調書とを分けていく。
10件の内フランメリア関係のものは4件。
「4件とも冒険者だな」
第5地区と第13地区にのみ存在する地下迷路に挑む者達、冒険者がどうやらフランメリアを摂取していたらしい。
「共通点と言ったら〜、冒険者支援組合に行った事くら〜い?」
「そうですねぇ。ですが冒険者であれば組合に行くのは当たり前ですからねぇ。フランメリアに関係なく暴れた者達の中にも冒険者がいますし、何か違いがあるかもしれませんねぇ、はい」
冒険者支援組合は、地下迷路のある第5地区と第13地区に置かれている、その名の通り冒険者を支援する組合。
主に各地区の自警団と共に地下迷路産の持ち出しについての管理や、冒険者への支援、例えば地下迷路で使える魔道具の貸し出しや販売、怪我を負った時や亡くなった時の保険など、多岐に渡った支援を行っている。
報告書よりも調書の方が詳細とはいえ、冒険者支援組合でどのように過ごしていたかまでは分からない。
「まずは本人に会おう。組合に行けば会えるだろ。多分」
オケニミとペンジがモデニヲスの言葉に頷き、3人で第5警備隊の隊舎を出て、冒険者支援組合に向かう。
第5地区の地下迷路と冒険者支援組合は、地区内の西側にある。地区の中心にある第5警備隊の隊舎を出た3人はいつもの巡回のように歩く。
近付くに連れて、住宅よりも店が増えていく。食事処や冒険者向けの道具屋や武器屋など、多種多様なお店が並んでいる。
「あっ、見えた見えた。5地区の地下迷路と組合はあちらですぅ」
ペンジが手を向ける先には5地区で1番大きいと言われる建物、第5地区冒険者支援組合所。煉瓦造りであり、また、窓には鉄柵があるので、まるで監獄のよう。
実際に、第5地区と第13地区それぞれ冒険者支援組合は監獄のような役割を果たす。閉じ込めるのは人間ではなく魔物だが。
地下迷路から冒険者を追いかけてだったり、たまたまだったりで地上に上がってくることがたまにあるのと、ごく稀に魔物がスタンピートを起こす。そんな暴れる大量の魔物を地上に、人の住む自治区内に侵入させない最後の砦の役割が冒険者支援組合所だ。
堅牢な第5地区冒険者支援組合所の金属で出来た扉は緊急時以外常に開かれている。
第5地区冒険者支援組合所に入ると、3人に少しだけ視線が向けられる。紺色の制服自体珍しいが、中には第5警備隊の支所があるので、見慣れているのだろう。
入って正面には地下迷路への入り口があり、冒険者支援組合の職員と第5警備隊の隊員が、地下迷路から上がってきた冒険者の荷物検査をしたりしている。
左手には食事処があるが、昼前の今はがらんとしている。
反対の右には受付があり、これから地下迷路に入るのだろう冒険者が受付をしている。
ガタッと音が響き、受付にいた職員が席を立ち3人に向かって歩いてくる。
「すみません、自警団の、その、どちらの方なのかお伺いしても?」
「あぁ、俺らは21隊です」
3人を代表して、1番年上のモデニヲスが職員に挨拶する。
「あっ」
ひょこっとモデニヲスの背後からペンジが顔を出す。
「イーリンさんではないですかぁ?!お久しぶりですぅ、ペンジですぅ、はい」
モデニヲスの大きな体に隠れていて全く気が付かなかったのだろう、びっくりしすぎて思わず後ずさっている。
「そんな驚かないでくださいよぉ」
「あ、あぁ。そうだよな。わりぃ」
会話が途切れ意識が少し弛緩した瞬間、パンッと鋭い音が響く。
「喧嘩か?」
「そう、ですね。冒険者同士のカップルは男女共に手が出るので、喧嘩は殴り合いになる事が多いんですよ」
苦笑しながらイーリンが答え、うむ、とペンジが頷いている。そんな様子を切り替えようとオケニミが手を叩く。
ぱんっ
「イーリンさんとペンジが知り合いだったのはラッキーだったね〜」
「だな。イーリンさん、俺らは捜査の為に来たんですけど、ご協力いただいてもよろしいですか?」
「え、えぇ。出来る限りの協力は住民として当然ですから」
わずかに歯切れの悪いイーリンの言葉に、若干の煩わしさを覚えながら、イーリンに案内されるまま3人は奥に連れていってもらう。
奥の一室に通されて、別の職員がお茶の用意をする。
「それで、一体どのような捜査でしょうか」
「ある、冒険者についてなのですが、こちらの方についてお会いするなり出来たらと思いまして…」
モデニヲスが第5警備隊で受け取った調書のコピーごと渡し、机に並べる。フランメリアに関係するのは内4件だが、捜査は内密という事で酔っぱらいの捜査として10人とも形だけは話を聞く予定だ。
イーリンがお茶を入れていた職員に10人に連絡を取るよう指示を出し、一旦お茶を飲む。
冒険者は全員冒険者支援組合に伝達魔法を必ず習得し登録しているので、すぐに来られるかどうかほ別として連絡を取る事が出来る。
そうでなければ、危機に直面した時に救難の連絡を送る事が出来ないためだ。
少しの間ペンジとイーリンを中心に雑談をしていると、連絡を取ってくれた職員が戻ってくる。
「10人に連絡したところ、今から来られるのは2人だけだそうです。残りの8人ほ明日以降ならと連絡が来ました」
どういたしますか?という職員の言葉に頷き、来てくれた冒険者2人に取り調べをする。
ただし、2人ともフランメリアとは無関係だった。
イーリンにまた明日も来るという話をしてから、3人は冒険者支援組合所を出る。
「……」
「どうした?オケニミ」
「いや〜、なんでもないよ〜」
急に足が止まったオケニミ。心配するモデニヲスの言葉に対して、首を軽く振りながら曖昧に返事をする。
外に出ると日はとっくに頂点を通りすぎ、お昼になっていた。
「どっかで軽く食べたら、隊舎に戻ろうか」
「了解〜/了解であります」




