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私の気持ち ②


遠夜は言いながら内側が銀色に鈍く輝くカップ式、スープパスタという商品の中に湯気の立つ水筒の中身を入れる


ほんの暫く放置ーーー


興味津々の私の目の前で、携帯式の箸でクルクルクル〜っと幾度も何回転も混ぜた後再びカップの蓋を閉める


「出来上がりを待ってる間、コイツも食わねーか?」


遠夜は鮮やかなイエローの小箱をぱりぱりっと小さな音をたてて開封すると箱の中の2つのパッケージの内1つを私にくれた


「……」



どうしよう…… 『どうしよう』


断ったら遠夜が気を悪くしないかしら……


テレビCMで見る事はあっても正直食べるのは初めてで凄く勇気が要った


それに既に歯を磨いてしまってるし、おまけにお食事は9時以降は食べちゃだめ!って言われてたけれど……



「チョコ味だから多分女の子の口に馴染むと思う」


遠夜はそう言いながら『大丈夫だよ?』という顔をしながら袋の中に入っていた2本の内1本、先ず自分が食べて見せた


思い切って、エイッとパクッと口に入れる


「美味しい!!」


「だろ?」


「どうせ『9時以降は食べちゃいけません』 『歯を磨いた後は食べないで』


なんて〜絶対大人に言われてると思うけれどさ? なんでも”特例”ってあるし?


今夜位は特別中の特別、突如発生したゲーム内の隠しイベントって事でいーだろ?

別に決まりを守らなくたって高い塀の牢屋、警察の留置所とか刑務所には入れられないさ」




きゃーーーーー全部見抜かれてる〜〜〜! 思わず真っ赤になって遠夜を見る


なんで丸ごと私の考えてることがわかるのよ?!



みっともなくオロオロバタバタ大慌てに慌てる様子に、遠夜はニヤァ〜〜ッッとチェシャ猫みたくウッシッシ笑い、ジョークたっぷりに言葉を返す



「きゃーーもぅ〜〜〜!遠夜のバカ!」


「やっぱり図星?」


そんなたわいない小さな喧嘩を2人でしているうちにスープは仕上がりホクホク出来上がる



「ほらよ」


遠夜が最後に箸で中をくるんと一混ぜ、薄い紙蓋と箸を取り除いた容器をそぉーーっとゆっくり、絶対に熱い中身を零さないよう慎重過ぎる取り扱いでベッドの中の私に手渡してくれた


更に、持つ姿勢が安定してから頃合いを見、シリコンで出来たスプーンを差し出してくれた


もーーーーーどこまでも遠夜は細やかに気がつく男子だ


絶妙な配慮にトゥンクと心がはね、胸が高鳴る



ーーー後日、遠夜と過ごした奇跡の夜を振り返っても、きっとあの夜食のやり取りは、不安や恐怖を取り除く為に敢えて仕掛けた事だったと思う




〜何故って


私の、闇や魔にガタガタどうしようもなく怯える気をそらす為、健やかな心の健康と現実感を取り戻させる為


実際、カップのクラムチャウダーは涙が出そうな程美味しかった


あっと言う間にペロリと全部平らげ、我にかえると私ったらなんて卑しん坊なんだと自分でも頬がカッと熱くなった



「後〜これ飲め」


「?」


遠夜は良い香りのお茶?の入ったカップを差し出した



「来る時、コンビニで買って来たカフェインレスのハーブティー 〜ホント今ってなんでもあんのな?

まさかカミツレティーまであるとは思わんかったぜ


『大地のリンゴ』って言われる花の甘い香りに蜂蜜エキスがブレンドされた奴


スペインでハーブティの中では最もよく飲まれてるタイプらしいぞ?


カミツレティーは俺も好きな奴だ、ほっこり癒されて安心するよな〜? なんか……」




私は水筒カップに煎れて貰ったほんのりハニーの香りが楽しめる香しいハーブティーをコクンと飲む


甘い安らかな香り、確かに心が穏やかになる


「歯とか気になるだろ?

家で一度沸騰させた湯だから、これもどうだ?」


全部飲みきると、別カップに気を利かせあらかじめ冷ましておいた少量の湯〜


ほんの一口分の入った、飲み頃の柔らかな白湯へとカップ交換、最後にサラリ手渡してくれた


だからありがたくいただいた




何から何までーー さりげなく遠夜が私の為にしてくれた



たまらない優しさ

食べて飲んだもので、体の中も心の中もホッコリと温かくなって幸せな気分を満喫できた


だからスッカリ安心しきって、恐怖が払拭された再度のもう一度の眠りにつけたのだった



「ねぇ……遠夜 もう1つだけ『我が儘』ーーーーーいい?」



「いいよ? なんでもねだれ」


「ーーー眠るまで 手を握ってて欲しいの……」


「ああ、そんなのでいいのか?無欲だな」



「朝まではーーーそんな風に言ってくれても居てって言わないから

実はおうちのこと心配だし、凄く忙しいんでしょ?」


「……」



だって遠夜は家族、幼い妹や弟が居るんだから


早朝〜彼等の面倒を見る為大急ぎで家に帰り、朝ご飯とかお着替えやお支度とかしなければならないだろう



そうだーーー遠夜は私だけのものではないのだ


思わずポロッとひとつぶの涙が頬を伝う


どうしようも無い事だった




「うーん……」


遠夜はちょっと考え込むと、けど余りにも当たり前のように言った


「んじゃ帰る時に必ずお前に挨拶するわ 〜ちょっと朝早くなるけど?


そんままグッスリ眠って1日休んでもいーし、まぁ起きた時の気分、体調の回復加減による出たとこ勝負だな


とにかく無理すんな イイナわかったか」


「うっん……」


さも当たり前の答え『お前は大丈夫だよ』ーーー……


必ずの立ち直りを確信してくれる、そんな言外の意思が滲む力強い声



「俺はお前を信じてる、だから早く元気になれーー……

何がなんでも、わかったな?」



『遠夜のことが好き、大好き……』



ーーーーーあなたのことが世界で1番好き




心の中で密やかに呟いた後、ワザと明るい声を出す



「だって私達は永遠の、生涯最大最強の最上級のライバルだものね、絶対に、早く元気になるからね」


胸の奥がズキズキ、ナイフで刺されたみたく酷く痛く苦痛だった事は強引に無視した




ーーーと


あれ?


じぃーーっと真正面から見つめる綺麗な顔がほんの少し、微かに歪んだ気がした


〜でも、きっと見間違いだったと思う



『部屋が仄暗いから都合よく錯覚しただけなんだろう』




私はーー…

自分にどこまでも甘く考えそうになる精神、狡くて弱い気持ちを力ずくで排除全否定した



遠夜が私の事を、『ひとりの女の子』として好きな訳などあるはずが無い



そう、極めて優しく思いやりがあるから、症候群の体の事と、入水自殺しそうになった哀れな女の子の事が性格的に見捨てられないだけ!!


そんな彼に、決して図々しく都合良く縋りついてはいけないのだ


甘味とほろ苦い気持ちを嚙み締める



『私の生涯、たったひとりの、彼にとっても最強の最高の永遠のライバルじゃないの』


それはとても誇らしい有り難く凄く名誉なことでしょ?!


なのにーーーそれがどうしてこんなに悲しいの?



苦しくて苦しくってたまらないの……??



自分の気持ちが信じられないしわからない


再び今にもワッと泣きそうになる、壊れそうな心を強く奮い立たせ弱い精神に渇を入れた


必死に明るく綺麗な笑いを頬に貼り付ける



「これからもよろしくね♡」


「……おうよ♪

これからも頑張ろーーーな、お互いにさ」


「うん♪」



片付けの終わった遠夜は再び何事もなく静かにそのまま、もう一度心臓まで包み込むような甘やかな手の力で


けど何故か恋人繋ぎで、キュッと手を握ってくれた



ぁあだめーーー目がトロンとしてきた 


彼の顔が霞んでくる


もっともっと彼の顔をずぅっと見ていたいのに……







ねぇ……


優しいーーー……


優しい遠夜



言えなかったけれど、私はあなたのことが世界で1番大好きです





そのままーー……ぼぅっと眠りについて



しばらくたったウツラウツラの中ーーー

遠夜の声が眠りから私を呼び覚ました


今度は安らかな微睡みの中でフンワリ心地よいあたたかな声を聞く



「俺今から家に帰るからな?

……まだ早いからゆっくり寝てろ」



ガバッと起き上がろうとする体を、遠夜は柔らかな微笑み1つで制する


鼓膜に甘やかな蕩ける声が伝わる



「ムリすんな」


『ーー……うん」



遠夜はずっと握っていてくれた手をそっと再び優しく姿勢を変えて包み込むと


「兎に角、無理はすんなよ?

約束の英語塾は今日は一緒に行こう

夕方迎えに来るから」


彼はにこっっっと心の奥まで染み入るような笑みを浮かべると、音も無く部屋から出て行った


深夜の使用済み品を全部入れた、エコバックも腕にぶら下げていた


どこまでも隙が無く格好良く用意周到、居た痕跡は既に何もない


「立つ鳥跡を濁さず」過ぎるソツがなさに、ちょっと恨めしく感じた



時間になり私は「支度をして」

制服を着てスクールバッグを下げ、自室からエレベーターで階下に降りてゆくとママもパパもメイドさん達も揃ってギョッとした顔で私を迎えた



「カレンちゃんもういいの?」


「今日だけは学校に行くーー……

行かないと、もぅ駄目になりそうだから」


「「ーーーーー」」


私はにこやかな顔で朝食の席につく






〜自分に厳しくしなきゃ


だって、遠夜があんなにも私の為に尽力して頑張ってくれたんだから、絶対に私もそれにこたえたかった



足下がぐじゅぐじゅすくみそうな気持ちも、彼がいるんだから振り払い立ち上がるべきだ




ーーー永遠の生涯最高の


宿命の


人生最高最上級のライバル



遠夜の前に私も誇らしく、しっかり凜と立ちたかったのだ



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