カレンのお屋敷に俺が行って ⑥
部屋は指紋認証か暗証番号で開錠するらしいので、いざという時の為に教えてもらい、それでも「もしもの時」慌てないとも限らないから、扉下部にドアストッパーを噛ませて小さく隙間を作っておく事にした
「じゃぁ俺はソロソロ外に行くからな?
カレンはモニター越しに好きな事喋ればいい
俺の顔は見えないけど、こっちの声は聞こえるから
〜何でも思いついたりした奴?、後、体がきつかったら、キャーとか、ワーとかギャッとか?
構わず一声呟くなり叫べばいいぞ?
直ぐそっちへ行くから」
「本当に?」
「当たり前だろ?
ん〜〜〜『試運転』するか?
試しに、使い方の予行演習で」
「うん」
ニコッとカレンが微笑んだのを見て俺も笑みを返す
ヒラヒラと手を振る
カタンと重厚なドアを僅かに開けてドアストッパーを噛ませ、無人の廊下に出るとバサバサと自分の着替えを取り出しジャージを身につける
モゾモゾ〜〜〜とそのままモンベルの中に潜り込む
ウン良い感じだ
目の前にスマホと装置の受信機をポンと置いて様子を見る
〜〜まだなにも映っていない
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カレンからは暫く音沙汰無かった
だってお洒落に気を遣う女の子だもんな〜
肌や髪のお手入れとか?、その他諸々男と違って忙しいし細々あるからなー
俺は廊下のボンヤリ灯る微かな明かりの中、静かな広い空間で手持ちぶさたにスマホ検索で色々と調べた
例えばーーーー……「代理懐胎」
代理母出産の『現在の状況』ーーーとか?
現在多少は英文の長文読解が出来る様になっていたのが幸いした
翻訳なしでもWebサイトの記事のあれこれがそこそこ読めるのだ
『それ』から芋ヅル式に外務省HPにも、”たどり着いた”
該当箇所〜”国の状況”を素早く閲覧する
本当に大丈夫なのか?
違法性は無いのか?
ところが、俺はとんでもない事に想像が及びゾッとした
思わず両腕で頭を抱える
多分口の上手いコーディネーターに自信満々宣伝される程には、おそらく可能性は低く思った程はきっと無いし、何よりもカレン自身がそんな事は出来ない、私は嫌だと絶対に拒否するだろう事に気がついてしまったのだ
コレは個人的”野生の直感”なんだが、そうなる結果が”大”なのだ
*****
代理母出産が法的に違法行為でない、可能な国で分けて考えれば、例えば〜
アメリカ国内の代理出産が認められた地域(州)は予想外にそんなに多く無い
51の各法域(50州+コロンビア特別区)中僅か10州程度
更にこの中で代理出産契約を有効とする制定法を有する州の中でも、報酬や対価を求める代理出産契約の締結を禁じている所もあるなんて、ましてや全然知られてないだろう
(約半数・例;ネバダ州など)
で、途轍もない高額医療費で有名なアメリカの事だ
外国人が当国で行った場合、1回あたり2千万以上〜もっとか?
そこそこが大体の相場らしいのだが
当たり前だが、これだけの金額を支払える若い夫婦は必ずしも多くない
そんな事を考える人間は世界中に居たってことだろう
2000年代 代理出産の一大マーケット『だった』のはインド
その次〜2010年代『だった』のがタイ
しかし両国ともトラブル続きに怒り心頭、国会でこの問題について揉めに揉め討議
「ウチの国の女性の命と身体をなんだと思ってるんだ!」と結果現在、かの国の新法ーーー
法律で全面禁止になった
でその後「どうなったか?」というと
代理出産の拠点は旧ソビエト連邦方面に移る
ウクライナや、欧州のジョージアだ
(旧グルジア・2015/4月15日に日本で法的に名称表記変更)
外務省HPによると、ジョージアはロシアから1991年に独立ーー…
まだ建国してそんなに経ってない、やっと国が政治的にも国際的にも安定期に入ったという若いとても美しい国だ
因みに日本はかなり安定することを支援している国家の1つ
世の中は本当に
より複雑に残酷に流動的だ
ジョージアは地図で見ると向かって左側、日本で云うと土地続きで中国みたいな感じで大きくトルコが控えているのだが、ジョージアの真下の横に伸びる国家、2つがヤバすぎるのだ
CNNとかでも大騒ぎになった、再び休戦協定が破られたという旧ソ連同士のアルメニアとアゼルバイジャンだ
大陸間弾道ミサイルが市街地を襲いもう実質紛争地といってよい
一応現在では再び小康状態、が、両者の対立は厳しさを増すばかりだという
美しい小国ジョージアは血みどろの代理戦争の巻き添えを食い、カレンが女性として成熟した年齢になった際、子どもを望んだ年頃に戦火に巻き込まれたりしないのだろうか
後はどうなるかは『運』しか無い
しかしそんな状態の地域がすぐ近隣に控える緊迫した中、センシティブでデリケートな代理出産を、彼の国の女性に肉体的にも精神的にも大きなリスクと負担をかける依頼を、真面目で心優しいカレンがお願いしますと望むはずがない
ウクライナにおいては言わずもがなだ
俺は底冷えのする、もはやナニカに悪意があると言って良いだろう?な運命に
思わずブルリと体が震える
代理懐胎の他の出来事も、かなり外国の記事をあさりまくった
かつてフランスはこの問題に対し過度とも言える過激な程神経質に扱った
アメリカで代理出産を選んだ、過去とある若い夫婦にマスコミ達は雲霞のように群がった
結果、まさかそんな事になるとは想像もしなかった親たちは、子どもを守る為に闘士となって夫婦一丸となり母国フランスの世間から全力で抗い戦った
それは「子どもが成人するまで」
何故ならば彼等は『親』だから
命懸けで親としての使命を全うしたのだ
様々思い悩む間に、パチンと部屋の明かりが消えるのがうっすらと扉の隙間から感じ取れる
微かな常夜灯の光が、うっすら糸の様に廊下に漏れ出る




