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私の夜の出来事 ③


ぱちり ☆……




何時間経ったかわからない夜中、いきなり、私は突然目が覚めた





それでーーーーー 今何時?? なんて悠長に思う余裕なんて無く


急に、ベッドに横たわる体がガチッっと硬くなる




『!!ーーーー何か居る!』



ヒヤリと身体中の皮膚がそそけ立つ


毛穴という毛穴が引き締まりチリチリした




何かが私の事を ジーーーーーーっと、どこからか見ている!!



全身ブワッと冷たい嫌な汗がわき始めたのが自分でもわかった



目が覚めてるから当たり前の如くに目を、周囲を見ようと開けようとしたんだけれど出来ない!


恐くて、恐ろしくって、瞼が開かない


うそっっ!!


ーーーじゃッッさっきは開けたつもりでもそれは思い込みだった、ピタリ目を閉じていたって事かしら?!



ゾゾゾーーーっーーー 背骨がブルブル震える


目を開いたら最後、その途端、異形の何か悪い物が飛びかかり、確実にブスリ襲われる気がした


部屋にいるのが絶対に遠夜では無いことは何故かわかった


禍々しくおぞましい気配ーーーー……


ジーーーッと天井の上から、ベッドの上に横たわる私の体をベロベロなめ回すように見下ろしている、暗い気味の悪い視線を感じる




たすけてえんや


ッッっっ、ぇえええええーーーーーッッ〜!!〜〜ぇ、っちょーーーどういう〜ーこと?!



ちょっと待って、全然声が出ない!!


体が動かない!




!!!!!ーーーー…



怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い



とーーーー

何かがベッドの裾からソロリソロリと私の上に乗って来た



ずしりとゆっくりーーーゆっくり…… 静かに


ヒタヒタ体の上が隅から重くなる




ジワジワジワジワーーー


胸の方までおぞましい気配がゆるゆると上がってくる





毛穴がそそけ立つ 心拍数が一気に跳ね上がる


ドキドキドキドキ、バクバク強く脈打つ鼓動が止まらない



嫌ッッッ嫌ッッッ 嫌ッ嫌!!


助けて


ーーーーーーーーーー助けて遠夜ーーー!!!



ピクリとも体はやっぱり全然動かず、相変わらず瞼も開かず何も見えない


声だってーーーー 出ない



……だけど奇跡的に 運良くひゅぅ〜と1回だけ、喉から大きく音が出た



『助けて遠夜ーーーーー……!』


まるで聞こえたかのように遠夜は当たり前のようにスタスタ、部屋に静かに入って来た



見たわけじゃ無いから”そんな空気を感じて”、なんだけれども??


確かな彼の纏う”強い空気”




ーーー真っ直ぐな、微かな足音が聞き取れた


遠夜はホントに私を助けに来てくれた


!!


ーーー声が出ない


一瞬は大きく息が出たんだけれど、後から冷静になると確実にその程度でわかるはずなんか無い


どうしてわかったの?

謎としか言いようが無い



ただあの時私は心の中で声限りに叫んだ事は確かで、全くピクリとも動かない体でポロポロポロポロ泣いた……


怖くって辛くって悔しくって悲しくって涙だけを流しながら必死に必死に呼びかけた



入ってきた彼はシャーッとまずは室内のカーテンを開けたのち、ババッと、電気もつけず私のお布団を両手で持ち上げてバサバサバサ……



エッッッ

女の子に対してちょっと酷い!!


あんまりな強烈で大胆な行動に『ヒィッ』


意識が縮み上がった瞬間〜〜〜〜



ところが、あんなにあれ程怖くて怖くて、ガタガタ震えた胸の上に居座るおぞましき魔物の気配がシュッと跡形も無く、急に居なくなったのだ


同時に、天井から私を舐めるように見下ろす気味の悪い、気持ちの悪すぎる恐ろしい視線も一気に同時に消滅



彼が恐怖の元凶を振り落として、体を張って追っ払ってくれたのだ




信じられない行為にホッと安心してーーー

余りにも安心しすぎて


止めども無く、身体中の水分全部が涙になって流れ出たみたいに益々、新しい涙が盛大に大量に頬を流れる


まるで壊れたシャワーみたいね



涙は、相変わらず全然動けない、本当に情けない棒みたいに仰向けになった私の閉じた瞼の睫毛を濡らした。


頬を伝い更に耳にまで達してそこら中をベタベタに汚し、みっともないと思った



遠夜は私に、ボーーッと、うっとり聞き惚れそうな柔らかな声でゆっくりと話しかけるのだ。


多分相当に気を遣いながらなんだろう、うんと柔らかな口調でーーーー




「オイーー……俺の声、聞こえてると思うけどな?


でも無理に返事をしなくてもいいし、パチパチ目も開けなくてもいいぞ


自然に任せて、体は……無理せず、とにかくゆっくりとだ


いいな?  わかったな……?」




遠夜は

「なんであんなに言ったのにチャンと俺を呼ばなかった?!」


事実本当にそうだったんだけれど、きつく叱り倒すことも無く、ただ優しく寄り添い接してくれた



私を気遣う優しさが視覚がきかない分、だからこそ余計に伝わる



でも優しくされると、もっともっと涙が出てしまう


遠夜は木偶のぼう状態の格好悪すぎな私の事を、決して怒ったり決して馬鹿になんかしなかった



遠夜は涙でボロボロのみっともないーーー


女の子にとって凄く辛い、醜いドロドロの、自分ですら2度と見たくない崩れてるに決まってる顔をけなしたりすることも一切しない



それどころかポケットに入れていたらしい、新たな大判のハンカチで動けない、ホントにバカなだらしがない私の涙を止まるまで抑えてくれる。


雫の流れるのがおさまるまで気長に付き合って上から何度も拭ってくれた


それにきっとーーー遠夜のことだから、ゴシゴシ力任せに拭いて擦れて腫れると私のお肌に悪いと思ったんだろう


決してーーー無理なやり方で、強引なひっかくみたいにはしなかった



柔らかに押すように

そぉっと


ゆっくりとすっっ、スッと 真上からハンカチの表面だけを押し付けてくれた




『!なにこれ気持ちいいーーー!!」



心の芯まで蕩けそうにうっとり身を任せる


静かに肌を舞う優しいハンカチには微かに〜爽やかな香り



彼の ”着替え”

私の上から降る衣擦れの音からしてどうやら着ているのはジャージらしき着衣からもほんのりと同じ香りがした



清潔な遠夜の香り


柔軟剤? 洗剤? !……癒やされる香り…


ーーーーとてもよい香り


恐怖に荒れた気分が、次第に穏やかに落ちついて行くのを自分でも感じた



どうしようーーーー 凄く幸せ





遠夜は私の涙を丁寧に拭き終わると、ギシッと音をたててベッドから降りた様子らしき事が、閉じた瞼を通して感じた



影が気配が感じられたことで突きつけられる


つまり彼が私から去ったのだ


『嫌!嫌!イヤァ〜……!』




お願い行かないでっっっ!!私の側から居なくならないで




パニック状態、喉から出ない声が逆流、自分の胸に反転する


怒りの悲鳴ーー翻って心を突き刺す



なんて我が儘な私ーー……


さっきまであんなに優しくしてもらったのに

散々甘やかしてもらったのに



魔物から、良くない物から全力で助けてもらったのに


なんて恩知らず 駄目な私 黒々と昏い哀しみが胸を覆い潰す


ーーーと

ベッドの側に立った(らしい)遠夜はそんな私の心を知ってか知らずか、フッと恐慌状態の私の右手を取った



手を取る前、急に吐息と気配が下がったこと


後〜手を取られた角度から、どうも床に直に膝をついているらしい


まるで大切な宝物を守るかのように、力の入らないしょぼくれた掌を大きな手で押し包む


ゆっくりーーー両手で、優しく

如何にも大切そうに ふんわり握りしめ、小さく手の力を込めるのだ


途端にスッカリ安心しきった 我が儘な私の心ーーー……



げんきんな下品な私ーーー でも嬉しかった


ただ嬉しい 涙が溢れる 心が躍る


満足して、死にそうに心臓がドキドキ再び高鳴る




ドキドキドキドキドキドキドキドキの中ーーー


まるで不意打ちのように初めて、私のだらしなく横たわる体全身にピカリと電流が走った


ジワジワと、体を堅く縛る呪いが解ける


忌々しい身体のこわばりが、熱で氷が溶けるみたくスルスル消えてゆく


ビクビクと指が遠夜の手の中で暴れる



『!!なに?!』


いきなり予想外の無意識の動きに自分でも『えっ?!』心が震えた





なのになのに遠夜はちっとも驚かない。


逆に更に強く力を込めて、私の手をガッチリ握り返してくれた上にびっくりしたことに「恋人繋ぎ」


指と指をお互いに絡ませるやり方

『離さないよ!』


〜そんな気持ちが真っ直ぐに伝わってくる凄い力で、手繋ぎ方法を変えたのだ



しっかり遠夜の手の中で守られる、私の掌ーーー!


もう手というよりも、直接私の心そのものを、丸ごと包み込まれた気がした



しかも信じられない事が更に又起きる。


遠夜の滑らかな髪が、彼の形がよいと評判のスベスベする額ーーー


私の指先に心地よく、不意にピタリ触れたのだ



ミントの香りの仄かな吐息

ふんわり私の、パジャマから露出した腕の内側の柔らかな肌をくすぐる



っっなになになに?! 何が起こったの?!


本当に驚くような全く予想外の事のことばかり



〜〜〜ううん?

もう既に有り得ないことが連続して起きちゃってるのに、今度はそれ以上で


もぅもぅもぅ心臓がバクバクして今にも止まりそうっっっ!





全然〜状況は見ては居ない(見えない)けれど

彼は私の為に、心より元気になってくれと真剣に真摯に祈ってくれていたのだ


眼が見えないからこそ余計に微かな反応、心の機微が全部強烈に感じ取れた




ジワジワジワジワと体全部に、温められるかに普段の感覚が戻ってくる


少しーーー腕に


遠夜と抱き合ってるみたいな、掌を支えている右腕にも更に力が戻る



『……ぁ……っっ』


やっとーーーー……

固く閉じていた瞼がなんとか開いた



薄目を開けると、真面目な遠夜は大切そうに私の掌を握りーー



私の ”想像通りの格好” で、ジィッと祈るかに額を両手に押し付けていた


急にヒクッと私の喉が痙攣した



!!声が出る




「っ」



とうとう待ち望む事ーーー…… 自分の喉が動いた



遠夜がユルユルと反応し、学校の女の子の誰もが騒ぐ、美しい切れ長の目をゆっくり開くのが視界に入る



月と星明かりだけが差し込む、静かすぎる薄暗い室内


なんて神々しい綺麗な横顔なんだろうかーーーー


ほのかに照らされた、全然見たこと無い遠夜の別の表情



眩しすぎるのに見惚れて、全然目が離せないの




「〜遠ーーー夜?」




やっと何とか出た…… 私の情けないーー小さな囁き声



お互いの眼が視線がピタリと合った




遠夜の心底ホッとした輝く笑顔


ーーーこれって極度の緊張から解き放たれた自分の錯覚かしら


なんだか遠夜もチョッピリ、目が潤んでいる気がーーーした



私はきっと、この時の遠夜の特別な笑みを


一生、光り輝く最高の彼の笑顔を、決して忘れたりしないだろう




例え思い出す時は、既に、自分の隣に遠夜がいないとしても



私は忘れない 彼への感謝を



遠夜から贈られた、この夜の無償の無限の優しさを〜

生涯決して、絶対に忘れない




そんな風に固く心に誓ったのだ


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