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21、確執

閲覧、評価、ブックマーク等ありがとうございます。

m(_ _)m


励みにしております。

 しばらくして、三花ちゃん主演作品の紹介がTVでなされ相手役の僕がその時紹介された。

『みかん』初主演作品の相手役として抜擢された経緯が発表されて封切りの日時が決まり朝からワイドショーで特集が組まれた。


 三花ちゃんと学校に登校すると、先生方を始め多くの生徒達に囲まれた。


 「TVで観たぞ。夫婦そろっての出演おめでとう。公開楽しみにしてるぞ。」


 生徒の1人が冗談混じりで言ってきた。


 「ありがとう。楽しみにしてよ。」


 「ありがとうございます。楽しみにしていて下さいませ。」


 僕と三花ちゃんが答える。


 「いつの間に撮影したんだ?見学に行きたかったな。」


 「そうだ。そうだ。」


 生徒の1人が言うと周りの生徒達も賛同していた。


 「一応、事前に報告していたはずだけど・・・。」


 僕が言うと、先生方は納得した顔をしていた。

確かにしばらく学校を休むと言う報告を受けていたなと。


 「でもすごいよな。なみいるプロの俳優を押しのけ、三花ちゃんの相手役。しかも準主役に抜擢されるなんてな。」


 「そう言えば、三花ちゃんはともかく雄蔵君は演技の練習でもしていたのかい?」


 痛い所をついてきた。

まさか、『前世でみかんをしていました。』なんて言えるわけないからな・・・。


 僕はお茶を濁して返答した。


 「本番前に三花ちゃんに特訓してもらったんだ。おかげでなんとかうまくいったよ。」


 「ふーん。そうなんだ。」


 なんだかんだ話している内に予鈴がなり、僕と三花ちゃんは教室に入った。

そして朝礼が始まり担任の先生から告げた。


 「今朝のワイドショーで観たと思うけど、鏡原さん主演の作品の封切りが決定しました。

つきましては希望者には割引きチケットを渡します。せっかくだからみかんさん本人に渡して貰おうかしらね。希望者の方は挙手して下さい。」


 「「「はい。はい。は~い。」」」


 ほとんどの生徒が挙手した。

一応全校生徒、先生方分へのチケットが準備されていて、僕のクラスは三花ちゃん本人が配ると言う役得があった為、皆喜んでいた。


 さらにしばらくして映画公開初日、舞台挨拶が行われた。

後日校内放送において特別に舞台挨拶の録音が流されて僕も含め皆喜んでいた。


三花ちゃんの初主演の映画は大ヒットしてとても嬉しい。

でも困った事態に陥った。

三花ちゃんだけでなく僕へのファンの応援はまだしも、三花ちゃんファンのやっかみがあるらしいとの事だった。

事務所に応援はがきはまだしも1素人の僕が三花ちゃんと共演。しかもラストはキスするシーンで嫉妬がまじったはがきが送られてきているらしい。

フィクションの世界にも関わらず、三花ちゃんは僕の物と言うファンもいらっしゃるみたいで、僕自身の存在が疎ましく思うらしい。

まあ、一過性であると信じていたいがこの先面倒事に巻き込まれなければいいのだけど・・・。


 映画のヒットを機に三花ちゃんのTV番組への露出がより増えドラマ化する話が浮上した。

映画版で泣く泣くカットしたシーンや時間の都合上短縮された場面等、じっくりと流す方針が決まった。

 既に撮りためている為、問題なかったが大手事務所の意向により新規に撮影されたシーンもあるらしい。

内容も三角関係、四角関係にしてハラハラドキドキの展開が待ち構えている。

より話に深みを持たせようとしての内容だが、僕にとっては単なるごり押しでしかないと思った。


 懸案事項の僕の出番が無いかと危惧していたが杞憂で終わったみたいで安心した。

再度僕も撮影に混じる事になり、三花ちゃんと共に現場入りをした。


 僕と三花ちゃんの関係を公にはしていないので単なる共演者と言う立ち振る舞いを2人で相談してふるまっていた。


 僕と三花ちゃんのそばに今回のごり押し俳優がやってきた。


 「これはみかんさん、よろしくお願いしますよ。そんな一般人と共にしてないで僕と共に行動しませんか?」


 僕は不快感を醸し出したが、


 「君はしょせん素人。僕みたいなベテランとはわけが違うのだよ。

みかんさんどうだい?撮影後二人で食事でも。」


 三花ちゃん本人は顔には出さないが、僕の中の三花ちゃんは不快感でいっぱいの様だった。


 「自己紹介が遅れました。僕は木下悟郎。今後ともお見知りおきを。」


 この時は偶然の出会いだったけど、今後僕の精神をすり減らす事になるとは夢にも思いもよらなかった。

確かこの俳優の事はおぼろげながら知っている。

のちに一部では共演者キラーと呼ばれており、良くも悪くも実績を残した俳優であった事を。


 しばらくして監督始め、三花ちゃんの事務所社長がこちらへ来た。


 「どうしたんだい?」


 「お久しぶりです。監督。社長。」


 監督はドラマ版でも続投となり、社長と共に三花ちゃんに挨拶していた。


「みかんちゃん、お久しぶり。おかげ様で映画版は大ヒットしたよ。今回のドラマ版も宜しく頼むよ。

雄蔵君も頼んだからね。」


 「「こちらこそ、宜しくお願いします!」」


 僕と三花ちゃんは同時に返答してお辞儀した。


 「相変わらず仲良いね。じゃあ頼んだよ。」


 僕と三花ちゃんが挨拶していると、くだんの木下悟郎さんは話に割り込んできた。


 「やあ、監督さん、この木下悟郎が来たからにはドラマ版も大ヒット間違いなし!

大船に乗った気でいて下さい。」


 監督も三花ちゃんの所属社長も冷めた目を向けていたが、悦に入っているらしく気付く事は無かった。


 「では、僕はこれで。みかんちゃん、後で色良い返事期待してるよ。またね!」


 木下悟郎さんは僕達の前から自分の控え場所に戻っていった。


 「一体どうしたんだい?」


 「ええ、実は・・・。」


 と三花ちゃんが答えると、


 「気にしなくても平気だよ。彼にはかかわらないほうがいいよ。あまりいい評判じゃないからね。

でも演技はうまいけどね。」



 ドラマ版の追加シーンの本読みが始まる。

台本を事前に渡されているから中身は知っているが、

話に深みを持たせる為に三花ちゃん扮する『高見原由香』にほれ込んで、

由香の「ごろうくんが好き。」と言う、僕扮する『猪瀬五郎』に対してセリフで勘違いをして、

騒動を巻き起こす役の木下悟郎扮する『木下悟郎』は本読みの間、ちらっちらっと周りの演者たちを見るふりをして三花ちゃんを見ていた。


 なぜ気付いたかと言うと、三花ちゃんと僕は木下悟郎さんは向かい側の席で座っており、

僕の中の三花ちゃんが視線に気付き僕に忠告してくれた為、

木下悟郎さんの三花ちゃんに対する盗み見がわかった。

僕はそっと三花ちゃんに触れると思念波で盗み見されている旨を伝えると、

当の三花ちゃんも中にいる僕が視線に気付いて知っていたらしい。


確かに気持ちはわからんでも無いとは思うが嫌な心境であり、

僕含め三花ちゃんと中の2人の4人の木下悟郎さんへの評価はだだ下がりであった。


 三花ちゃんが木下さんの顔を見ると、彼はにやにやした顔をしていてまるで獲物を観察する様に舐めまわした視線を送って来ていた。

心底嫌な気分だったが彼はベテラン俳優。対してこちらは素人。比べる程も無く力の差がありすぎた。



 撮影が始まり順調に進められいく。

気がかりは木下さんの事だ。

彼は撮影の合間、合間に三花ちゃんに近寄りアプローチを掛けてくる。

はては脚本を変えようとして監督と何度も口論したりしていた。


 結末を変える。すなわち僕演じる猪瀬五郎とではなく、自分演じる木下悟郎が結ばれる内容にして、

映画版とドラマ版との差異を付けようと進言している。


 「みかんちゃんはどう思う?木下君の意見に賛成かい?」


 監督が三花ちゃんに尋ねる。木下さんを見るとあくどい顔を浮かべていた。


 「私は今までのでいいと思います。」


 三花ちゃんが反対の意見を発すると、


 「みかんちゃんは僕と結ばれるのが嫌なんだね?

そんな素人と結ばれたいんだね?

僕と結ばれる結末にしたほうがいいと思うよ?」


 げびた表情を浮かべている木下さん。


 「なら僕の好きにさせてもらうよ。アドリブを交えるからね。楽しみにしてね。」


 と言い残しこの場を去っていった。


 「やれやれ。困ったもんだな。」


 監督は言う。


 「では次のシーンの撮影に入るよ。」


 このシーンは三花ちゃん演じる高見原由香に木下悟郎さん演じる木下悟郎が言い寄るカット。


 「なあ、由香ちゃん。君は以前『ごろうくんが好き。』といっていただろう?僕も君の事が好きなんだ。

付き合って欲しい。」


 迫真の演技で木下さんが三花ちゃんに迫る。


 「嫌です。私が好きなのはあなたではありません。」


 言い寄ってくるのを振りほどきながら返答する。


 「嫌よ、嫌よもスキの内てっね。そのうち僕にぞっこんになるよ~。」


 馴れ馴れしく肩に手をまわして由香ちゃんに迫ってくる。


 「嫌だと言うなら仕方がない。こうなったら実力行使だ。でも今日の所はあきらめてあげるよ。

君が僕になびくのは決定事項だからね。ふは~はっはっは。」


 と言いひとまず去っていく。


「は~い!カット!」


 カットの合図がなされ、すぐさま映像チェックが入る。


 「いや~2人共迫真の演技だったよ。この次も頼むよ。」


 とスタッフは言う。


 でも僕にとっては心底嫌がっていたのは手に取る様に分かった。


 次のカットが撮影される。


 「やあ、由香ちゅあ~ん。この前はつれない返事だったけど、今度こそ僕と付き合わないか~い。」


 悟郎が廊下で由香を見つけ接近してくると、由香は


 「ひっ!」


 と言いおびえの表情を浮かべる。


 「何をそんなにおびえているんだい?こう見えても僕は女生徒達から人気があってね~。こういう僕に告白されるのを光栄に思わないといけないよ~?」


 悟郎は由香に拒絶されているにもかかわらずなおも言葉を続けた。


 「紳士的なのも今の内だよ?今度は実力行使でいくよ?」


 と言い、空き教室に連れ込もうとする。

監督並びにスタッフ、共演者たちが台本に無い行動に驚いたが撮影が続けられる。


 「いやっ!。やめて下さい。お願いします。誰か助けて~。」


 由香が抵抗するも空き教室に連れ込まれ、控えていた悟郎の仲間達に羽交い絞めにされた。


 「へっ、へっ、へっ。上玉じゃねえか。おとなしくしていろよ?」


 仲間の1人が言う。


 「そこで何をしているんだ!嫌がっているじゃないか。」


 僕はたまらずそこに入り込みアドリブで演技をこなし、由香事三花ちゃんを助ける。


 「「「「覚えてやがれ~。」」」」


 と言い残し、悟郎以下仲間は去っていく。


 「大丈夫だったかい?由香ちゃん。」


 「怖かったわ。ありがとう五郎君。」


 僕は震える三花ちゃんの手を取り教室を出て廊下を歩く。


 「は~い!カット」


 「いや~、今回も迫真の演技。皆作品を良くしようとしているのがひしひしと伝わってくるよ。」


 スポンサーの1人が言う。


 だが、監督含め共演者達は複雑な表情を浮かべていた。

 三花ちゃんの所属事務所社長は怒りを抑えきれない様で、監督に詰め寄った。


 「どうして早くカットしなかったんだ?」


 「いや~あっけにとられてね。でもいい演技だったから結果としては成功だね。」


 監督が答える。

後日ドラマ版が放映された時、三花ちゃんのおびえる表情に新しい世界を見つけたと言うファンが続出した。

そして、木下悟郎さんは新しい世界を見つけてくれた神となり、ファンも増えた。


僕もファンが出来た事は出来たが、三花ちゃんや木下さんには足元にも及ばなかった。

が、一部では僕の詳細が知りたいと言うファンもいて困った状態になった。


 

 その後も追加シーンが撮影され、何とか撮り終えた。

この作品は後世色々な俳優、女優が出演し、何度もリメイクされた人気シリーズとなった。



 「みかんちゃん元気かい?この前の撮影ではアドリブごめんね。」


 木下さんが三花ちゃんににこやかに話しかけてくる。

今はドラマ版撮影終了後の打ち上げパーティーの席上。

乾杯をしてジュースを飲んでいる僕と三花ちゃん。

そしてスタッフの方々についでいる所だった。


 「で、この前の返事がどうだい?」


と木下さんが言ってくる。

訳が分からないと三花ちゃんが、


 「この前の返事とは何の事でしょうか?」


 と返答する。


 「いやだな~。僕と付き合わないかと言う事だよ。僕は君が気にいったんだ。」


 そばでやり取りを聴いていた僕は『ぬけぬけと』と苦々しく思っていたが、

他の共演者達も三花ちゃんの返答が気になるようで付近がシ~ンとなった。


 「それは何度もお断りしたはずですが。」


三花ちゃんは木下さんに言う。

が、にこやかな顔を浮かべながら、


 「それは誰に対してかな?まさかこの僕に対してかい?」


と木下さんがのたまう。


 「それは木下さんに対してです。」


三花ちゃんがきっぱりと宣言する。


 「お高くとまってるのも時間の問題だよ。君が何と言おうと僕はみかんちゃんの事あきらめてないからね。」




 まさにその通りの対応をしてきた。

すなわち、三花ちゃんと木下さんのTVでの共演が多くなってきた。

家に番組収録から帰って愚痴をこぼすのを見て、ますます僕は三花ちゃんに対し心配になってくる。


 『心労がたたなければいいのだけれどな・・・。』


まさにこの時は夢にも思っていなかった。

木下さんが『みかん』の通う学校。

すなわち僕と三花ちゃんが通う中学校の取材に来るとは・・・。

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