11.再生の炎
真紅の髪を両手で広げ、元の位置に戻す有里。
「いや〜、貴方たち2人見つけれて良かったわ」
暗闇の中、2人を見つめ、微笑む彼女。
体中に血と傷が走り、ところどころ衣服が裂けていた
しかし、魅惑的であり悪魔的な雰囲気を醸し出す。
ハイナーは、声を荒げ突撃する。
手には、剣を持ち刺突の構え。
「答えろ!!」
「えぇ〜?どうしようかしら〜?」
彼女は、人差し指を唇に当て、子悪魔っぽく笑う。
しかし、ハイナーの攻撃を避けもうとしない。
ハイナーは、そのまま有里に接近し、2連の刺突を放つ。
心臓と額。
剣が肉を裂く確かな感触。
続けてハイナーは、魔力を流し込む。
「炎よ!!」
熱が剣に伝わり刀身が赤くなる。
鉄の焼ける匂いが鼻を刺す。
その熱が有里に伝わり始め燃え上がった。
そして、火柱を立て身体を炎の衣に染め上げた。
「回復かそれに似た魔法を持っているのだろう。しかし、中から焼かれれば回復は意味も保たんぞ!」
回復魔法保持者の弱点を付いた攻撃。
回復出来ようが、其処も再び燃えてしまえば、
意味を辞さない。
延焼の特性を活かした攻撃である。
ハイナーも、長年戦っているわけではない。
有里の体が燃え、動かない。
しかし、
「ざ〜んねん。君、私と相性最悪だね」
効いてない。
炎の中心で、有里は微笑んだ。
「なっ!?」
ハイナーは、驚嘆の声を上げる。
その異常な場面を見たミシェルは、咄嗟に声を荒げた。
「ハイナー!」
ハイナーは、突き刺した剣を抜こうとした。
しかし、抜けない。
その一瞬のミスが仇となる。
「なっ!?っう!!」
手を燃えた有里の手で掴まれた。
熱が皮膚を貫き、骨にまで灼ける痛みがはしる。
ハイナーは、苦悶する。
「ーーあっつ〜い、抱擁をしてあげる。」
彼女は、ハイナーを抱き締めようと、手を広げた。
炎に包まれた体をハイナーに差し向ける有里。
ハイナーの視界が赤く染め上がった。
「あら?」
しかし、途中で身体から炎が消えた。
まるで燃えていることが無かったかのように。
「消したのは貴方?」
前を見ると、ミシェルの指が此方に向けられていた。
「さぁね。どうか分からないなぁ〜」
はぐらかすミシェル。
その隙に、剣を離しミシェルの方に後退したハイナー。
「申し訳ありません!!助かりました」
「今はいい。支援にあたれ」
瞬時に指示を出すミシェル。
彼は、有里を見つめていた。
有里を敵と認識した。
今の彼女は、剣を額に突き刺されながら笑みは、消えない。
それは、不気味であり、異常事態の現れでもあった。
額にあった剣を抜く。
刺されていた場所から血が流れていた。
「何故死なない?」
回復魔法保持者でも、タフではない。
脳は人間の急所である。
攻撃されれば意識は、消えるはずなのだ。
しかし、有里は、意識を保ち淡々としている。
明らかな異常な状態。
その理由が明らかになる。
突然、有里から炎が出現した。
場所は、傷口。
有里の体は、燃えているが傷一つない。
逆に癒えていた。
「....驚いた。」
ミシェルは、思わず声が出た。
人よりも長く生きたミシェルでも、珍しい代物。
有里から炎は消え、傷などが無かったかのようだった。
「ーー再生の炎」
「っ!!あれがですか!?」
ハイナーが反応する。
彼でさえ、驚く魔法。
異世界強者の中でも知れ渡る魔法が、目の前に存在してた。
「知ってるのね?」
「もちろんさ。おじさんの世界では有名な童話だ。
欠損を癒し、仲間を守り、敵を焼く――“大英雄マイスの妻”の神秘の炎」
有里は瞳を細めた。
その言葉に反応した。
「私の魔法知ってるのね」
「決定打にならないけどね〜」
2人は、距離を保ちながら会話する。
「あんた、さっきの嬢ちゃんじゃないな」
「あら、バレちゃった?」
笑みは冷たく、別人のものだった。
「少ししか会ってないが、その口調、笑み、そして、その体捌き....ナンバーズかい?」
ミシェルは、ナンバーズだと警戒をしている。
しかし、有里は首を横に振る。
「ナンバーズは知らないわよ。
ーー私はソウル。ちょっとこの子の体を譲って貰ったわ。」
有里改め、ソウルは解答をしめす。
「譲り受けた?....契約条件は?」
「貴方達の抹殺は、入ってないわよ?」
ソウルは、指を音無神社に向ける。
「この子といた娘。神楽坂無月を助けることを条件に契約としたわ」
ソウルの声が響く。
静寂の間が生まれた。
しかし、直ぐに静寂が崩れた。
風が吹き始めたのだ。
木が揺れ、静寂の時間はなくなる。
ミシェルの、重い唇が開く。
「....無月ちゃんは、死んだ。その契約はできないな」
ソウルから、微笑みが消えた。
「死んじゃったの?....まぁ、貴方達が下山しかけだったしそれもそうね」
ソウル自身は、あまり気にしていないようだった。
しかし、それは時間の問題だ。
契約を破られれば、契約自体が破棄になる。
それは、ソウルが存在し続けるのも出来なくなる。
ミシェルの口が開く。
「通してくれないかい?こっちも安全に帰りたいだ」
それは、提案だった。
しかし、ソウルからの返答は、殺気。
拒否だった。
ハイナーの剣をミシェルに向けた。
「い〜や〜。契約を壊してくれたんだもの。腹いせに貴方達を殺すわ」
ミシェルも、剣を向ける。
戦闘体勢だ。
「おじさん嫌なんだけど」
「ダメよ。ねぇオジ様。ーー私と踊りましょう?」
ソウルは、一瞬にして、ミシェルに近付き、剣を振り下ろす。
それに反応したミシェルは、剣を振り上げる。
「ダンスのお誘いありがたいけど
ーー丁重にお断りさせてもらうよ」
両者の、剣が重なり。
山の中に重音が鳴り響く。
2人の戦闘が始まった。




