カレンの自宅に遠夜がやって来て〜 ⑥
遠夜はコフっと小さく咳払いをする
「『ブレードランナー』
熱烈なファンの間では『ブレラン』とも言うんだけど?
〜続編もあるけどさ、大昔の最初のがやっぱり好きなんだ。
『スターウォーズ』のオープニングと一緒で、多分当時の流行?、それは長いロールみたいな世界観説明字幕が出てくるんだ」
「へ〜〜〜〜……!」
「ーーーその字幕がさ、ばさーーーっと大幅にゴッソリ訳されて無かった
独自な翻訳をテレビ放送局が特別に入れたピカピカな新版では無く、円盤で流布されている旧版には『日本語字幕には出てこない』〜
『そいつ』があった
まね?
TV放送よりも先に、厳しい勉強の成果でその事がわかったのさ?
俺も”自力で知った時”は……
思わずああっと声が出そうになったよ」
「〜〜〜〜!!〜〜ソレって酷いじゃ無い!」
ナニソレ手抜き?無能?馬鹿にしてんの?
英語がわからない視聴者をいいこと幸いに騙したの?
無性にプンプン腹が立った
「ーーーまぁ聞けよ?」
「だってッッッ!!」
「実は〜……俺はーーー
これには翻訳者の、チャンとした筋を通した信念の結果だと思うんだ
彼なりの理、正義
滅茶苦茶、英文に内容に『怒った』せいなんじゃ無いかな?
でーーー訳す事を”拒否”した
決して内容を、手抜きでも、ズルしたンでも無いと思う
だって他は、今観ても素晴らしい気分が盛り上がる名訳だ
そんな人が能力が足りず『わからない』『わかりませんでした、てへぺろ♪』と省く訳が無い
いいや、映画の内容に入り込み、好きになった〜
逆に理解しすぎた
『わかりすぎちゃって』さ……!
登場人物達に入れ込み惚れて感銘を受けたからこそ敢えて
ーーー”日本語字幕を入れなかった”
大幅に内容をカットしたんだと思う」
「それって、どういう
一体……どんな内容が書かれてたの?」
遠夜の表情に影が差す
なんとも言えないいや〜な顔をした
「ぶっちゃけると〜
『コイツらはずっと生まれてから死ぬまで人間の奴隷だ』
〜そう言う意味合いの事柄が平然と淡々と身も蓋もなく”事実”、既に決まってる事、動かしようも無い事として説明されてる
”彼等の寿命が何時のいつまで”で驚く程短命
何故なら長生きするといつの間にか知恵をつけて、ソレに伴い感情らしき物も持ってスッゲ扱いにくくなって面倒だから『壊れる』
つまりーーー……『死ぬ』
開発会社は、はなっから企画設計段階でそうした」
「なっっっーーーー」
〜〜〜〜酷い、酷すぎる
「でもその後はもっと胸糞悪いぜ?
〜この最初っから人造人間の命に仕込まれた安全装置のお陰で意思を持たず、とっとと皆人間様の為に働くだけ働きおっ死んでしまうから人間世界は守られて末永く安全〜
ーーーみたいな?
ざっくりかいつまんで言うとそんな内容、酷いことが山程書いてあった」
遠夜はゲーーーーっと顔をギュッとしかめる
「それはーーー……」
「まぁ洋画には時々あるんだよ?元々省くことがさ
そういう事で内密に片付けた
兎に角スッゲー昔の映画だから
勿論御大は確かもうお亡くなりに成られてる筈だ
本当の真実はだから、今となっては誰にもわからない
でもさ?
語学の勉強のお陰でね?
仕事師の名翻訳者の彼の苦悩の気持ちがーーーー
『こんなの誰が訳すかっ!』ていう抗議が
男気が
察することが出来たってわけ!
もしも自分だったらこの悲惨で傲慢で、差別すれすれの文をどうするか?
……多分思うに、映画製作者達が仕組んだ、ワザと観る人間の心をモヤッと煽る今で言う『炎上商法』なんだけどさ
職業として全うするか?
本当をありのままに直訳するか……
ーーー…倫理感を優先するか?
きっと当時、陰で葛藤でスッゲ苦悩したと思ったよ
そういう想像で裏読みすんの〜
『こうだったかも?』って突っ込んで深掘りするのって楽しくないか?
英語ーーー語学は要するに”道具”で ”鍵”なんだ
不思議の扉を開ける事の出来る秘密道具、もっと手に入れば、更に人生がグッとカラフルになるかなーって
〜そう思ってるんだ」
遠夜は何気に深い、大人びた意見を言った
そんな事を考えてるの?
遠夜は
すごい
既にスケールが違いすぎる
全身からキラキラ……何かが出ている様に眩しく見えた




