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私の夜の出来事 ①


ドキドキドキドキドキドキ……


ーーーーー夢みたいだ



まさかあの遠夜と、「永遠のライバル」

〜宿敵の彼とこんなにギュッと急速に親しくなるだなんて嘘みたいだ



ましてや私の家に宿泊?するだなんて、考えてもみないことで胸が熱く頭もクラクラ。


彼の提案で遠夜がママの代わりに〜

ひと晩私の付き添いをすると申し出てくれたのには、びっくりするしかない



但し彼は〜「自分は廊下で休む」


自分用の、まるで大人の人の冒険家が使うみたいな、見たこと無い本格的アウトドアグッズ、寝袋まで持参してきたのだ。


しかもたった一人で誰の手も借りず、至極手慣れた仕草であっという間に準備、一息にピピっと。

完成までセッティングしたのは心底驚いちゃった


でもそれこそが何気にオシャレかつアクティブで。


性質的に何もかもそつがなくて、如何にも細かく律儀な遠夜ーーーって感じがしてクスクス笑ってしまうの


ーーーなお彼のビックリはまだ続くのだ


驚きで目を回す私を尻目に、遠夜は用意周到なことに更に初めて聞くベビーモニターという〜


「あなたそれどこで知ったの?!」

〜なコンパクトで凄い装置まで、さも当たり前みたく淡々と持参して来てた



さっきの、熱を測る時もそう!!

まるで本物の立派なお医者様のような、急にスムーズに真面目に変身した姿もそう!!


凛々しくてかっこよすぎで、魂がフワァと体から抜け出てしまうかと思ったもの


目の奥を見つめられた時、視線が合った時死んじゃうかと思った、心臓麻痺で。


あんなことされたら患者の女の子達、もれなく次回もそのまた次も、全然病気でなくとも延々通い詰めてしまうに決まってるし?!


〜もぅ彼って人生何周目なの?って 本気で思ってしまったんだ



私はいつも通りの自室で穏やかに過ごし、けれど扉と壁を隔てた向こうに約束通りにひと晩遠夜が居るというのは、なんだかとっても変な感じだ



その夜、こんなドキドキの展開の中、眠りにつく前にポツポツと、胸の内の苦しい気持ちを遠夜に全て打ち明けた


ずっとずっと今まで気になってたことーーー


勇気を出して直接ハッキリ遠夜に聞いたんだーーー


だけど心臓が喉から飛び出そうに緊張しちゃって、心が砕けそうな苦しみに必死に悶えてしまう



「遠夜は私の事を……女でないと思う?


それとも、できそこない、異常者だと思ってる?」



ーーー思わず遠夜の息をのむ様子が、ベビーモニターの機械を通して、空気を携えハッキリ伝わって来た



「本当のこと、ねぇ答えて?」


自分でも切羽詰まった掠れた小声がしたと思った


涙がポロッと零れる……


”こんな事聞かれても相手だって返すのに困るでしょ?”


〜我ながらなんて自虐的で愚かで、身勝手。


だけど感情がもぅどうしてもセーブ出来なくてーーーー


我が儘な重い、聞かれる方も絶対に嫌な事を、そんな事自分でもわかっていながらグイグイ突きつけるように聞いてしまうのだ



ーーーでもどうしても、私は確かめたかったんだ


絶対的に信頼出来る遠夜の、嘘偽りも無い正しい本音が聞き出したかった


これにはさすがな遠夜も、戸惑って、少し考えこんだみたいだった



だって、何故なら、たっぷり時間が空いたから。



じっと待っている間、全く生きた心地もしなかったし、物凄く時間も経った気がした


自分がこんなーーー

相手が返答に困るような酷い事を聞いたのに、直ぐに答えてくれない彼が恨めしくて憎たらしくて


と同時に「絶対に聞きたくない!!」


〜オロオロと気分が惨めにユサユサ揺れてしまう。


そんな愚かで、見苦しい自己中心的な、自分に吐き気がよもおし最悪な気分で〜



けれど彼の返答は予想外すぎて。


だから益々、涙が信じられない位、後から後から次々に零れてしまう


ヒャックリみたいな嗚咽《オエツ》とか、そんな惨めな様子が遠夜に伝わらないように誤魔化すのに必死


だってだって、だって、これ以上心配なんかかけたくないから



うん

真面目な遠夜はこんな風に私に返してくれた。

それがもぅ余りの予想外すぎて、一瞬呼吸が止まってしまったの


凄く豪快な明るい答えで、更に続く「遠夜の言い分」は冷たく凍える私の心を温かく振るわせてしまう



「女で無くても、できそこない、異常者だとしてもどうでもいい

 

俺にとってはカンケーねぇ


カレンは自分にとって最高に最上級に大切な人間、出来損ない?女じゃ無い?異常者?


はっ、ア〜ア〜じょーとーじゃねーか!

一体全体それが何だってぃうんだよっっ


〜だとしてもその程度なんか、ちょヨユーで俺様の個性で越えてみせっし?


んと、どうでもいいさ?


んじゃさ、俺の方がもっと変にド変態になってやるぜっ


あのさ、人間少しくらい変な方が面白みがあって好きだけどな

 

だいたいがさ、出来損ないってなんなんだよ?


そんな事言ったら俺んちなんか24時間はちゃめちゃパラレルワールド、日常カオス過ぎるぜ?


”出来損ない選手権”エントリーしたら、ぜってーオリンピック金メダル級だって胸張ってガツンと言えるけどな!


だからさ、大丈夫なんだよ? 出来損ないだって上には上が居る


……うん ヨユー


お前以上の変人になんでも思いついたこと話せ?


人に言えない事、沢山あるんだろ?


誰にも言わんし ……な?」





遠夜は優しい


とてつもなく優しい男の子だ


頼り甲斐のある彼が、わざとおどけた明るく楽しげな口調で、どんより淀む暗い気分をさり気なく励ましてくれる


それがどんなに嬉しい事か? ーーー救いになるか



彼の事が大好きな女の子達が和気藹々、積極的にどうして私設ファンクラブまで作ったのか漸くやっとわかった気がした。



ただの格好いい見た目だけの男の子だってだけでは、彼女達だってそこまでの事は多分しなかったろうと思うの。


きっとーーー頑張り屋の彼のことをただただ応援して。

どこまでも潔く、強くのびのび、人の群れを駆け上がってゆく様を見ていたかったのだ。


永遠のライバルって言いながら、なんて自分は鈍いんだろう?



私は余り、余計な感情を込めずに遠夜に話した。


ーーーでないと、確実に泣きじゃくってしまうから。




強くて優しい彼のライバルとしてーーーー


これが唯一 私に残った、ちっぽけなちっちゃな、しようもない絶対に譲れない見栄だった



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