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カレンのお屋敷に俺が行って ⑦


「遠夜ーーーー……?」


「ん?」


「見えてる……?」


 

ユラユラ揺れる微かな声ーーー仄かな囁き声


モニター越しの後頭部、夜具を掛けるベッドに横たわる体


「見えてるよ。

顔は映ってないから安心しな、結構しっかり聞こえてる」


「そうーーー……」


ホッとしたカレンの声にこっちも深く安堵の思いだった


ーーーと、パタンとカレンの体が向きが変わる


反対側に寝返りをうったせいで今度はモニターに表情が少し映し出された


でもそれから暫く、声を全く発しなかった


静かな無言の時間が流れる



「遠夜はーーー……私の事を……」



どうしたんだ?



「……女でないと思う? それともーーーー」



「!」


突然何を言い出すんだ?! んな事思う訳無いじゃんか




「……できそこない、異常者だと思ってる?」



「……」


「本当のこと……ねぇ答えて」


切羽詰まった掠れた小声



「……」


うーーーん……俺は考えた


文字通り脳みそを絞って考えに考えた



よく最近のマスコミでーーー


「女性の真に欲しがってるのは解決方法では無く共感です」


ーーーって、よりそう事って、そんな風に言うからなぁ


だから相手が欲しいと思っている言葉をそのまま投げかけるのが、最もシンプルな最適解だと思う


〜答えなんだろなぁ矢っ張り



でもさーーーー……そういうの?ループ化しねーか?

 

「いま嘘言ってる?そうでしょ?」ってさ?


益々不安になって疑心暗鬼ってかーーー?


結果「もっともっともっと言って欲しい」くなんねーか?


う〜〜〜〜ん……



俺だったら下手に気を遣った手出しをされずにウンウン、無駄口言わずにただーーー隣に寄り添って欲しいけどな



だからシンプルにこう言う


思った通り、心のままに言う




「女で無くてもーーー

できそこない、異常者だとしてもーーーー……

どうでもいい

 

俺にとってはカンケーねぇ


カレンは自分にとって最高に最上級に大切な人間〜


出来損ない?女じゃ無い?異常者?

はっ

ア〜ア〜じょーとーじゃねーか、一体全体それが何だってぃうんだよっっ


だとしてもその程度なんか、ちょヨユーで俺様の個性で越えてみせっし?


んとーーー……どうでもいいさ?


んじゃさ、俺の方がもっと変にド変態になってやるぜっ」



「……」


「あのさーーー……

人間少しくらい変な方が面白みがあって好きだけどな

 

……だいたいがさーーー

出来損ないってなんなんだよ?


そんな事言ったら俺んちなんか24時間はちゃめちゃパラレルワールド、日常カオス過ぎるぜ?


”出来損ない選手権”エントリーしたら、ぜってーオリンピック金メダル級だって胸張ってガツンと言えるけどな!


ーーーだからさ……


大丈夫なんだよ?

出来損ないだって上には上が居る


……うん ヨユー


お前以上の変人になんでも思いついたこと話せ?


人に言えない事ーー……沢山あるんだろ?


誰にも言わんし ……な?」


 

「ーーーー」



カレンはポツポツと、胸の内の苦しい気持ちを語り始めた



きっとそれは生まれて初めて感じた、周囲の幸せな(に見える)人への激しい憎しみをベースとする『羨望』


理屈抜きの『憎悪』って言うのか〜憤怒、妬みや嫉妬や1人では抱えきれない、自分でも認めるのが辛かった負の感情


苦しすぎる、到底手に負えない程のドロドロとしたやるせない、他者への呪いに似た燃えさかる憤懣だったと思う




カレンは切々と言う


「お医者様から体の事を告知されてから全世界が足下からガーンとーーー


全部文字通り音を立てて崩れ堕ちたの」


そんな気がした事



「クラクラと真っ白に目が回る、ずっと続く目眩が体をフワンと繭みたいに押し包んでいたの」


哀しい切なすぎる心象風景だった事



「辛い自分に関係なく、それなのに世界は平然と廻っている」不思議さ

 

耐えられず「気が狂いそうになった」事ーーーー



「今にもワァーーーッっと狂った様に突如叫び出しそう」

キツイ抑えられない、タガが外れそうな強い衝動に振り回されている事



 

「こんな症候群、絶対学校自分1人」


「誰にも理解されない」ーーー絶望と孤独



将来への真っ暗な不安


先が見えない、急にブツリ手折られた未来に対する喪失感




自分1人だ


自分1人だ


自分1人だ



自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない自分以外にいない



ーーー自分以外にいない



全身の血液がスーーーッと冷える昏い恐怖と孤独



誰も私を本当にはわかってくれない




「そう思ってーーー

全身がバラバラに分解される感覚で……


完全におかしくなっていたーーーの……」




カレンはかすれる、切ない小さな声で、闇の中に消える様に喋った



ぼぉっと薄明るい廊下に流れるモニター越しの、機械を介在し〜通した声


俺は唯々 無言で聞き続けていた



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