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カレンのお屋敷に俺が行って ⑤


「オイ大丈夫か?」


皿を置きスイッと立ち上がるとツカツカ……!

 

対面にソファーに座るカレンの側に立つと、「よっ」


直ぐ隣に座り込み、素早くあぐらをかく


相手への”合図”として、小さくクフンと少し軽い咳払い


「今からおでこと右手首に触れるからな、だからビクッと驚くなよ?」

 

「〜〜」


「心配すんな、やべー事はしねえって」


「…」


俺はゆっくりとあぐらを崩し、片膝立ちに変え、先ずは〜ぱちっっと目線を合わせた


じぃ〜〜っと彼女の眼が追視をする

相変わらず透き通る見惚れそうな綺麗な瞳だ


カレンも瞬きをしなかった



彼女の伏せがちな大きな瞳を、そのまま首を傾け横下方から覗き込み、不安で怯えさせない様に

俺は出来るだけふんわり柔らかに、朗らかに笑う



小さい子が側に居るとコレは必然的に身につく癖だ

暴れん坊の母からーーーこの事は学んだ事だ

(悔しいけどさ!)


俺がどんなになだめすかしても手に負えず、ギャーギャービービーギャン泣きの弟妹達も、あのいかれポンチの暴れ馬の母が「どうしたの?」


一声柔らかな”声を掛けて”


目線を合わせてニコッと両腕で抱き締めると、あら不思議、どんなに泣きじゃくっていたとしてもピタッと泣き止むのだ



毎度ウッソみたいだよ


結局、背の高い大きい側の人間は、背の低い方の立場からすれば威圧感丸出しなのだ

 

不安感一杯なのに更に怖がらせるのはいけない事だ


俺はそぉっとゾワゾワさせ無い様に、フンワリ掌を彼女の額に『置く』


合わせたままの眼差しをそっとずらすと、右手首に人差し指と中指をピタリ揃えたものをあてる


普段散々お世話になっている小児科の先生の診察方法を真似て、軽く目を閉じて”カウント開始”〜


う〜〜〜ん……


ちょっと熱め、高めで速めかなぁ


しかし両方共ギリ大丈夫とみた!

こういうのは経験が全てだ


メッチャ安心、思わずほぉぉぉぉっと溜息が洩れる


ーーーーーーー…本気でホッとしたよ



カレンは何も言わず、最後までじっとしていた




************



俺は勉強が一区切りすると、広い階段から上りカレンの部屋の前の廊下に案内して貰った


「本当に遠夜は廊下でいいの?」


「男なんかどこだっていーわ」


フンと素っ気なく言う


あったり前だろ?、ひと晩臨時で安全に寝れれば何処でも良いのだ


何でも廊下を挟み自室の前に驚きの2人乗りエレベーターも有るそうなんだが、自分はいきなりそんな極プライベートな領域に突入する、屋敷内装置を使おうとは全く思わなかった


大体今日お屋敷に招かれたばかりだし、ド厚かましいにも程が有るだろ?


だから、のしのしと広い階段を荷物と共に上る


硬式テニスで鍛え上げた足腰舐めんなよっ!!


 

カレンの部屋は”3階”


防犯上、不審者の侵入を考えれば良い選択だと感じる



『スゲーーーーーーー……』


にしても凄い色鮮やかな赤絨毯の廊下だ


ひろ〜〜い天井高の空間に滑らかで立派な分厚い絨毯

国会議事堂の初登庁の議員さんになった気分だった


こんな廊下だったら夜間ビュービュー冷えて寒くて眠れないって事は無いだろうと思う


しいて言えば”虫”?

どんなに綺麗にしてるつもりだとしても、何所にもここにも密やかに静かに潜伏する厄介なダニ系微生物系の恐怖?


これも一応、”念の為に用意”の防虫マットと、シュラフも丸っと『カバー』があるから寄ってこず大概大丈夫だ


自分は手荷物のコンプレッションバッグからマットを先ず引っ張り出し、愛用のシュラフをその上で『よっ!』と広げる


モンベルのピッチリした円筒形のカバーの中からアレヨアレヨとシュルルルルルルル〜……バババ〜っと見る間に忽然と現れる


まるでグニャグニャのパラシュートの如く、アラジンの魔法のランプの中に潜む魔神の様な独特の寒色系の色合いのダウンシュラフだ


何度見てもあの小さなキツキツの塊の中、こんな物がキチンとパンパンに入ってただなんて嘘としか思えないゾ……っと!


弟妹達は毎回毎度”手品を見ている”みたいな?〜ノリ?

ホント大好物、キャッキャキャァキャァ、大喜びの一瞬だ


「凄いわねっっ!」

カレンも一連の作業に流石にビックリしたらしい


俺はモンベルの伸ばした物に更に上から同ブランドの別売りの品〜真っ赤なカバーを取りつける


全部コレで大丈夫だ


俺は1度だけ取りあえず彼女の部屋に入らせて貰った


すぅーーーーーー……

室内どこもかしこもよい香りがする


豊で穏やかで平和な空間

白とピンクと爽やかな水色に統一された上品な部屋


真っ白の4本柱と優雅なドレープの手の込んだ布飾りが美しい大きなベッド

 

フンワリ〜外国映画みたく手のこむタッセルが趣がある立派なカーテン


失礼が無い様に、余りキョロキョロせずに目的の場所〜

俺はベッドの側に近寄った


「この辺かな?」


ガサゴソ、愛用のグランドツアーの中からベビーモニターを取り出すとベッドの棚、枕元にカタンと置く


 

「それは何?」

カレンが興味津々といった様子でジィッと俺の手元を見つめて来た



「”ベビーモニター”

あのよ?

スマホだと緊急時にある程度の操作が要るけどさ


あ〜〜〜例えばボタンを押すとか?


コレだったら受信側に『身動き』とか後『声』、何でもイイから音を立てるだけでいいんだよ


何もする必要が無い

後はこっちで何とかするから


安心してスヤスヤ寝ていればいいんだ

俺が直ぐに側に行く」


「ホント?」


「ホントホント 

……自分で言うのも何だけど操作年季がいってっぞ、任せとけ」

俺はニヤァっと笑った

 


実際本気で”突然の嘔吐”とか金縛りとか?


そんな異常事態時にパニックにならず冷静にポチポチ正確に異常を知らせるべく液晶のボタンを押せるなんて、そんな奴マジでいっぱい居るのか?


居ないと思うけどなぁ



俺の持っているベビーモニターは少し旧型のせいでPCやスマホ管理は出来ないんだけれど、使い勝手はいい


当初はベビーの夜泣きや離れた別室や死角にベッドがあった際に様子を見る為に開発された物だ


相手は”言葉がまだ話せない”0歳児の赤ちゃん

だから基本、『何も出来ない』相手が対象だから特殊な作りなのだ


その予想外の利点が想像以上、想定外に『ウケた』


これを応用、最近では介護や留守中のペット観察、特殊な現場でも続々と応用されていると聞く


兎に角相手が操作的に『何もしない』でも体調に異変があれば機械が反応し警報音で受信機を持つ側に教えてくれる、ホンット実に有り難き装置なのだ

 

電波も結構強くて混線も初期不良も幸運な事に自分の持っている物には無かったのが良かったよ


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