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カレンのお屋敷に俺が行って ③


「さてとーー」


ガッコの勉強が一区切りした頃、平日毎日通う”虎の穴”、じゃなかった変態塾

 

時間が押してるから、英会話塾の今日の宿題をガッツリやっつける事にした


「それは何?」

目ざといカレンから物品の説明を求められる


知的好奇心が高い所が流石な気質だと思わず惚れ惚れしてしまった


で、話の流れの、その時だった

 

俺は転校後初めて、実は映画が〜


それも作り込んだハイファンタジーやSF・冒険活劇系が大好きだって他人に告白してしまったのだ


俺にとっては親の特殊な職業と同じ位の重い重大秘密

胸の内、こよなく愛している事は絶対的シークレット、最重要極秘事項だった

 

何でって〜……

ジャンル的にもキワモノだろ?


「ふぅんそういうのが好きなんだ」引かれるのがオチ!


大体さ、映画が大好きって言うの自体、思わず詳細にでも語ったら最後


「映画解説者にでもなるの(笑)」

「遠夜は難しい話が好きなんだね〜〜!(笑)」


って先ず”こうなる”

既にそれは嫌と言う程場数を踏んだ「経験済み」


なのに話の接ぎ穂についつい、興が乗りすぎ気が緩んでポロリ言ってしまった


なにせガチのSFファンの〜

まね?


あの天下のアメリカの大俳優○リソンフォードと本気で結婚しようとマジに画策し考えていたという、実の子どもから見てもウワァ〜とドン引く、頭が沸いた痛い人の長年の話し相手が自分だからさ?


〜幼きとはいえ長男、大人と対等の意見交換だからさ、ソリャ自分詳しい訳だ


んで、今や自分も立派なマニアにスクスク、純粋培養で生育したと言っていい


ーーー親ガチャで選べないとはいえ、そんな困った自覚があった



ポロッと言った瞬間、実は『しまったーーっ』と思わないでも無かったんだ


ハッとする

”こういう”の

オタク的話は興味が無い場合凄くきつい


明らかな俺の失言で、テニスのサーブ失敗のコール「フォルト」

会話的に明らかに間違いない、場合によっては取り返しがつかない『失投』だったと思う



けどカレンはーーーー……

何故だかチャンと俺の話を聞いてくれた


そんなのは聞き手の目を見れば、”左の耳から右の耳”〜

社交儀礼上の空の、そういった流しでない事位直ぐに解るもんさ?


ーーーー心が痺れた

マジでヤバイ頭が下がる

ほろっと涙ぐみそうだった


本当に育ちがイイってこう言う事なのかも知れない



ついウッカリなバカな俺

いくら好きな事だとはいえ自分勝手に暴走してカレンに申し訳なかったと思う

 

 

「んじゃいっその事、今日の詫びに同じトコ習いに行くか?

結構厳しいぞ


その筋じゃ『虎の穴』『変態塾』ってコソコソ言われてっし?

カレンにやる気があんなら『先生』に紹介すっし…

どうだ?


ガッコと少し違うカリキュラムで勉強するのも気分が変わり楽しーぞ?」

 

 

本当はむやみやたら他人にあの塾の事は吹聴口外するなと、塾長直々にきつく釘を刺されていた


ーーーそういう秘密主義的な特別な本来大人だけの勉学の空間


あくまでも生涯のライバル、自分にとって大切なカレンだから喋ったのだ


俺がジョークを交えて喋る通う英語塾の話を無言で聞いていたカレンの、真面目な顔つきの顔色がすーーーっと変わる


ナニソレナニソレナニソレナニソレっと

『怒り』?


『私も負けてらんないッッ』


絶対に負けるもんですかッッとデカデカ顔つきにムッと現れるのが愛おしい



小学校の頃よく見たあの顔ーーーーー

彼女の、ここ1番の気合いの入った時に必ず生まれた懐かしい表情だった



「いい顔してんじゃん?」


「そう?」


「おぅ! カレンはヤッパその方がいいわ 」


 

俺は思わず正直に、燃えるよう上気した艶やかさに惚れ惚れ、見惚れながら告白した


するとカレンは困った様な顔をする


「絶対その方がいいな、俺は好きだ」


「…」


うん

そうだよ

それでこそ君なんだ


俺が好きな君なんだよ



……フッと優しい穏やかなひとときーーーー……


思わずお互いクスクスクスっと笑い合う


「私本当に遠夜と同じ英会話塾に通っていいの?」


「!!そりゃイイぞ?!

ーーーカレンが本気でやる気ならば俺が責任を持って塾長に紹介する


もう本来、席1杯でダメだけど


〜でも今夜1人転勤で泣く泣く『辞める予定』らしいからマダ欠員1名は辛うじて空きがある筈だ


空席の”キャンセル待ち”は、流石に知らんけど?


冷やかしじゃないんだったら直ぐ連絡を入れるけど?

でもお前本当にいいのか?


もう一つのディスったあだ名では『変態塾』、生徒が出来ようができまいがお構いなしの恐怖の千本ノック方式


進度もメチャ速いし泣きが入りそうな程チョー厳しーぞ?

授業についていけなくて辞める奴もいっぱいいるし」


「うん頑張るーーー……

今空っぽになって無心に、余計な事を考えず夢中になれる事が今したいの」


「そっか」


成る程なーーー……


確かにそれは精神衛生上、カレンにとって極めて良い事かも知れないな


ウンウンと深く納得した俺は直ぐに”虎の穴”、変態塾塾長の鳩羽にスマホで問い合わせる





成否の「返事」は比較的早く来た


情け容赦ない塾長の話によると、矢っ張り『キャンセル待ち』が結構な数、既にリスト化していたんだそうだ


で、頭から順番に連絡を入れた所、音信不通が2名

「もぅ既に他の所(英会話)に通い出した」のが3名


「転職し正規に採用され仕事が忙しくなったので」

「職場で昇格、やっと待ち望んだ自分の企画が出せることになり」


要するに生活スタイルの激変にあっぷあっぷでダメ……!


んな、そんなこんなでリスト前に10人程居た社会人&大学生、高校生入塾希望者達が軒並み皆ぶっぶ〜



「ーーーと言う事で遠夜君、君の紹介ならば間違いが無いと思うから明日から来る様に

持ち物は初回はこちらで用意する」


 

「〜〜〜だってさ?良かったなカレン」


すごい激戦の状況下で奇跡的に席がゲット出来た事で、思わずドヤ顔になりそうな貌を慌てて引っ込める

 

ぱたぱたぱたーーーーーー

みるみる大粒の涙がカレンの綺麗な瞳からこぼれ落ちたからだ



へ〜〜そんなに嬉しかったのか?


俺は黙って洗い立ての今治タオルハンカチを差し出す


「ありがとうーーー」

カレンはすんっと上品に涙を拭くと、ご両親に御新規の英会話塾の通いの許可を貰いに彼等の元に行った



そりゃ俺だって嬉しい、断然嬉しい

あったりまえじゃないか?


これからほとんど毎日2時間〜

日曜日以外は英語の授業が校外で一緒、全然一言も喋られなくとも少なくとも顔だけは観れるのだ



く〜〜〜〜〜〜〜……っっ

たったそれだけでもどんな厳しいレッスンや宿題にも耐えられる気がするよ



俺だって泣きたい気分さ

嬉しくって……


真面目な君には内緒だけど


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