カレンの自宅に遠夜がやって来て〜 ④
遠夜と一緒でする勉強は私の部屋ではなくて大人の、人目の付く場所で『しよう』と言う事になった
「お前学校の宿題とかさ、あるだろ?」
「……え?」
「ホラさっきカレンんとこのクラスの奴に範囲をLINEで聞いといたから一緒にやるぞ?コラ」
「……」
「サボるなよ?」
遠夜は甘ーい浮ついた様子は、まーーーったくなくビシビシ私に指示出しした
テキパキテキパキーーー
ひぃ
遠夜はホントにぬかりなく勉強を進めていく
しかも気分で適当に行き当たりばったりにするんではなく、見ていてもう独自の、確固たる”自分流”〜
効率的な勉強スタイルが確立し、順番の流れ、型、一連を訓練として落とし込み、様式が身体の中に仕上がっている感じだった
たらーーーーり〜〜〜
嫌〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ
だって学校を休みがちで、特に今日はスッカリ頭が休日モード
そんな怠け癖の染みついた自分には、意識の素早い切り替えが本当に辛い
ああああ〜〜〜んんん、いや〜〜ん、頭が回らないっっっ
ーーーーあれ?
「さてと、ガッコのは全部終わったから〜と……」
遠夜が突如見慣れない小さく細長い英文テキストを、格好いいカバンからガサッと取り出したのだ
素朴で簡素な書籍、ひょっとして市販されていない本なの?
艶紙コーティングカバーも何も付いていないから、ぱっと見タイトルも出版社名もわからない
でーーー驚く事に、パラパラパラーーーーっ
見るからにすらすらすら、扱い慣れた感じで熱心に目で追い読み始め、しかも見たこと無いタイプの辞書まで取り出したのだ
私はギョッとする
背中を冷たい汗がつつつーーーーーっと流れる
遠夜ナニソレ!!
何それ何それ何それ何それ
そんなの私知らないっっ〜〜〜〜!!
当然心の中はパニックだ
「!!このテキストーーー学校の副読本ではないでしょ?
なによこれ
それ、遠夜スラスラ読めるの?!
ーーー…電子辞書使わないの?」
するとにべもなく、悪びれることも無く遠夜は平然と答える
「あ〜〜〜これ?
俺さっき英会話の塾に行ってきたからそこで使ってる教材だ
電子辞書もまぁ使うけどさ?
……ちょっと特殊でサーーーこれーーーー……
俺的にはこっちの方が自分にとっては便利
英英和辞典だよ?
アッチの、英語圏に根ざした考え方で、スペルや英文が何故そうなのかの論理〜語彙の説明をしてる
それの和訳辞書だ」
例えば日本語で、漢和辞典や古文の古語辞書とかあるだろ?
それを言葉は勿論、解釈ごと丸ごと全て英文に直したらきっと似た感じかもな
私はポカンとした
そんな特殊な辞書がある事すら知らなかった
「……!
遠夜そんな高度な事をさも当たり前に教えてくれるところに行ってるの?!嘘!」
「嘘じゃねーわ、日曜ー以外毎日行ってっし、社会人向けなせいで時間も遅くに始まるから俺的にはアリ」
「何でよ!」
思わずーーー……カァっとムカついたっっ
ずるいし卑怯よ
「何で?って〜」
遠夜は溜息をつく
「ぁのさぁーー”もしもし”?
語学習得を舐めてらっしゃる訳?
本気で『使える位』いっぱしに喋れるようになりたいと思ったらソリャやるべきだろ?
中学の俺達は大人と違ってまだ暇なんだし?
ダイイチ受験にかかってこない今の中1の時期しかそんな時間のかかる贅沢なの出来ねーだろ?
アー言うのは習得に延時間が決まってるって言う話
〜毎日10時間程度は連続して、した方が良いらしいんだけど、毎日2時間、さいてー2年間は頑張れって俺塾長らに言われた
まっ確かにさーーーノリとか何となく体感でソレわかるんだ
体全身を使うスポーツとかでもそうじゃん?
それにチミチミ脳みそだけでなくって、口の動きから目の見開き方から喉から手から、表情ボディランゲージも重要な言語の伝達手段の一つだぜ、あっちって明らかに
〜だからやってる
……今日は1コマで終わらせて帰って来た」
私は息が止まりそうになった
「……ゴメンーー遠夜の勉強の邪魔して」
ビックリしてーーーーしゅん、ションボリしてしまう
思わず視線が下に下がる
遠夜は私が知らないうちにずぅっと先に進んでいるのだ
もぅ、ライバルだなんておこがましくない?
既に手が届かない、実際は私が追いつけない場所に居るのかも知れないと思った
それを、知らなかったとは言え、私は足かせになってしまった
遠夜に大きな迷惑をかけたんだーーーー
本当に御免なさい
「バーカ何言ってんだか!」
すると彼は私にこんな事を言う
しかも、心底呆れた様に大きく目を見開いたのだ
「はっっ〜!俺を舐めんなよ?
『永遠のライバル』の身体状況のホーが俺にとっては遙かに重大だかんな?
勉強は巻き返してまた頑張ればいいけど?ーーーさ
やり直しが利くけどさ
お前はそうじゃないしーーーー……」
「でもーーー……」
「んじゃいっその事、今日の詫びに同じトコ習いに行くか?
元々大人対象だから結構厳しいぞ、その筋じゃ『虎の穴』『変態塾』ってコソコソ言われてっしーーー
カレンにやる気があんなら『先生』に紹介すっしーーー
どうだ?
ガッコと少し違うカリキュラムで勉強するのも気分が変わり楽しーぞ?」
でも見せてもらって、あまりに細かいびっしりの英文に思わず血の気がひく




