遠夜の気持ち ②
カレンの家のお抱えの運転手さんの申し出、「送って行くから」というお言葉を理由があり、今度だけは有り難く受けた
”とある場所”まで『片道だけ』お願いしたのだ
ーーーというのも”緊急的”に仕方がなかったからで、ああもう本当に申し訳ない!!
「はい此処まででいいです、本当に大変に助かりました、有難うございます」
「?……きみ自宅まではいいのかい?ちゃんと送っていくけど」
「それはもう大丈夫です、贅沢は妹や弟に厳禁です、アイツら甘やかすと碌なことにはなりません」
「ははは大変だねぇ〜何所も”お兄ちゃん”はっ!
まぁさ応援してるよ、君格好いいねぇ〜
『子育て』頑張んなっっ!」
「はい」
俺は丁寧に礼儀正しく頭を下げ、スーーーッと音もなく滑らかに遠ざかるレクサスが視界から消えるまできちんと見送った
自分が送って貰い着いた場所
ここは妹や弟達をお願いしている学童保育の施設だった
時間が約束で決まってるから焦っていたのだ
時間は18時〜夕方6時の”10分前”、ヤバイヤバイヤバイ
マジで超ギリギリだった
「今晩は〜〜〜〜〜……!!」
「お兄ちゃん遅ーーーいッッッ!」
「もぅ何やってたの〜〜〜〜!」
ワァワァキャァキャァ、ほっぺを膨らませブンむくれの弟妹がランドセル姿で縦ノリでぴょんぴょんぴょんぴょん〜
「さてはお前ら前世ウサギだな?!」みたいに子ウサギみたく跳ねる跳ねる
「もーー二人ともそんな事言わないであげて?
大好きなお兄ちゃんだって、今日もちゃんとお迎え間に合ったでしょ?」
「済みませーーーん」
俺は時間ギリギリまで預かってくれていた優しい担当の先生に神妙に謝り、丁寧に謝罪をしたのち学童を後にした
自分の家は18時までの約束で施設を利用している
この時間帯が一番件数が多いらしく、見かける姿は母親以外にも祖父母のお迎えも案外沢山だ
「おやぁ〜遠夜君、今日はゆっくりだねぇ」
「ええまぁ」
苦笑する俺、顔見知りの『次の時間帯のお迎え』のメンバーさん達に帰り際に道々、三々五々に出会う
「バイバーイ」
「ばいばいきーん」
屈託無く、家に帰宅途中の今やピッカピカの笑顔に変貌した弟と妹
プンプンだったコイツらもげんきんな物で、ブス膨れていたついさっきとはぜんぜーーーん違う、正に天使降臨!の最高のキラキラ甘々な笑顔でブンブン手を振って皆々様にご挨拶だ
「えんやぁ〜今日の晩ご飯は何〜〜?」
「もーーーお腹すいたぁ〜」
下から見上げるウルウルピカピカの4つの瞳
うわクッソーーーー……マジ天使だぜメッチャカワイーし、普段はワガママ三昧だが思わずきゅんきゅんしちまうぜーーーッッ
『……!』
ぁれ?……
ーーーその時何故か
カレンの透き通る、光り輝く海辺での瞳を思い出した
不思議な感覚ーーーー
俺は一瞬あの時間あの場所に舞い戻った
アイツーーー今何やってるっかな…?
心細くしてやしないか……?
胸が急にチクッと傷んだ
「えんやぁ……どうしたの?」
「疲れちゃったの……?」
ーーーハッとする
「!〜なんでもねーよ……」
俺は奇妙な幻覚や幻視?
んで胸の痛みをブンッと振り払い、こういう時だけ勘の良い弟妹に話しかける
ウッキウキの、奇妙にハジケて戯けた明るい声を今から彼らの為に出そう
うんと年下のこいつらに心配かけたくねーーーし
「そだなーー『どっち』にする?
わりかし、えっと直ぐに出来ると言えば、甘いトマトケチャップのチキンライスにフワフワ卵乗せのオムライス
〜じゃ無きゃ香ばしパリパリベーコンにチーズタップリのトロトロ生クリーム入りカルボナーラ(スパゲッティ)
〜なーんかどうかなーーって兄ちゃんは思うンだけど2人とも食えっか?」
「オムライスオムライスオムライスオムライスッッ」
「カルボナーラカルボナーラカルボナーラ〜〜!」
「……くぉら両方かよ」
くぅぅぅぅ大概俺も甘いぜ
どうやら両方を、この天使に見えるが実は超絶悪魔キッズの彼等はそれぞれ各各ご所望らしい
俺は手のかかる洗い物を、どうすればザックリ省略出来るか計算し始めた
だってさ、食ったら即宿題をやらせねばソッコー寝ちまうし?
ユサユサ起こしながら後はフロか?
で、やっとあれもこれも終わったら、じゃじゃじゃーん♪ラスボス参上
『さらに大きいコドモ』の”夫”帰宅〜か
今現在、我が家は”夫”でなく”母親”だが、これがもぅより一層最上級に我が儘に手がかかる訳だ
世の総てのママお母様方、本当にお疲れ様ですわ〜〜
*******
ドタバタドタバタスッゲー騒ぎの中
「弟妹の夕食」「洗い物」「宿題、自宅採点付」「フロ」、2人分の任務完了〜
「洗濯物」は彼等から引っぺがして既に洗濯機でゴンゴン回してるから後は干すだけだ
ジャージャーーー〜
良い香りでフライパンでぶ厚い豚肉を焼き、いい感じで母親の夕食を用意している最中、玄関のドアがパタンと開いて彼女帰宅
「ただいまぁ〜……!」
「おかえりー母さん、今日もお疲れ様ーーー
最近疲れてっだろ?
今日はサクサク千切りキャベツとしゃりしゃりニンジンサラダに特製〜
無臭ニンニクタップリの四日市トンテキだ
後、豆腐とネギの味噌汁
〜フロは未だアイツらが入ってるから適当な所で強制的に引っ張り出して欲しい
でないと中でグースカねくたれてっしーーー
静かだなーーっと思う時が一番アヤシイからな?」
「了解」
「学童で〜
アッチで出来なかった見守りの朗読とか九九とかの残りの宿題も終わらせたよ
じゃ俺はさっきのLINEで連絡したみたいにちょい出るわ?
〜帰りは正直何時になるかわからないから先に寝てて
アイツ
ーーー今夜がおそらく精神的に”山”だろうから
大人でない気心の知れた人間がひと晩付き添った方が良いんじゃ無いかな?」
話を聞いた母はウンウンとしっかり頷いた
そしてフワ〜〜〜〜〜っと大きく欠伸をすると、ユラユラ着替えの為に大人用の寝室に入ってゆく
俺は出来たての料理を彩りよく大皿に乗せ、レンチンした(冷凍してあった)米を盛り付け汁物を無印で買い求めた赤い塗り物の大きな椀にタップリとよそう
さてとーーーー……
明日の着替えと、ガッコの宿題とーーー
後英語塾のテキストと〜
後は、○ノールのカップ物と山専ボトルと箸、○ンベルのアルパインダウンハガー800・#3〜と……
〜あっっ
”アレ”
要るかも知れねーなーーー
今も時々インフルや夜泣きの時とか絶対的に有用だし?
俺は弟妹達に使ってる旧型のベビーモニターも、あくまでも念の為に荷物に入れる事にする
準備はそんなもん?
最後はいよいよ自分自身のメシだ
出来るだけ一瞬に栄養補給のみ簡単に済ます
ガッと愛用のプロテインの大袋(バナナ味)を開けてマイボトルのシェイカーにバッサバッサ数匙投入、別袋からコラーゲンと、ついでに乳酸菌ココア味も2匙放りこむ
冷蔵庫の豆乳を印まで入れてシェイクシェイクシェイク!
ガーーーっと一気に煽る
そうだ○ロリーメイトも何か、ひと箱軽食にいる?
何味にしっかなーーーー
チョコか?メイプルか?チーズ味か……!?
父親から譲り受けた山専ボトルに、火傷しないように沸騰した湯をナミナミ入れ準備を終えて
ーーー……??
変だ
音が無い
ぞわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜……
待て待て待て待てチョー嫌な予感がする
風呂場が静かだ
ーーー……イイヤ
静か過ぎる!!
ぴちょんとも音がしないっっっ!!
それにだ、あの人何時まで寝室で”着替え”に時間かかってるんだ?!
ヤバイ……
ヤバすぎる




