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私の夜の出来事 ④


遠夜は凄い 本当に凄い


私は遠夜にお礼を言いたくてーー……




なんだけれど?


さっきから又ひっくひっくとしゃくり上げる涙と嗚咽が始まってしまってどうしようも無くて


それでも体を起こそうとモゾモゾ頑張っていたら、素早く察した遠夜がさり気なく手伝ってくれた




ーーーー……恥ずかしいやら申し訳ないやら


全く使えない自分の不甲斐なさっぷりが忌々しくて 悔しかった




おまけにパッチリ本当に瞼が開き、起きた途端感じた事は禄に未だ動けない事


身体中カチコチガチガチなのが、自分でも死ぬ程惨めだった



〜遠夜はそんな散々な私をどう思うだろう?


きっと内心軽蔑して「あ〜ぁ」

すっごくガッカリしているに決まってる!!



彼は優しいし賢いから、口には出さないだけで、ホント、ワッと号泣しそうに凄く格好悪かった




だけど流石に、惨めったらしい様子が傍目にも哀れに感じたんだろう


遠夜は側の椅子に畳んで置いておいた、クリスマス祝いにママにプレゼントで貰ったお気に入りカシミヤ大判ストールを手に取り私に掛けてくれたのだ。



エアリーな宝物をタップリ大きく広げてーーーー


甘く優しく柔らかに、蕩けそうに肩を覆い尽くすそれは、体をきめ細やかにそよそよ軽くくすぐった



え?


『!温かいわ……!!』


情けないことに、身に掛けられた温かな温もりを感じて初めて私は知った


こんなにも身体が冷え切りしかも細かく震えていただなんて自分でもちっとも、重大なその事に、これっぽっちも気がついてはいなかったのだ



理解した途端、カチカチカチカチカチ……息をするのが困難、頭の中が真っ白になって辛くなる


身体の震えと同時に、奥歯までが細かい刻みで音を立てて鳴った


思わず不安に駆られてしまい、柔らかなストールをぎゅーーっと残らず手元の分をかき寄せる。


しょぼーんとつい腕にもグルグル幼児みたく巻いてしまう



ぎゅーーっとぎゅーーーーっとぎゅーーっと、まるで自分を守る鎧みたいに必死に体に巻き付ける



「ちょっといいか? 変なことはしないから安心しな」


「??ーーー??」


遠夜が突如、摩訶不思議なことを言い出した


ベッドに体を起こした私の目の前で、側に立っていた遠夜の目線が不意にグイッと落ちた



『ヒッ!』

再び驚いて、一切何も言えないでいる内、ひと繋ぎの動作で絨毯敷きの床に片膝を付く


全てが ”至極当然”ーーー

滑らかで緩やかで、極、自然な動きの中での出来事で。


フワフワなストールに包まる、凍える私の肩をスッポリ抱いたのだ


『!!』


『きゃーーーーーーーーーーーーッッ』



遠夜は、私をあやすように長い腕で緩やかに包み込むのだ。




肩事ーーー

ううん?

止まらない震え事、私をギューーーッと、しっかり抱き締めた



みっともないガタガタな震えが遠夜に全部伝わってしまうのが恥ずかしくって



ーーー悲しくって ひたすら辛くって



だけどやっぱり何も言わずそのまま〜私を


まるで宝物か何かのように大切に扱ってくれた


ーーー私……は…… 映画のヒロインーーープリンセス


素敵な騎士様や、頼れる王子様に守られるお姫様になったみたいな気がした



何の見返りも無く守られる、条件付きじゃ無い、下心もなにもない


ーーーー唯々純粋に向けられる愛情



フゥッと体から、ガチガチに強張る何かがストンと抜け落ちた



優しくーーー

背中にいつの間にか回された大きな掌からのリズム


ポン……ポン……ポン…… フワフワ心地よい柔らかなタップ



甘いたっぷりの、金の光を閉じ込めるハチミツみたいなとろとろの、とびきりの愛情のこもった仕草と言葉


「よく頑張ったーーーよく頑張った 偉いよカレンは


……ホント偉いよカレンは


君は俺なんかよりずっと強いよ 来るのが遅くなってゴメンな……ーーー……」



!!……そんな事絶対無い!



それどころか、あんな少し、ちょっぴりの変化でよくもまぁ異変に気がついたと思うんですけどッ!


恥ずかしいやら、何故かぷんぷん激しくムカついたやらで、体をビクリ、大きく振るわせた



……んだけど……


直ぐにひぃっくひぃっくひぃっくと、まるで赤ちゃんみたいな、泣きミソ泣き虫に再び逆戻りだったのが悔しくて悲しい。


もぅーーー果てしなく、どうしようも無い程格好悪いよ〜〜


プライドなんてボロボロ、取り返しがつかないくらいみっともなさすぎるよ、世の中の女の子は皆どうしてるの?!


ーーーこう言う時は一体全体どうしたらいいの?



ホントーーー……今の私、確実に世界一情けなすぎるもの




「カレンはよく頑張った」


なのに遠夜はーーー

そんなどうしようも無い、私の見苦しい弱さ情けなさを否定するのでは無くて


それどころか、どうしてなのか? 逆に「凄い凄い」と褒めるばかりだった




遠夜のばか


……ぁのぅそんな事言われると、カアっと照れちゃうん……だけれど



甘えたく……

なっちゃいそうになるんだけれど



流石におばかさんなドギマギが伝わったのか?


遠夜も軽く微かにおかしそうに笑った気がし、海辺でのあのハグみたいに彼の滑らかな頬が髪に無邪気に触れる



ドキーーーッと心臓が跳ねる


海岸での全身溢れんばかりの陽光に満ちた瞬間よりももっと胸がジリジリと熱く焦がれてしまう



こんなの絶対に体験したことなんか無いわよ


……遠夜のばかっっ!


それでついいつもの調子で反射的に強がってしまったのだ

ーーー私のバカ



今生まれたばかりの動揺を打ち消すように、私の腕も温かなストールの中から抜け出し殆ど無意識、抵抗もなく遠夜の広い肩に廻る



私は幸せすぎて

だけどもぅ言葉にする余裕も無くて……



だって遠夜は、元々学年の男子の中でも背が高い方なのにワザワザ、ベッドに休む私に合わせてあえて無理な体勢を取ってくれていたのだ


ーーー明らかな特別扱い

うんと姿勢を落とす彼に抱き締められたまま、情けなくコクコクと頷くばかり




何度も頷いて 頷いて


癒され甘く安らか、リラックス出来 ーーーー信じられない位に幸福で



大人が言うところの薔薇色の人生……



幸せって こんな輝く気分を云うのかしら?



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