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29、ナース喫茶

閲覧、評価、ブクマ等ありがとうございます。


m(_ _)m


励みにさせて頂いております。

 『ナース喫茶』


 メイド喫茶を知っている僕はこの案について相談役になった。

1回目の人生でTV等で紹介されて一応の概要を知っていたからだ。


 とあるクラスメイトが三花ちゃんのナース姿をもう一度見たいと言い、

三花ちゃんが条件として他の女子もナース姿ならと了承してくれた。


 ナース姿は決定としてどういう出し物にするかとの話し合いが行われ、

喫茶店を開いたらどうだと言う話になり、

僕が例としてメイド喫茶と言う物を教えて接客や言葉使いの数々を教えたらいつの間にか冒頭にも述べた通り

相談役になった。


 あくまでも聞き覚えである為つたなかったが、メイド喫茶の概念が無く素直に聞き入られた。


客を出迎える時は、


「お帰りなさいませ。ご主人様。」や「お帰りなさいませ。お嬢様。」


等聞きかじりであるが、それっぽいフレーズを思い出して「こう言ったセリフがあるよ。」

と助言した。


それを上手くナース喫茶とした時のフレーズを考える。


 「いらっしゃいませ。患者様」


 「お大事になさいませ。」


等々。


 後メニューも考える。

ジュース、コーヒー1杯300円。

ケーキは定番のイチゴのショートケーキ350円。

後はチーズケーキとかも。


 ケーキの事はクラスメイトにケーキ屋の人がいて安く入手する事が出来た。

ジュースやコーヒーも用意する。


 肝心のナース服は学校と相談して、三花ちゃんの芸能事務所並びに作業着屋に話を付けて女子学生分を購入し、男子学生は白衣を購入した。

三花ちゃんは事務所を通じオーダーメイドのナース服と白衣。

女子学生は一人一人採寸して注文したナース服。

男子学生は白衣。


 これらはまとめ買いなのと芸能事務所を通じて割安で購入出来た。

しかも学生負担額は半額で文化祭が終わればそのまま貰えると言う話も取り付けると、

皆大喜びだった。


 今回の目玉の三花ちゃんのナース服の扱いをクラスで相談した時、

プレミアム感を持たせる為に、ある一定の金額を購入してから個室で対応とした。

設定金額は3000円で5分間三花ちゃんと話せると言う事にした。


 念の為、お目付け役として2人の男子生徒が付きっ切りで三花ちゃんの護衛件ボディーガードをする事が決り、僕がその任に着く事になった。


 その後は素早く皆行動し、大道具が作製され三花ちゃん用の個室が作られ動線も念入りに計画された。


 すなわち、教室の片方の出入り口が入口となり、

中に入ると喫茶店となり3000円分を購入するとはれて三花ちゃんのいる個室に入る権利が貰え、

5分間だけとはいえ三花ちゃんと会話を出来てその後教室の出口に繋がると言う感じだ。


 無理に三花ちゃんと話さなくてもいい人も教室の出口から同じく退出される動線になっている。


 多分だけど『みかん』ちゃんと出会える機会を逃す事は出来ないと思う。

少なくとも僕は粘ると思う。


 ナース服や白衣、ジュースやコーヒー、ケーキ等準備が整い文化祭の日を待つだけとなり、

当日を迎えた。


 学校には模擬店として提出しており、『みかん』ちゃんのクラスと言う事で盛況だった。


 『ナース喫茶』


 その一言は謎に包まれており関心を呼び、あわよくばみかんちゃんのナース姿を拝めるだろうと客が並んだ。


 でも結果として『みかん』ちゃんの姿は見えず客の中にはがっかりする方もいたが、

ちゃんとメニュー表に


 『みかんちゃんが対応。1人5分まで。3000円』


 と書かれている。


 男子はほとんどが裏方に回りメニュー等の準備をしていた。

女子はその点忙しい。

接客、応対、会計。等々。


 宣伝の為、ナース姿で看板を持ち歩きながら校内を周り宣伝もしていた。

そのかいもありナース姿は新鮮に映り、客が足を運んでくれた。



 僕ともう一人、そして三花ちゃんは別室で待ち構えている。

しばらくして3000円分飲食したお客さんが出て、順番に並んでいると報告が上がった。

待ち構えていたナース姿の女子学生が、


 「お次の患者様どうぞ中にお入りください。」


と言い、客を招き入れた。


 そこで簡単に僕が注意事項を述べた。


 「まずは注意点を。ここで行われた事は他言無用でお願いします。」


 「おひとり様5分ですのでご了承の程お願い致します。」


 「では、スタート。」



 三花ちゃんの座っている椅子の横のテーブルに5分間用の砂時計が用意されており、

僕はスタートの合図と共にひっくり返した。


 砂時計の砂がさらさらと落ちていく。

大半の客は三花ちゃんと出会えた事により顔が紅潮してどぎまぎしている。


「ようこそいらっしゃいました。患者様はどこが悪いのでしょうか?」

客は返答を迷っていた。


「時間が勿体ないのでまずは脈を測りますね。」


と言い、三花ちゃんは客の手首を握り脈を測った。


「正常の様でありますね。なんか顔が真っ赤でありますが熱を測りましょう。」


 三花ちゃんが自分のおでこに手を当てて、客のおでこに手を当てる。


 「熱は無い様でございますね。」


 ここまででだいたい砂時計の半分を経過する。

後は客の希望通りに診察の真似事をするだけである。


 三花ちゃんは聴診器を付けている為、身体の前と後ろに聴診器を当てて診察をする。

その時、2、3事会話をして時間が過ぎて行った。


 「どこも以上ありませんね。お大事にどうぞ。」


三花ちゃんが締めの言葉を言う。


それと同時に砂時計の砂が落ちきる。

そして僕は最後に、


 「この件はご内密にお願いします。さあ、次の方の番が来ます。ご退席の程お願いします。」


と言い客の退出を促す。


 客は全員と言っていい程、三花ちゃんに出会えた事による嬉しさで固まっていたり、


「また来ますね。」


 とすがすがしい顔をしている人もいた。

いくにんはその言葉通りまた来て、三花ちゃんとの5分間を楽しんでいた。


 ケーキは家庭科室を借りて、なんとか売り切れをしのいでいた。

菓子類も販売されており、3000円以上飲食して5分間だけとは言え『みかん』ちゃんと会話出来る。

その為リピーターが増えて僕達のクラスの模擬店へは順番待ちの列が出来ていた。


 なんだかんだと売れ行き好評で、文化祭が終わろうとしていた。



 新聞部の人が来て『ナース喫茶』の記事を書いてくれる事を確約させて、

規定通り3000円以上飲食してもらい、『みかん』ちゃんと会ってインタビューをしていた。


他にもこの文化祭は地域交流も兼ねている為、一般にも公開しているので噂を聞きつけた地元TV局が取材に来ていた。


 そして『ナース喫茶』なる物が世間に知れ渡る事になり、流行る事になるのはまた別の話。


 三花ちゃんのおかげもあり僕達のクラスの模擬店は成功を収め大幅黒字だった。

そして簡単な打ち上げパーティーがもよおされクラス皆で成功を喜んだ。


 文化祭の思い出として、女子は各自のナース服。

男子は白衣を持ち帰って飾るなりなんなりと楽しんだらしい。


 そして一夜明け、後片づけをしている最中先生方がこの模擬店の大道具の保管提案をしてきた。

そして三花ちゃんに、


「また来年度にもして欲しい。」


と打診して来た。


 「その時に相談してみます。」


 と三花ちゃんは受け流していた。

この時は僕も三花ちゃんも3年間文化祭で『ナース喫茶』するとは夢にも思ってはおらず、

しかも代々受け継がれるとは思わなかった。


 その時は卒業生の『みかん』ちゃんの写真が飾られて、後日母校を取材訪問した際三花ちゃんは感慨深い顔をしていた。


 TVでもその時の映像が流され、スタジオで観客とVTRを観る三花ちゃんは恥ずかしがっていた。

1年生の時は小部屋にこもっていたが、2年生、3年生になると売り場に顔を見せるリップサービスをして

客達を喜ばせていた。

 その時の映像もTV局が取材に来ていて、ちょうど三花ちゃんが映っているシーンがあり、

他の女子生徒達と共に接客する場面が残されていた。


 その頃は結婚していて子供も授かり母として頑張っており、子供達も一緒の高校に入ると意気込んでいる。

そして子供達の夢が叶い『みかん』と僕の後輩になって、『ナース喫茶』を切り盛りしていた。


 すでにノウハウがたまりマニュアル化されていた為、さしたる苦労は無かったがどうしてもマンネリ化してしまい売り上げがとんとんの状態であったと聞く。


 特に僕は『ナース喫茶』の発案者として記録に残されており、先見の明があったとされている。


 三花ちゃんもマンネリを打破する為、可愛い子供の為自分が顔を出す気でいる様で、

既にが学校側と相談してシークレットゲストとして文化祭に参加する気でいた。


 それに対して僕は目立たない様に一般客として訪れていたが、

子供の同級生に見つかり、


 「考案者の先輩が来た。」


 と歓迎された。


 一応僕も規定の額まで飲食して、個室へ入る権利を得た。


 中に入るとナース服と白衣を着た三花ちゃんが聴診器を持って椅子に座っていた。


 『懐かしい光景だ・・・。』


 感慨にふけっていると、注意書きを読まれた。


 「・・・スタート。」


 砂時計がひっくり返され砂が落ちていく。


 「いかがなさいましたか?」


 三花ちゃんが聞いてくる。


 「そうだね。熱病にかかっていてね。」


 「まあ、大変おでこを出して下さい。」


 三花ちゃんは自分のおでこに手を当てて、僕のおでこに触れてきた。


 「いや~、妻が好きで好きで堪らない病なんだ。」


 「まあ、よほど奥様の事が好きなのでございますね。うらやましいでありますわ。」


 三花ちゃんがはにかんで会話を続ける。


 「そういえばわたくしも夫が好きで好きでたまらないでありますのよ。」


 僕と三花ちゃんで言い合っていると見張りの1人が、


 「ちょっと、ちょっと。お父様。お母様。2人の世界に入らないでよ。」


 僕達の子供からストップがかかり、2人の世界が引き戻される。


 「まだ時間はあるだろう?」


 「そうよ、そうよ。」


 僕と三花ちゃんが抗議の声を上げる。

たしかに砂時計の砂はまだ落ちきっていない。


「確かにそうだけど、そういうのは家で2人きりの時にしてよね。」


 子供が恥ずかしがって注意してくる。

そうは言うがせっかくの5分間有効に使わなければならない。


 「時間が勿体無いから続きをするよ。」


 僕が宣言すると同時に続きをした。


 「では服をまくって下さい。」


 三花ちゃんが聴診器を当ててくる。ひんやりとした感触で、背中も向ける様に指示される。


 「少し鼓動が早い様に見受けられますね。」


 「愛する妻と子供に囲まれて緊張しているんだろうね。」


 僕はとっさに言った。


 砂時計の砂が落ちきったが、さっきのごたごたで時間が無駄になったので1分間のロスタイムを貰った。


 僕は代わりに三花ちゃんのおでこに手を当てる。

本来は禁止行為なのだが、僕達は夫婦なので大目に見られて暖かい目で子供に見られていた。


 「雄蔵さん、子供の前で恥ずかしいわ。」


 三花ちゃんが言うのもお構いなく僕は、


 「照れている三花ちゃんはとても可愛いよ。」


 等、言葉を交わした。


 見張りの子供達は余りの2人の甘い世界の為、顔を紅潮させており収まる為少々時間が掛かった。


 「お大事にどうぞ。」


 僕は三花ちゃん並びにナース姿の女子生徒達に見送られて個室を出た。


 ふと教室を見回すと三花ちゃんが来ていると言う事もあり、大盛況の様であった。

教室の入口には長蛇の列が出来ており、僕達の現役時代の勢いがある様に見受けられた。

僕は邪魔したらまずいので別の教室の出し物を見に行った。



 帰宅すると子供から一言、


 「仲が良いのはわかるけど、こちらまで恥ずかしくなる事は止めて欲しいな。」


 「別にいいじゃないか。

5分間の自由時間の使い道なんだから。

それに別にやましい事はしていないぞ?」


 「そうよ、そうよ。」


 三花ちゃんも賛同してくれる。


 「お父様とお母様が来てくれたおかげで売り上げが伸びて万々歳だったよ。」


 「お疲れさん。」


 「久しぶりに母校に行き『ナース喫茶』に参加したけど、代々受け継がれているのね。」


三花ちゃんは感慨深そうにつぶやいた。


 「そりゃあ、あの伝説の『みかん』ちゃんが参加していた出し物だからね。

それにあやかろうと数々の先輩が苦心していたらしいよ。

でも自分は『みかん』の子供と言うアドバンテージがあるからね。

お母様の参加許可を取るのが大変かと思ったけど、思いのほか上手くいって良かったよ。」


 子供が三花ちゃんに対して言う。


 「お父様の事も立案者として名前は知られているから見に来てくれてありがとうね。」


 僕はただ顔を見せただけだが、本当に頑張ったのは三花ちゃんだ。

10数年ぶりに参加して褒められて、まんざらでもない顔をしていた。


 後日校内新聞にでかでかと、

『あの伝説のみかんちゃん。登場!』

等見だしと三花ちゃんの写真が掲載されていたのを持って来てくれた。

校内新聞だから持ち出し等心配したが、コピー機の発達で希望者に新聞が配られたようである。


 記事を見てみると、三花ちゃんの10数年ぶりの文化祭参加について意欲や抱負、

思い出話等インタビュー形式で書かれていた。

大事に原版をスキャンしてPCにデータ化して保存して、ファイリングしている。


 子供からは来年度も三花ちゃんの『ナース喫茶』参加が望まれた。

三花ちゃん本人は都合が付けばと言っていたが、はた目から見ると乗り気なのがよくわかった。


 「お母様、ありがとうございます。期待しています。」


 と返答があり、来年度の文化祭への闘志を抱いていた。



 月日は流れ、子供達のクラスは2年生、3年生共に『ナース喫茶』をして、

三花ちゃんは応援に駆け付けていた。


 そんなこんなで三花ちゃんが登場すると言う噂が出て『ナース喫茶』は大盛況に幕を閉じた。

そして子供の1人が卒業した数年後、更に子供が「同じ母校が良い。」と言う事で入学して、

『ナース喫茶』の伝統を引き継いだ。


 三花ちゃんは忙しい中、子供のクラスメイト達からの要望も多く参加した。

僕は客として訪れたりして僕達の当時の様子から色々と変革された内容。

特にメニュー表の種類の多さに驚いた。


 ちなみに僕達の頃は三花ちゃんの芸能事務所や学校を通じてナース服を割安で購入していたが、

今は宣伝効果も見込めると言う事で色々なデザインの中から選択出来る様になり、

学校にも『看護科』と言うのが新設されて業者から卸して貰っている。

 いずれは『介護学科』と言う話も出ている。


 忘れてはいけないのは規模も大きくなり、

学校の文化祭の目玉となった為昔は教室の1部屋と家庭科室を利用していたけど、

今は体育館の半分程のスペースで家庭科室では間に合わず食堂のキッチンも間借りしては調理したり、

卒業生の務めている製菓店からの差し入れなど、あらゆるコネを使い切り盛りしていた。


 規模が大きくなり、売り上げが多くなるのはいい。

だけど僕は三花ちゃんはただ1人だけしかいなく、以前にもまして長蛇の列が出来ると言う事が心配だ。

物価が上がり、三花ちゃんと会える値段を割り高にした物の本人に会えると言う効果の為、

それでも客が多い。


 単純計算で1人5分で1時間12人、休憩なく対応しても10時頃から三花ちゃんの所に並び始め17時頃終わるので84人くらいしか対応出来ない。

 苦肉の策として、三花ちゃんにどうしても会えない場合はサインが渡された。

『みかん』のサインは珍重され、心苦しい事に今でも高値で出回っているらしい。

三花ちゃんは自分のサインが売買されてメシの種にされているのが気に食わない。

当然僕も同感である。

一時シリアル番号制にして完全受注販売しようと言う話も持ち上がった。

と言うより、事務所社長に進言した。


 『このままでは、事務所に入るはずのお金が不当に転売者に流れるから考えたほうが良いかと思います。』

これには事務所社長も憤慨していた。


 「ちなみにコンサートチケットは個別認証出来る様にして、転売出来ない様にすることがかんようかと思います。」


 僕は将来を見越して進言した。

後日、事務所社長は他の芸能界事務所社長と会合して所属タレントのサインやコンサートチケット、生写真等の転売防止について話合われた。


 以前からそういう転売問題に頭を悩ませていた各芸能事務所は天啓を得たりとした顔だったらしい。


なんにせよ三花ちゃんの為にも僕は色々と苦心をした。

挿絵(By みてみん)

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