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異世界防衛隊  作者: とも
さよなら高校。ようこそ異世界防衛隊へ。
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11/16

10.再び



「ーー終わりましたか?」


「....ハイナー君」


 ミシェルが、無月の最後を見送った後、

石段の方から声が聞こえる。


 髪は黒色。前髪半分を上げた青年顔のハイナーは、静かに石段に座り込んでいた。

彼は、2人の時間まで隠れていたのだ。

ミシェルは、立ち上がり、腰を曲げ感謝の意を伝える。


「ありがとう。無茶なことお願いしてしまって。」


「いいですよ。ミシェル様のお望みとあれば。」


青年は、髪を弄りながら、ミシェルに近づいていく。


「その少女がターゲットですか。」


 ハイナーは、遺体を見る。

両手両足欠損。

加えて、血を流しすぎたからか顔が青白い。

しかし、安らかな顔で瞼を閉じていた。

ミシェルが、最後まで介抱したのが伺える。


「ああ、無月ちゃんだよ。いい子だった。」


 ミシェルは、持参してきた、布を無月の遺体に被せる。

ハイナーは、鞘から剣を抜き、天高く掲げる。


「ーー良い旅路を」


 ハイナーもミシェルと同じ弔いを行う。

彼は、ミシェルの1番弟子だ。

ミシェルの心情、決意を知っている数少ない人物である。

その為、ハイナーもミシェルと同行時は必ず行う様にしていた。


「そっちもどうだった?」


「はい、下山中の少女も始末致しました。苦痛を与えてしまったことは申し訳ありません。」


 有里を発見した時は、常人離れした速さで山を駆け下っていた。異世界の上位に入っているだろうハイナーでも、苦痛なく始末するのは難しいかった。


「君の実力なら事情があると見える。

ーーありがとう、報告してくれて。」


 ミシェルも、ハイナーの実力を把握してる為、

深くは聞かなかった。

加えて、ミシェルの心情や決意に尊重し、行動してるだけ感謝しかない。


 だが、「しかし、」とミシェルは呟く。

彼は、遺体の方向を見た。

その顔は、沈ずんだ顔が見える。

太陽の方向と逆な為、影が顔を覆い、暗くなる。


「無月ちゃんには、悪いことをしてしまった」


 ミシェルは、負い目を感じていた。

彼女との約束を破ったからだ。

既に、顔が見られた時点で全員殺害予定だった。

約束も何も余地がなかったのだ。

ミシェルが攻撃し、逃亡する物の対処は、ハイナーが行う計画だった。


落ち込むミシェルに、ハイナーは、否定した。


「いいえ、ミシェル様。これは戦争です。

悠長な事は、ほどほどにするべきかと。

ーー我らは敵同士。死ぬのが早いか遅いかの2つです。....帰りましょう。我が国へ。」


ミシェルは、数秒真顔だったが微笑む。

その顔は、弟子の成長に喜んでいるようだった。


「ーー大人になったね。ハイナー」


「100年以上付き添っておりません」


「今度は、私に膝を出させてくれ」


「....いずれ」


 何気ない会話で、沈んだ心が浮く。

異世界人や戦争だとしても、人を殺す行為は、心が病むのは変わらない。

太陽も水平線に隠れつつある。

夜半の春が近い。


「じゃあ、帰ろっか」


「はっ」


 2人は、無月の遺体を置いて音無神社を後にする。

現在地は、富山県の県境側。

沿岸部まで50キロ。

一日移動すれば、一日で到着する距離である。


「出来れば明日の夜までに脱出したいもんだね〜」


「大丈夫です。ミシェル様と私の力があれば脱出できます。」


 周りは暗くなり始め、山下の街から光が灯り始める。

現代の科学品、電球による光が醸し出す幻想的な雰囲気を現し出す。

音無神社から見る夜景は、絶景と言える。

現代の芸術を見た2人は、見惚れていた。


「この世界の科学?は、凄いねぇ〜」


「私達の世界では不可能です。これだけの光を灯すことができるのは王宮内だけでしょう」


「ホント、羨ましい限りだよ」


 2人は、夜景の絶景と、それを作り出す日本の科学力を見た。

彼等の世界には、科学力が低い。

この世界レベルなら北欧諸国の中世レベル。

日本とは、天と地の差がある。

しかし、未知の魔法技術と突出した個人のおかげでこれまで勝利してきた。


ーーしかし、今となっては話が変わる。


「本当に、彼女を早く倒せて良かったよ」


「ええ。まったくです。」


 戦争が始まって98年。

魔法が発現する人が大半な日本。

魔法技術が着々と進化してきている。

それは、彼等の王国を追い越すレベルまで来ていた。


 それに比べて、ルーマー王国はどうだろうか。

魔法技術は、まだ此方の上。

しかし、科学力は、どうしても追いつけない。

日本の科学レベルまでに早くとも600年後。


「彼女は、間違いなく未来の脅威だった」


「生きていれば間違いなく王国を脅かしていました。....反撃まで行けたでしょう」


 ミシェルは、ハイナーの言葉に頷く。

科学とは、この人類の積み重なれた知識の体系だ。

魔法も同じ分類になるが、使用方法が違う。

魔法は、個人的技術である。

結局の所、武術の括りに近い体系だ。

個人による技術の差で、国力や生活レベルが変動してしまう。

しかし、科学は、外部的技術であり、人の力ではなく、外部的力を利用する物。

人ではなく、道具に特化した技術だ。

これにより、道具を生産できる限り国力や生活レベルは変動しない。


 技術の習得が早い魔法と遅い科学。

突出し個人の力だけでは、決定打にならない部分まで近づいて来ていた。


 その時に生まれたのか彼女神楽坂 無月だ。

稀に見る回復能力と武器の復元能力を併せ持った魔法“復元”。

彼女がいるだけで、戦場はひっくり返る。

ルーマー王国にとって、最重要ミッションだった。


「さぁ〜て、後一息頑張りますかぁ〜」


「新潟と石川付近で、瞬雷様と天変地異様が牽制して頂いております。その間に脱出しましょう」


 2人は、石段を下り終わり、山道に切り替わった。


ーーそこに人がいた。

夜と木の影で輪郭までしか見えない。

しかし、歩いて此方に来ていた。


「ーー来てるね」


「どうされますか?」


ミシェルは、少し考えたのちにハイナーに見た。


「避けて走ろう。まだバレてないはず。」


「承知致しました。」


「ーーもうバレてるわよ」


ミシェルの前に、声がした。


「っ!?ミシェル様!」


ミシェルは、すかさず剣を抜いて薙ぎ払う。


「ふっ!!」


その人は、後ろに避けた。

真紅の髪を靡き、顔が見えない。

しかし、ハイナーの唇が震えた。


「ーーバカな。」


ハイナーは、記憶している。

右足を断ち。

急所の心臓部を差して、命が消えた瞬間を。


「何故、貴様が生きている!!」


そこに居たのは、


「はぁ〜い。また合ったわね。」


──綾瀬有里。死んだ筈の女が立っていた。

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