カレンのお屋敷に俺が行って ④
カレンがリビングに漸く戻って来た
でも少しーーー
遅かった気がした
どうしたんだろう
いろいろな考え可能性が次々頭をよぎる
彼女はまだまだ精神的に不安定だーーー
俺は嫌な予感が頭を掠めた
大丈夫かな?
ちょっと『無理』させすぎたかーーーー……
俺の『ファンクラブ』リーダー、副リーダーを自認する友人、女友達’S
彼女らは自分をチヤホヤしてくるどころか、むしろ口煩い怖い姉貴のような存在だ
厳しい、だからこそ本気で頼りになる存在
現在バレーボールの強烈エース二枚看板に育ちつつある女友達’Sは、毎度ハッキリクッキリ文句をズケズケ言い、山のような小言と共にギャンギャン絞り上げて叱るんだよな……
「遠夜はハッキリものを言いすぎッッ、不器用にも程があるしッッッ!」
「どうでも良い人間にはスルーで何にも言わないくせにっっ!」
「ホント ギャップがありすぎっっ
相手アンタの急変にビックリ驚いちゃうでしょっ!」
あ〜〜〜〜〜〜〜……だよなぁ、思い当たる事が多すぎ、指摘はもっともだと感じている
でも誰かに叱って貰えるって事は有り難くって良いことだ
だから真面目に真摯に受け止める
(全部本当すぎるからさ)
確かに悪い事をした
気を許した相手にはついついバシバシ本音を言ってしまう悪い癖がある
思わず しょぼ〜〜〜〜〜んーーーー……
あ〜〜〜〜
何で俺ってこうなんだろうなぁ
ちっとも世の中上手く行かないよ
「モラハラ」で「変態」のWセットだなんてマジ勘弁だっ!!
最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪
もし俺の妹に、そんな奴が
「よーお前の妹と付き合うんだが構わねーよな?」
て言って来たら問答無用でテニスの硬式ボール高速サーブ10000球乱打で打ち込んで塩撒くぜ?
コレは固く誓える
ーーーー??
っっっんん
何だ?
カレンはとてもよい香りの、香ばしい揚げ物の香りが鼻をくすぐる籠を両手に提げて戻って来たぞ?
籠には丸い、レースが端にあしらわれた真っ白なカバーが1枚掛けられている
????
床のフカフカ絨毯にアグラ直座りの行儀の悪い俺に対し、キョトンとする様子を満足げに見下ろすと家の悪戯ばっかりするおチビに似た笑みを浮かべた
これはーーーーははーん何か企んでると見た
怪訝そうな表情を察したのかカレンはクスクスクスとメチャ楽しげに笑った
〜……
うっわーーーーー……
ーーーコラコラ思春期の男に蕩ける特上の微笑みを見せてどうするんだよ?
「こいつは俺に惚れてる♡」
都合良く思われ勘違いされて襲われ押し倒されたって知んねーぞ?
ーーー…とか何だかんだ思う俺も、超幸せそうな微笑みから目が外せず完全にヤバイ狼
ってーーー!!
自分がついさっき彼女のご両親に進言したばっかのド変態に成り下がってどうするョ俺ッッ!!
何とか無表情に取り繕う事が出来た自分を褒めたいぜ
カレンはひょっとして”天然”なのか?
〜女ってマジでワケワカランっっっ!
*******
「ーーーこれママから」
カレンは広いぶ厚いガラステーブルの上に器用にフンワリ、籠上掛けカバーをハラリと片手で広げると、何かの植物の蔓で編んだ籠をその上に静々と音をたてずに置いた
しかしそいつは見るからに『匠の技!』
!!!こんな籠、日常にアタリ前にフツーに使ってる奴初めて見たわ〜
大人が目をキラキラ輝かせて如何にも好きそうな、拘りの高級雑貨特集にドンッと最初のページに見出し語と一緒に華々しく出て来そうな物品
ホラーー…数量限定
しかも「今注文したらお届けは3年後でっすっ♪」
平気でそう言う”類い”の間違いなくとんでもなく高価で洒落た物だった
そんな極めて手のかかってる(に決まってる!)籠の中にはペーパー製レースナプキンが隙間無くピッタリ敷き詰められ、取り分けの花柄の小皿とボトル入り調味料、小さめのナイフとフォーク
メインとおぼしき”いい香りの正体”、形良く麗しく詰められていた
俺は呆然とした
美味そうっ
「何コレ?〜コロッケ?
具は、中身はポテト? 牛?、クリーム?
美味しそうだな」
「うん、コロッケはコロッケだけど、多分普段食べる事少ない味だと思うの
私の大好物……!
お1つどうぞ?」
「ーーーー」
「”おかわり”もあるから遠慮せずにどうぞ」
カレンは楚々とした手捌きで、器用にトングで柔らかなそれを自ら小皿にサーブ、カトラリーや調味料を目の前にセッティングしてくれた
美味いっっっっっーーー!
他に感想なんて無いゼ!
女性が、誰かが給仕を自分にやってくれる事は当たり前じゃない
お客さん扱いでわざわざ取り分けてくれたことも嬉しく有り難かったし、料理も本気で美味い奴に出会ったらチャラい言葉は出ないって俺はこの日に学んだ
うまいうまいうまいうまい
中はちょび とろ〜〜〜ん……と絶妙な感じ?
え〜〜〜〜〜何コレ?何これ??
「……ホントにもう1個イイか?」
カレンはニコッと笑う
く〜〜天使
マジ天使!
「家はサッパリめのリゾットで具とチーズを包んでるの
”ライスコロッケ”
料理名はアランチーニよ?
ほんの1〜2口で食べられる様に作ってるから幾つでも食べられるわ?
私はさっきもう食べたから遠夜は全部どうぞ」
「それは嫌だな」
「?〜どうして?」
「美味しい物は誰かと一緒に食べたい
俺は今夜カレンと食べたいな
俺ばっかりむさぼり食うんじゃなくってさーーー
そりゃ?カロリー的なこともあるし
〜もぅ夕食後で1口も食べられないなら仕方が無いけどさ
ワザワザこんなに非売品の、美味しい手作りの珍しい揚げ物、自分に差し入れてくれて嬉しい
ーーーー有難う」
「……」
?ーーー何だ?
カレンが急にいきなりカーーーッと顔が真っ赤になったから驚いた
〜てか?
首筋までボボボッと紅くなってるっ!
海がさみかったかな?
〜〜〜〜コレは大変だ!!
俺は急に『心配』が鎌首あげてぬぉぉぉぉっっと頭の中をユサユサ占める
弟妹がしょっちゅう体調を崩す小学低学年のせいで、こう言った体調変化にはパブロフの犬的に条件反射的で心がグラグラ揺さぶられるのだ




